「常在戦場」の意味と使い方とは?類語や長岡藩に伝わる語源も紹介

政治家のスピーチや経営者の挨拶などでよく聞く四字熟語に「常在戦場」があります。常に戦場にいるように振舞うという意味で使われますが、ビジネスシーンでも自身のやる気や意気込みを語る場面で活用できる言葉です。今回は「常在戦場」の意味と語源、類語についてご紹介します。

「常在戦場」の意味とは?

「常在戦場」の意味は「戦場にいる心構えで事に当たれ」

「常在戦場(じょうざいせんじょう)」とは「戦場にいる心構えや気持ちでものごとに当たれ」という武士の心得をたとえた言葉です。

常日頃から自分の身が戦場にあるように、緊張を持って気を緩めずものごとに取り組んでいけ、という意味があります。

「常在戦場」の使い方と例文

「常在戦場」は常に油断をしないという心得として使う

「常在戦場」は政治家や企業の経営者などが好んで用いる四字熟語の一つです。たとえ、現段階でビジネスが軌道にのっていても、胡坐をかかず、日々戦場にいるような気持ちで活動するという「心得」として使うことが多いでしょう。

毎日のように世界情勢や国の動きが変わるような現代では、明日は我が身という状況もなきしもあらずです。とくに、国を動かす政治家や、企業や組織のトップにいる立場の人は、気を緩めることなく、さらなる緊張を持って前に突き進まなければなりません。

「常在戦場」が意味する「常に戦場にいる気持ちで物事にぶつかる」ことの大切さを肝に銘じ「日頃から油断をしないように」と、自分への戒めのような意味で使われます。

「常在戦場」で意気込みを見せる

「常在戦場」は政治家や経営者などが、気を緩めることなく物事に当たっていくという意味で使うことが多いですが、一般的な仕事に就く社会人も自分の意欲を相手に印象付けるために使うこともできるでしょう。

たとえば、新入社員や新天地で仕事を始める人は、スピーチで「常在戦場」という表現を使い、仕事への意欲や意気込みを見せることができます。もちろん、職種や業務内容にもよりますが、気を緩めず仕事に取り組んでいく姿勢を表す適切な四字熟語の一つになると言えます。

「常在戦場」を使った例文

  • 諸先輩方から色々教えていただきながら、日々常在戦場の気持ちで業務に当たっていきたいと思います。
  • 常在戦場とはいうが、むやみに体当たりするのではなく、冷静に状況判断をしてから行動することも大切なのではないだろうか。
  • 常在戦場。家庭を円満に続けていくための大切な心得だよ。
  • のんびりと海外リゾートでくつろぐ時だけ、常在戦場という縛りから解放される。

「常在戦場」の類語は?

「いざは常、常はいざなり」は「常在戦場」と同義語

「いざは常、常はいざなり」とは、「常在戦場」を文脈として表した言い回しで、平和で平穏な状況でも戦場のような緊張感を持て、という意味で使われます。一言で印象的に気持ちを伝えたい時は「常在戦場」、相手に語り掛けるようにしたい時は「いざは常、常はいざなり」を選ぶと良いでしょう。

例文
  • いざは常なり、常はいざなり。成績がトップでも気を緩むことなかれ。
  • 父の後を継いで社長になったが、緊張を持って、いざは常なり、常はいざなりで臨みたい。

「手綱を締める」はだらけず厳しい態度をとる

「手綱を締める(たづなをしめる)」は、だらけたりせず厳しい態度をとることを意味します「手綱」はものごとや人をコントールするもののたとえで、自分勝手に言動をしないようにしっかりと締めていくということを表します。「常在戦場」よりはやや緩やかな表現ですが、家計や教育などの方針などを緩めず、引き締めていく、というような場面で使われることが多いです。

例文
  • ショッピングでの手綱を締めて、少しずつ貯金をしていきたい。
  • 毎晩飲み歩いている夫の手綱を締める。

「臨戦態勢」は戦闘に臨む準備が整っていること

「臨戦態勢(りんせんたいせい)」は、いつても戦闘に臨むことができるように準備や態勢が整っていることを意味します。戦争や勝負事のみならず、ビジネスシーンや就職試験などで気合を入れて臨まなければならない場面で使われる四字熟語の一つです。

「常在戦場」は「戦場にいること」、「臨戦態勢」は「戦争の前の準備段階」をたとえる四字熟語ですが、緊張感や気の緩みがない点では共通した言葉同士となります。

例文
  • 新事業に向けての人材と戦略もしっかり整い、臨戦態勢は完璧だ。
  • 臨戦態勢を整えて、早速イベントをスタートさせよう。

「常在戦場」の語源とは

「常在戦場」の語源は「長岡藩の藩風」

「常在戦場」とは、読んで字のごとく「常に戦場にあるように心を持し、ことに処す」という意味がありますが、もともと長岡藩(現在の新潟県長岡市)に古くから名を残す牧野氏の家風でした。牧野氏とは徳川十七将の1人で、三河・牛久保で勢力を強めた家柄です。

しかし、牧野氏は今川義元が桶狭間の戦いで倒れた後、武田氏や徳川連合などの敵によって脅威に侵されてしまいます。その時の心得として生まれたのが「常在戦場」でした。

のちに長岡藩で郡司総督を勤めた河合継之助や、連合艦隊司令長官として長年活躍した山本五十六などが自身の心得として「常在戦場」を使ったことから、「常に気を緩めず事に当たることが大切である」という意味で広く使われるようになりました。

まとめ

「常在戦場(じょうざいせんじょう)」とは、「常に戦場にいるようにことに当たれ」ということをたとえた四字熟語です。語源は長岡藩の牧野氏に伝わる家風で、のちに長岡藩の藩風として世に知られるようになりました。

政治家や経営者など、常日頃から戦いを強いられる状況にいる人が、自身の心得として胸中に置くことが多いですが、複雑で多忙なビジネスシーンでも油断をせずにものごとにぶつかるという意味で使われることがあります。「常在戦場」は気の抜くことができない、さらなる緊張感を意味しますが、実際的には多少の息抜きも必要なのかもしれません。