「心頭滅却」の意味とは?ことわざでの使い方や類語も解説

「心頭滅却」は「心頭滅却すれば火もまた涼し」ということわざで有名です。「夏の暑さを我慢する」場面でよく使われますが、本来は逆の意味(冬の寒さ)を含めてもっと広い意味で使用できます。「心頭滅却」の意味や類語、誰が言ったのかの語源をご紹介します。

「心頭滅却」の意味

「心頭滅却」の意味は「心を無にすること」

「心頭滅却(しんとうめっきゃく)」とは「心を無にすること」という意味です。次にご紹介する「心頭滅却すれば火もまた涼し」の略語のため、その意味で使われることもあります。

「心頭」が「心」、「滅却」が「滅んでなくなること」を意味します。ただし「心頭滅却」と使う場合は、心を滅ぼしてなくすという意味にはなりません。悩みや欲を払って、気持ちを落ち着けて心を整えるという意味合いになります。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の意味は「心を無にすれば苦痛を感じない」

「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは「心を無にして雑念をなくせば、どんな苦痛も苦痛と感じない」という意味のことわざです。雑念(ざつねん)とは「集中を妨げる思いや考え」という意味になります。

「火もまた涼し」は、苦痛や困難を例える言葉です。「夏の暑さを我慢すること」という意味で使う人も多くいますが、それ以外の困難にも使用できます。「冬の寒さを我慢すること」のような真逆のイメージがある内容でも誤用にはなりません。ただし、違和感を覚える人がいるかもしれないので、使用には注意が必要です。

「心頭滅却」の語源は漢詩

「心頭滅却」の語源は杜荀鶴(とじゅんかく)という9世紀末ごろの詩人が残した漢詩です。「夏日題悟空上人院」という仏教の修行について書かれた詩が「滅得心中火自涼」で結ばれています。詩の大まかな内容は「僧侶は夏の座禅でも僧衣をきちんと来ている、心を無にすれば火も涼しく感じられる」です。現在使われている「心頭滅却すれば火もまた涼し」の意味合いとほぼ同じと言えるでしょう。

信頼性が低いという説もありますが、戦国時代の快川紹喜(かいせんじょうき)の辞世としても有名です。辞世とは、この世を去る(死亡する)際に残す詩などの言葉です。快川は織田信長の敵対者を匿い引き渡し要求を断ったため、寺を攻められて焼死したと言われています。

「心頭滅却」の使い方とは

「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは「暑さを我慢する」ことに使う

「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは「夏の暑さを我慢する」という意味で使われることが最も多いと言えるかもしれません。先程ご説明したように、語源になっている漢詩でも夏の暑さについて記されていました。ただし「火もまた涼し」は困難の例えですので、本来は暑さに限定されるものではありません。

「夏の暑さを我慢する」ことを強要する決まり文句になっている面もあります。しかし、個人差があることですので、他人が「我慢できるはず」と決めつけるのは避けた方が無難です。自分自身へのいましめにつかう場合でも、体調を崩さないよう注意する必要があります。

「心頭滅却して〇〇する」は注意や啓発に使う

「心頭滅却」は注意や啓発に使うこともあります。心を無にして集中したり、我慢したりすることを促します。

例文
「進捗状況が悪いので、今まで以上に心頭滅却して作業を進めてください」
「外野の言葉に惑わされないよう、心頭滅却して試合に臨む」
「この程度の寒さは、心頭滅却すれば耐えられるはずだ」

「心頭滅却すれば火もまた涼し」と同じ様に、他人に無理に強要するのは避けた方がよいでしょう。相手からの信頼を失うことや、体調を崩すきっかけになる可能性も考えられます。

「心頭滅却」の類語と対義語

「心頭滅却」の類語は「明鏡止水」「無念無想」

「心頭滅却」は意味から考えると「無念無想」と「明鏡止水」が類語と言えるでしょう。

「無念無想(むねんむそう)」の意味は「すべての考えを捨て無心になること」です。「明鏡止水(めいきょうしすい)」は「よこしまな気持ちのない落ち着いた心」を意味します。

どれも似た意味を持ちますが「無念無想」のみ「自分の考えがない」というネガティブな意味合いで使われることがあります。

「心頭滅却」の対義語は「意馬心猿」

「心頭滅却」と逆の意味を持った対義語と言えるのが「意馬心猿(いばしんえん)」です。「欲望などで心の乱れが抑えられない」ことを、馬と猿が騒いでいる様子に例えた言葉です。

「心頭滅却」を夏の暑さを我慢する意味で使っている場合、意味が近いのは「伊達の薄着(だてのうすぎ)」でしょう。おしゃれのために寒さを我慢して、薄着でいることを意味します。「伊達」はここでは「おしゃれさやかっこよさを見せようとする人」という意味で使われています。

まとめ

「心頭滅却」は「心を無にすること」です。悩みなどを払って心を整えるという意味合いがあります。また、「心頭滅却すれば火もまた涼し」とは「夏の暑さに耐える」際の決まり文句ですが、暑さ以外にも使用できます。

忍耐は重要ですが「心頭滅却」を言い訳にして、自己管理を怠るのは避けた方がよいでしょう。大事な場面で体調を崩し、今までの努力が台無しになる可能性もあるからです。