「いただく」の正しい敬語の使い方!漢字や類語との違いも説明

「いただく」は相手から物を「もらう」という意味の謙譲語であり、また「食べる」や「飲む」の謙譲語でもあります。よく使われる言葉ですので、ここで「いただく」の意味を整理しておきましょう。またビジネスシーンでは間違った使われ方もしているので誤りを指摘して、正しい言葉遣いを紹介します。

「いただく」とは?

「いただく」は「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語

「いただく」は、「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語です。「もらう」の意味では、誰々さんから何かをもらった場合、「いただきました」と表現します。

特に、自分から頼んで物をもらった場合に使われれる謙譲語です。以前から頼んでいたものをもらえた時に、「お願いしていた本をお渡しいただいて、ありがとうございました」のように使えます。

「食べる」や「飲む」の意味では、「お菓子をいただく」や「お茶をいただく」のように使います。

敬語は「いただきます」「いただきました」

「いただく」の敬語表現は、「いただきます」「いただきました」です。

「いただく」と「くださる」の違い

「いただく」と「くださる」の違いは視点

「いただく」と「くださる」では物をやりとりするという意味では同じですが、視点が違います。「いただく」は自分が主体の謙譲語ですが、「くださる」は「くれる」の尊敬語です。目上の人から自分が物をもらうと表現したければ「いただく」を使い、目上の人が「くれる」のであれば「くださる」を使います。

例えばお金の受け渡しの場合、次のような言い方になります。

  1. 「私は○○さんからお金をいただきました」
  2. 「○○さんがお金をくださいました」

どちらの文章も、「○○さん」から「私」にお金が渡ったことを意味していますが、①の文は「私」から見て言った場合で、②の文は「○○さん」から見た状況を説明しています。

「いただく」と「くださる」の使い分け

使い分けが少々複雑な「いただく」と「くださる」ですが、自分が相手にリクエストしてやってもらったことについては「いただく」を使うと理解しておくと整理しやすいでしょう。

  • 「いただく」⇒感謝の気持ち
  • 「くださる」⇒尊敬を表す

また感謝の気持ちを伝えたいのなら「いただく」を使い、相手を尊敬するのであれば「くださる」が適当です。

お礼には両方とも使える

ただし「いただく」と「くださる」の両方とも使えるケースがあります。それは相手の行為に感謝をする場合です。

  • ご来店いただきましてありがとうございます
  • ご来店くださいましてありがとうございます

どちらの文も語の用法として正しいです。ただ意味合いが少し変わり、「ご来店いただく」といえば、相手への尊敬の念が表れています。一方「ご来店くださる」というと、自分が提供してるサービスを受けてもらったので相手を敬い、感謝を伝えた表現になります。

「いただく」「頂く」「戴く」の漢字の違いと使い方

ひらがなの「いただく」は補助動詞

「お越しいただく」や「ご覧いただく」のように「いただく」を補助動詞として使う場合は、ひらがなで書きます。補助動詞とは、「いただく」の場合は「いただく」本来の「もらう」という意味がなくなり、別の動詞の後について補助的に使われる動詞のことです。

「頂く」は本動詞として使用

「いただく」を「食べる」「飲む」のように本動詞として使われるときに、「頂く」と表記することができます。ただしいつでも「頂く」と書く必要はありません。小学校の教科書などではひらがなで書くことを推奨していますので、使い勝手で「頂く」か「いただく」を使い分けることができます。

「戴く」は相手への尊敬度が高い

広辞苑では「頂く」と「戴く」は同じ意味として紹介されていますが、実際には使い分けがされています。

物をもらい受ける相手が目上の人で、特に敬意を表すべき相手の場合、「戴く」と表記します。

「お金を頂く」=「お金をもらう」という謙譲表現。
「お金を戴く」=「お金をありがたく受け取る」という意味合いが含まれる。

「いただく」と「賜る」「承る」の違い

「賜る」のほうが個人的

「いただく」を補助動詞として使う場合、別の言い方として「賜る(たまわる)」があります。「いただく」は「~してもらう」という行為が自分またはそのほかの人が含まれますが、「賜る」の場合、相手の行為が自分のみだと強調する場合に使われます。

「承る」は命令などの強い意志が伝えらえる

「承る(うけたまわる)」は権力のある者から命令を「受ける」「いただく」という意味のときに使われれます。ですから相手は自分よりも力関係でいえば上であり、その相手から下される指示や命令を受けて「承る」が使われます。

注意!間違った「いただく」表現に気を付けて

「~させていただく」の間違った使い方

「ご連絡させていただきます」「伺わせていただきます」などビジネスシーンでよく聞きますが、これは間違った敬語表現です。許可を得るという意味合いが含まれる「いただく」をこの場合には使えません。

(誤)「ご連絡させていただく」⇒(正)「ご連絡いたします」「ご連絡申します」
(誤)「臨時休業させていただく」⇒(正)「臨時休業いたします」
(誤)「本日伺わせていただく」⇒(正)「本日伺います」「本日お伺いいたします」

「~させていただく」の正しい使い方

では「させていただく」の正しい使い方は、相手から許可を受けたときには「させていただく」は使えて、例文は次のようになります。

「次回の会議に出席させていただきます」
「体調がよくないので、退席させていただいてよろしいでしょうか」

「いただくことは可能でしょうか」の正しい言い換え

「いただくことは可能でしょうか」や「いただくことができますでしょうか」というまどろっこしい言い方も聞きますが、文法的には間違っていないもの自然な日本語とは言えません。

適切な敬語表現は、「いただけますか」です。

より丁寧な表現を求めるのなら、「いただきまうようお願い申し上げます」があり、簡潔な言葉遣いを心がけましょう。

まとめ

「いただく」は頻繁に使われる言葉ですが、相手から物をもらった時、または「していただく」のように相手からしてもらったことに行為に感謝をしたときに使われます。特にビジネスシーンでは相手への敬意を表することを忘れずに、「いただく」を使うようにしましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。