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「捨象」の意味とは?正しい使い方や類語・対義語を例文つきで解説

「捨象」とは「捨」が入っているので何かを切り捨てる意味だと推測できますが、どのような状況で使われる言葉なのでしょうか。

今回は「捨象」の意味をわかりやすく解説しながら、読み方や使い方、類語・英語表現をご紹介します。難しく聞こえる言葉ですが、その意味は思ったよりも明解だと感じられるのはないでしょうか。

「捨象」の意味と読み方とは?

「捨象」の意味は”物事を抽象するときに他の要素を捨てること”

「捨象」の意味は、“物事の表象から特徴的なことや要素などを取り出して抽象するときに、それ以外の特徴的なことや要素などを切り捨ててしまうこと”です。「捨象」は物事を抽象するときには必ず起こります。

「抽象」とは、複数の物事があって、それらに共通する特性を取り出すことです。

「捨象」の例

「シロ」という名の猫と「タマ」という名の猫がいたとすると、この二匹の動物を抽象すると「猫」になります。

二匹の動物の共通した特性だからです。ところが「猫」としてしまうと、それぞれの名前や性格などの他の特性が省かれてしまいます。この省かれてしまうことが「捨象」です。

「捨象」とは”概念を抽象するときに他の要素を捨てること”

「捨象」とは、“概念を抽象するときに抽出されなかった考えを切り捨てること”です。物事だけでなく概念に対しても使われます。

「概念」とは、いくつかある考え方に共通する包括的な考えのことです。観念や思念などが同類語として考えられます。

「概念」とは

例えば、先ほど挙げた猫の「シロ」と「タマ」の例を使って説明すると、「シロ」と「タマ」にはそれぞれ違う名前があり性格や大きな、種類など違いがあるはずです。それでも「シロ」と「タマ」を見て「猫」だと判断できます。

その理由は「猫」とは四つ足で歩く哺乳類で足裏には肉球があるなどの猫としての特徴を知っているからです。この猫の特徴として言い表せて、誰もが猫とはこういう動物だと思っていることを概念と呼びます。

概念でも抽象化されることがあり、その際に抽出されなかった部分が「捨象」です。

「捨象」の読み方は”しゃしょう”

「捨象」の読み方は“しゃしょう”です。

「捨象」の「捨」の訓読みは「す(てる)」で音読みは「シャ」です。一方「象」の音読みは「ゾウ」もありますが、もう一つの音読みに「ショウ」があります。「捨」と「象」のそれぞれ音読みと用いて「捨象」は「しゃしょう」と読まれます。

「捨象」の使い方と例文とは?

本質的でないことを切り捨てるときに「捨象する」と使う

物事や概念を抽象化していく過程で、本質から関係のないことを切り捨てていくことが「捨象」であり、そのことを「捨象する」と表現します。

捨象するときのポイントは、捨象する方向性です。例えば「リンゴは赤い」という文章なら果物の色によって区別されるときには有効的な抽象化だと言えますが、リンゴの栄養面での話をしているのに「リンゴは赤い」では捨象する方向性が違います。

捨象はその時々のテーマに沿った捨象の仕方があるということを知っておきましょう。

「捨象」は単に”捨てる”という意味では使わない

「捨象」の誤用として、「捨象」を単に”捨てる”や”切り捨てる”という意味で使われていることがありますが、しかし「捨象」とは物事や概念が抽象されるときに起きることですので、抽象化するというプロセスがない限り「捨象」はありませんし「捨象」という言葉も使えません。

「捨象」を使った例文

「捨象」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「具体例を捨象することで物事の本質が見えてくる」
  • 「実質を捨象すると形式だけが残る」
  • 「重要な部分だけを抽出してそれ以外は捨象する」
  • 「彼のことは優しいとか気遣いができるなど彼の性格を捉えた説明ができる。それらを捨象して、単に彼をクールという言葉で片付けてしまっていいのだろうか」

「捨象」の類義語(類語)とは?

類義語(類語)「抽象」とは”物事の共通した性質を抜き出すこと”

「抽象(ちゅうしょう)」とは物事の共通した性質を抜き出すことという意味です。例えば赤いリンゴと赤いテントウムシ、赤信号の抽象的な概念は「赤」になります。

抽象化されるときには物事の共通した性質が抜き出されますが、と同時に抜き出さなれない性質は切り捨てられます。この抽象化によりある性質が切り捨てられることを「捨象」と言います。そのため「抽象」と「捨象」は切り離すことができないので、英語では「抽象」と「捨象」の両方とも「abstraction」という言葉に訳されます。

「捨象」の英語表現とは?

「捨象」は英語で”abstraction”

「捨象」の英訳はabstraction”です。「abstraction」の本来の意味は抽象で、抽象されるときに捨象も行われるため「abstraction」という語の意味に捨象も含まれていると考えられるでしょう。

ただし「捨象」をかみ砕くと「排除する」や「切り捨てる」という意味になりますから、排除するを意味する動詞「eliminate」や、削除するを意味する「delete」などの英単語を当てることも多いでしょう。

例文
  • Truth” and “beauty” are abstractions.
    「真実と美は抽象(捨象)である」
  • “Only the important parts are extracted, the others are eliminated.”
    「重要な部分だけが抽出されて、そのほかは捨象される」

まとめ

「捨象」とは、物事や概念を抽象化するときに抽出されたもの以外が切り捨てられることです。抽象化されるという前提がなく、単に切り捨てるや省くという意味では「捨象」は使われないという点を覚えておくことが大切でしょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。