「おあつらえ向き」は上品な語勢を持つユニークな表現一つですが、時としてやや皮肉めいたニュアンスで伝わってしまうことがあるのをご存知でしょうか?自分が意図していなくても、相手に不快な思いをさせてしまうことがある言葉でもあるため、正しい意味と使い方をしっかりと把握しておく必要があります。今回は「おあつらえ向き」について使い方の例文や類語などをご紹介します。
「おあつらえ向き」の意味と語源は?
「おあつらえ向き」の意味は「希望通りであること」
「おあつらえ向き」とはものごとや状態などが「希望通りであること」「注文通りであること」を意味する言葉です。ある事柄に対し、要求通り条件や様子がピッタリ合っていることを表す時に使われる慣用表現です。
「おあつらえ向き」は漢字では「お誂え向き」
ちなみに「おあつらえ向き」は「御誂え向き」「お誂え向き」と漢字表記することもできます。あわせて覚えておきましょう。
「おあつらえ向き」の語源は「誂え」
「おあつらえ向き」はもともと「誂え(あつらえ)に向いている」という表現に、敬意を表すの接頭語「お」をつけて丁寧にしたものです。「誂え」とは、服やドレスなどを自分の好みや体形に合わせて注文して造ってもらうこと、つまりオーダーメイドを意味します。オーダーメイドは、その人の希望を正確に聞いて、条件や趣向にあった品物を特別に作らせることを指します。そして、完成した品物は注文者の意向にピッタリとあっていなければなりません。
このように「おあつらえ向き」は「誂え」という言葉に、「適する」という意味を持つ「向く」の変形を付けて、希望や注文に寸分違いなくパーフェクトに合っているという意味で使われるようになりました。これが語源であり由来となります。
「おあつらえ向き」の使い方の注意点と例文
「おあつらえ向き」は皮肉的な表現として解釈されることも
「おあつらえ向き」は使い方によっては皮肉めいた表現として相手に伝わることがあります。たとえば「あなたにおあつらえ向きの仕事ですね」という文章では、「あなたのような人でもできるピッタリの仕事(レベルの低い)ですね」というようなニュアンスを生んでしまうことがあります。
もちろん「おあつらえ向き」は注文通りであること、また希望通りであることという意味があり、言葉自体に「皮肉」を表す意味は含まれていません。しかし、自分が意図していなくても、状況や言い方によっては、相手が「あなたのようなレベルの低い人にピッタリの」というような意味合いで解釈してしまうことがあります。
「おあつらえ向き」を使った例文
- 今日のイベントにはおあつらえ向きの上天気となった。
- 結婚式にはおあつらえ向きのエレガントなカクテルドレスを購入した。
- 今日のデートにおあつらえ向きと言える最高級のレストランを選んだ。
- 人と接するのが苦手な私には、まさにおあつらえ向きの事務職に就いた。
- おあつらえ向きとは言わないが、同僚同士、愚痴を言い合うのもいいんじゃない?
- 君におあつらえ向きな用事があるんだ。今晩、A社との接待を頼むよ。
- 仕事には向き不向きがあるが、現在の業務内容は私にはおあつらえ向きである。
「おあつらえ向き」の類語は?
類語は「打ってつけの」「最適」「持ってこい」
「おあつらえ向き」と言い換えができる類語は、ピッタリやばっちりなどの他に「打ってつけの」や「最適」、また「持ってこい」や「恰好の」などが挙げられます。
「打ってつけ」はピッタリと当てはまるさま、「最適」は最高に適していること、「持ってこい」は条件や都合、希望などにピッタリであること、そして「恰好の」は調度良いことを意味します。下記で言い換えの例文を挙げてみましょう。
- このスーツはパーティにおあつらえ向きだ。
- このスーツはパーティに打ってつけだ。
- このスーツはパーティに最適だ。
- このスーツはパーティに持ってこいだ。
- これはパーティに恰好のスーツだ。
上記の例文のように、どれも意味の上では似たり寄ったりですが「おあつらえ向き」は敬意の接頭語「お」がつくため、他の類語より上品で丁寧な印象があります。
カタカナ語の類語は「ジャストフィット」「パーフェクト」
「おあつらえ向き」のカタカナ語の類語には「ジャストフィット(just fit)」や「パーフェクト(perfect)」「マッチする(match)などがあります。英語が語源のカタカナ語を使うと、より口語的でカジュアルな印象を与えることができます。友達との会話やカジュアルな場面では「おあつらえ向き」を、気軽に使えるカタカナ語に言い換えてみるのも良いでしょう。
- 私にあつらえ向きな仕事を紹介してもらった。
- 私にジャストフィットな仕事を紹介してもらった。
- 私にパーフェクトな仕事を紹介してもらった。
- 私にマッチする仕事を紹介してもらった。
まとめ
「おあつらえ向き」は注文通り、また希望通りに服や品物を作ってもらう「誂え」が語源の慣用表現です。ものごとや状況が自分の求める条件通りに行くこと、また自分にピッタリのものであることを示す時に使われ、敬意の接頭語「お」がつくことによって、丁寧な言い回しができるのが特徴となります。
「おあつらえ向き」を使う時に気を付けたいのは、相手や状況、言い方などによっては、皮肉めいたニュアンスで相手に伝わってしまうことです。「おあつらえ向き」は、自分と相手との関係や距離、またその場の状況を確かめてから使うようにしましょう。