「三本締め」と言うとお祝いの席などで参加者が皆でパパパンと手を叩きますが、どうしてこのような風習があるのでしょうか。
今回は「三本締め」の意味と作法の他に「一本締め」や「一丁締め」などの全国で行われている手締めや「大阪締め」「博多手一本」のような地域に根差した手締めも解説します。また「三本締め」の英語表現も紹介します。
なぜ「三本締め」を行うのか?意味と由来
「三本締め」の意味は「丸く収まったことを感謝すること」
「三本締め」とは、物事が丸く収まり、助けてくれた参加者に感謝を表すために行う風習です。手を打ち物事が丸く収まったことを感謝することを「手締め」と言い、「三本締め」はその一つです。
「三本締め」は手締めの中でも正式なものになり、宴会などのおめでたい行事や公式な行事で、行事の終了時に出席者全員が参加して行います。
「三本締め」では手打ちごとに感謝する相手が変わる
「三本締め」は3拍、3拍、3拍、1拍のリズムで手を打つことを三回繰り返します。手を打つごとに感謝をしていますが、3拍×3+1拍の1セットの手打ちごとに感謝する相手が変わります。
- 1セット目:イベントの主催者に向けて感謝する
- 2セット目:参加している人に向けて感謝する
- 3セット目:神様に向けて感謝する
なぜ3拍×3+1拍を1セットと数えるようになったかというと、3拍を3回で終わりにすると3×3=9で「苦」が連想されることから、最後に1拍を足して「九」が「丸」となり「丸く収める」という意味になるからです。
「手締め」とは「手を打って締める」という意味
三本締めに代表される「手締め」は「手打ち」とも呼ばれ、物事の終わりに無事に終了したことを証明するために手が叩かれるようになりました。商取引などが成立したときに妥協や決着、成就するという意味を持つ手締めをする日本独特の風習です。
「三本締め」の由来は不明
「三本締め」がどのようにして始まったのかはわかっていません。神社での「柏手(かしわで)」から始まったとか、日本最古の歴史書「古事記」に事大主神(ことしろのみこと)が手を打って承知して見せたという記述が由来ではないかなど諸説あります。
また日本語表現にも話がまとまることを「手を打つ」と表現があることから、手締めの風習はかなり古くからあったことが想像されます。
「三本締め」の作法とは?
「三本締め」は主催者が行うのが作法
三本締めを行うのは主催者ですが、行事の締めの挨拶をする方や立場が一番上の方などに託されることもあります。
ただし主賓は三本締めを行いません。主賓は客の中で最も重要な立場の人で、その主賓に三本締めをお願いすることは失礼だと考えられています。
掛け声は「お手を拝借」
「三本締め」のやり方は「お手を拝借」という掛け声がかかると「ぃよーおっ」と音頭を取ります。この「ぃよーおっ」には「祝おう」の意味があります。
この音頭に続き全員で3拍、3拍、3拍、1拍のリズムで1セットの手拍子を3セット行います。1セット終わるたびに「もう一本」や「もう一丁」という合いの手が入り、最後に「ありがとうございました」と唱和します。
三本締め以外のさまざまな手締め
手締めには三本締め以外にも一本締めや一丁締め、さらに大阪や博多などの地域で行われている手締めもありますので、その一部をここで紹介します。
「一本締め」は三本締めの簡略化バージョン
「一本締め」は手締めのひとつで、三本締めの簡略化バージョンです。「お手を拝借」の掛け声に応えて「ぃよーおっ」と音頭を取り、3拍、3拍、3拍、1拍のリズムで手を打ち鳴らし、「ありがとうございました」の挨拶で終わります。
「一本締め」の意味は三本締めと同じで、行事が丸く収まったことへの感謝です。
全国で行われているので、異なる地域出身者が集まるときに「一本締め」を行うといいでしょう。
「一丁締め」とは「関東一本締め」のこと
「一丁締め」とは手締めのひとつで、一本締めの簡略化バージョンです。「お手を拝借」の掛け声で始まり「ぃよーおっ」という音頭を取ったあとに一回だけ手と叩きます。
「一丁締め」の意味はほかの手締めと同じですが、マナーとして「一丁締め」の後に「ありがとうございました」というあいさつや拍手などはしません。
短気な江戸っ子が手締めを早く終わらせるために「一丁締め」が始まったと言われているため、「一丁締め」は「関東一本締め」という別称もあります。
「大阪手締め」は掛け声・手の打ち方が独特
「大阪締め」は大阪を中心に行われている手締めです。「打ちまーしょ」あるいは「打ちまーひょ」という掛け声がかかると全員で2拍手を叩き、「もひとつせい」の掛け声でまた同じように手を2拍叩きます。「祝うて三度」でチョチョンがチョンと手を叩いて終わります。
天神祭のような有名なお祭りや証券取引所などの商売人の方々がこの大阪手締めを行います。
「博多手一本」の後の拍手はご法度
「博多手一本(はかたていっぽん)」とは博多を中心に行われる手締めで、宴会やおめでたいイベントでは恒例となっています。
その作法は「よーぉ」の掛け声に続いて全員が2回手を叩き、「もーつっしょ」の掛け声で2回手を叩きます。最後の「祝うて三度」や「よてさん」などの掛け声でチョチョンがチョンと手を叩きますが、終わった後に拍手をすることはマナー違反になります。
掛け声だけでなく手を叩くリズムも独特なものがあるので、 県外の客が多いときは練習をしてから博多手一本を行うことが多いです。
「三本締め」の英語表現
「三本締め」は英語で「sanbon-jime」
「三本締め」は日本文化のひとつで英語圏に同じ慣習がないことから、「三本締め」を直接意味する英単語や英語表現はありません。このように日本独特の慣習を英語に訳すときには、日本語をそのままローマ字で置き換えるという手法が取られることがあり「三本締め」は「sanbon-jime」と訳されることがあります。しかし「sanbon-jime」では外国人には何のことかわかりませんので、補足説明がされることが多いです。その説明としては次のような例が挙げられます。
- “Hand-clapping three times”
「手を叩くことを三回繰り返す」 - “Three set of Ippon-jime”
「一本締めを3回」 - “Three sets of three claps and one final clap performed at the end of a special event”
「3回手をたたき最後に一回手を叩く」
ただし上記のような説明だけでは外国人にはイメージがしにくいので、実際にやって見せあげるというサービスも必要かもしれません。
まとめ
「三本締め」はお祝い事などの行事の終わりに3拍を3回、そして最後に1泊のリズムの手打ちを三回繰り返す手締めです。その場にいる参加者に無事に行事が終わったことを感謝するために行われます。ですから「三本締め」を行う機会があれば、他の参加者と心を一つにしてリズムに合わせて気持ちよく手を叩きましょう。