「法治国家」の意味とは?概念や由来をわかりやすく解説

日本は「法治国家」ですが、「法治国家ではない」といった批判が起こることがしばしばあります。またそのような時に「法治主義」「立憲主義」「法の支配」といった用語が持ち出されることがあります。この記事では、「法治国家」の意味を解説するとともに、関連する用語や概念などについても紹介します。

「法治国家」の意味とは?

「法治国家」の意味は「法に従って政治が行われる国」

「法治国家(ほうちこっか)」とは、国民の社会生活が法律によって保護され、法に従って政治が行われる国のことをいいます。

国が定めた法律に基づいて国の全ての決定や判断が行われるとともに、国家の権力が法によって拘束されており、憲法に次いで法律が最も強いルールであると決められています。

日本は法治国家であり、世界の先進国のほとんどは法治国家であるといえます。

「法治国家」では国家の権力が法によって拘束される

「法治国家」では、法律に従って政治が行われることが原則であるため、国家の権力も法によって拘束されます。それにより、国が権限を乱用することで国民が不利益を被ったり、国民の権利を侵害されることを防ぎます。

「法治国家」では国民の「基本的人権」の保障を原則とする

「法治国家」は、単に法律に従って政治が行われる国だという意味にとどまらず、国家権力の抑止の原則によって国民の基本的人権を保障する国という意味を持ちます。

このような原則を「法治主義」と呼び、法治主義は「立憲主義」の原則の一つです。これらについてはのちほどくわしく説明します。

「法治国家」の由来はドイツの「Rechtsstaat」

「法治国家」の概念はドイツの「Rechtsstaat(法治国家)」に由来します。ドイツにおいて「Rechtsstaat」の概念が生まれたのは19世紀前半頃とされており、絶対王政の統治権を否定し、近代国家の政治原理を確立しました。

日本における法治国家の概念は、ドイツの「Rechtsstaat」を受容することで成立しました。

「法治国家」の概念を簡単に言うと?

「法治国家」は「法治主義」の原則に基づく国

「法治主義」の原則に基づく国を「法治国家」と呼びます。「法治主義」とは、立憲主義の基本原則のひとつであり、行政は法律に従って行われなければならないとする原則のことです。

法に基づいた政治を行うことによって、恣意的な行政を排し、国民の自由と権利を守ることを目指す考え方であることがポイントです。

国家権力を「立法権」「行政権」「司法権」の3つに分けることにより民主主義を実現する三権分立の基礎となるものです。

しかし法治主義には、法の形態を備える悪法が生まれる可能性があることや、法の解釈を下す裁判所の判断が時に分かれることがあるという問題点があります。

法が国家を統制する「法の支配」

「法治主義」と概念が似ている言葉に「法の支配」があります。法律に従って政治を行うという原則が「法治主義」ですが、いかなる権力も法によって拘束され、法が国家を統制するという考え方が「法の支配」です。

「法の支配」の本質は、権力者を法によって支配することができるということにあります。ここでいう法とは、法律ではなく、そのもととなる基本法だとされており、すなわち憲法であるといえます。

日本は「法治主義」「法の支配」のいずれも採用している国となります。

「立憲主義」の基本原則の一つが「法治主義」

立憲主義とは、憲法によって国家権力を制限し、法に基づく政治を行おうとする考え方のことです。憲法の制限下に政府の権威が置かれていることを意味し、「憲法に立脚する」ということです。「立憲主義」の基本原則の一つが「法治主義」です。

また、立憲主義を原則とする民主主義を立憲民主主義と呼びます。また、逆に言えば民主主語の原則は立憲主義であり、法治主義であるといえます。

「法治国家ではない」という表現が意味するものとは?

「法治国家ではない」は批判の表現

「日本は法治国家ではない」といったような表現がされることがあります。先に説明したとおり、「法治国家」とは「法に従って政治が行われる国」という意味であり、日本も法治国家であることは間違いありません。

しかし、政権が法律の解釈をゆがめて恣意的な判断を行ったり、法律を軽んずるような行為を行った場合に、「法治国家でありながら」と批判する意味で使われます。

また、先に説明したとおり、法治主義と民主主義は基本的人権の尊重という基本原則の上に成り立っています。国民の権利が侵されたと考えられる事案が起こった際にも、「法治国家ではない」という批判がされることがあります。

まとめ

「法治国家」とは、「法に従って政治が行われる国」という意味です。日本をはじめ、先進国の国々は法治国家であるといえます。法治国家の原則によって、国民の基本的人権は守られています。

しかし権力者が恣意的に法を曲げて解釈したり、司法を司る人事に国家が介入するようなことが起こる場合があり、法治国家の基盤がゆらぐ事態も起こりえます。