「やもめ」という言葉を、聞いたことがない人もいるかもしれません。魚のヤマメや鳥のカモメに似ていますが「やもめ」は人間を表現する言葉です。古語として古典にも登場する伝統的な言葉ですが、現在でも会話で使われることがあるので、意味を確認しておきましょう。漢字表記や類語もあわせてご紹介します。
「やもめ」の意味や漢字表記
「やもめ」の意味は「結婚相手を失った人」
「やもめ」は男女問わず「結婚相手を失った人」という意味です。やもめになった理由は限定されません。離婚をした人にも、結婚相手が亡くなってしまった人にも当てはまります。主に男女どちらに使う言葉なのかは、人によって意見が分かれています。
昔は女性に使われた言葉で、男性は「やもお」と呼ばれていたようです。現在では男女ともに使用される言葉になりましたが「男やもめ」「女やもめ」と言い分けることもあります。
「やもめ」の漢字は女性なら「寡婦」男性なら「鰥夫」
「やもめ」自体は男女ともに使用しますが、漢字表記は男女で分かれています。
女性の場合は「寡婦」や「寡」、「孀」です。「寡婦」は「やもめ」だけではなく「かふ」とも読み、「女性のやもめ」の意味を持つ類語になります。
男性の場合は「鰥夫」や「鰥」です。「鰥夫」は「やもお」とも読みます。意味は男性のやもめと同じですが、現在ではあまり使われません。
古語「やもめ」は「未婚の人」という意味もある
「やもめ」は古語としても使われていました。現在の「やもめ」との違いは、「結婚相手を失った人」に加えて「未婚の人」という意味があることです。
例えば「竹取物語」という平安時代の物語には「かぐや姫のやもめなるを嘆かしければ」と記載されています。意味は「かぐや姫が未婚であることを悲しく思っていたので」です。
「やもめ」の語源
「やもめ」の語源には複数の説がありますが、今回は主な説を2つご紹介します。
「やもめ」の語源は「屋守」説がある
「やもめ」は「屋守(やもり)」が語源だという説があります。「屋守」は一人で家(家屋)を守るという意味です。「屋守」に「女」をつけて「やもめ(屋守女)」、「男」をつけて「やもお(屋守男)」になったと言われています。
しかし「やもお」はあまり話題にならなかったので、次第に「やもめ」に男性も含まれるようになったそうです。
「魚のヤマメ」が語源という説には疑問の声がある
「やもめ」の語源として知られているのが「魚のヤマメ」です。ヤマメは群れを作らず、単独で泳いでいることから語源になったと言われています。
しかし、この説には疑問の声がありました。「やもお」の説明ができないことや、ヤマメ以外にも単独で泳ぐ魚がいることから、信ぴょう性が低いのではと言われています。
「やもめ」の類語
「やもめ」の類語は「寡婦」「寡夫」
「やもめ」の類語は「寡婦」「寡夫」です。どちらも「かふ」と読みます。主に公的な手続きに使用する言葉です。日常会話で使うことはあまりないでしょう。「寡婦」が「女性のやもめ」、「寡夫」が「男性のやもめ」を意味です。
「未亡人(みぼうじん)」「後家(ごけ)」も似た意味を持っています。この2つは「やもめ」よりも意味が狭いため、言い換えには使えない場面があります。
- 寡婦・寡夫:結婚相手を失った人(理由を問わない)
- 未亡人:結婚相手と死別した女性
- 後家:結婚相手と死別し、夫の後を継いで家業や家族を守る女性
「やもめ」も含め、どれもデリケートな意味合いを持つため、使用して平気な場面か慎重に判断しましょう。特に「未亡人」「後家」は嫌に思う人が多い不快語だとされることもあるため、避けた方が無難です。
「やもめ」を使った言葉
『男やもめに蛆がわき女やもめに花が咲く』は男女の違いを表現することわざ
『男やもめに蛆(うじ)がわき女やもめに花が咲く』は、男女のやもめの違いや、男やもめの悲惨さを表現することわざです。
「男やもめは自分で家事ができないので虫がわくほど不潔になる。しかし、女やもめは夫の世話がなくなり身綺麗になるため、周囲の男性から人気がでる」という意味になります。
「やもめ」の注意点
「やもめ」はデリケートな意味合いなので当人に言わない
「やもめ」は当人に直接言わない方がよい言葉です。離婚だとしても、死別だとしても、結婚相手を失ったことに傷ついている場合が多いでしょう。深く考えずに「やもめ」だと言ってしまうと、さらに傷つけてしまう可能性があります。
「やもめ」を自嘲(自分を卑下すること)に使う人もいるため、その言葉をマネして投げかけてしまうかもしれません。しかし、実際にはデリケートな意味合いですので、当人に言わない方が無難です。
「やもめ」は意味が察しにくいので説明が必要になることもある
「やもめ」は文字や音から意味を推測することが、難しい言葉です。ヤマメやカモメに似ていることから「魚や鳥のことだと思った」という意見もありました。相手が分からなそうな顔をしていたら、意味を説明する必要があります。
使用を避けるほどマイナーな言葉ではありませんが「知らない人には意味を察しにくい言葉」であることを意識しておきましょう。
まとめ
「やもめ」は「結婚相手を失った人」で、男女ともに使用します。「男やもめ」「女やもめ」と言い分けることもあります。
離婚や死別といったデリケートな話題に関する言葉のため、気軽に使わない方が無難です。また、性別を問わない言葉だと思っていない人もいるため、注意して使用しましょう。