「冤罪」とは罪を犯していない人が罰せられることという意味で、一度でも冤罪を疑われるような事件が起これば大きな問題として取り上げられます。
今回はこの「冤罪」という言葉の意味と読み方のほか、英語表現や使い方を例文と併せて解説します。また類語の「無実の罪」や「濡れ衣」の意味や「免罪」との違いも紹介します。
「冤罪」の意味と読み方は?
「冤罪」の意味は「罪を犯していないのに罰せられること」
「冤罪」とは、実際に罪を犯していないにもかかわらず、罪を犯したとして刑事手続きにおいて罰せられることという意味です。
刑事手続きでは、捜査、起訴、判決、そして判決により罪の確定のように進みますが、どの段階でも無実の罪であれば冤罪という言い方ができます。つまり罪の確定の前段階で、罪を犯していない者が被疑者として逮捕された時や、有罪判決を言い渡されたときでも「冤罪」と呼ばれることがあります。
刑事手続きは国家機関により進められることから、「冤罪」の疑いがある、または「冤罪」だとわかった場合には大きな問題として取り上げられます。有罪が確定してから再審で無罪となった時には「冤罪事件」として扱われます。
「冤罪」の読み方は「えんざい」
「冤罪」は「えんざい」と読みます。
「冤罪」の「冤」の音読みが「エン」で、訓読みは「ぬれぎぬ」または「あだ」です。「冤」という一字で冤罪という意味がありますが、さらに「冤」にはうらみや仇(あだ)という意味もあります。
「冤」という字の成り立ちは、兎(うさぎ)がわかんむりの「冖」の下に囲われて縮こまって小さくなっている様子から来ています。
「冤罪」の使い方と例文
「冤罪を晴らす」とは「冤罪に対して反証する」という意味
冤罪を疑われた時に罪を犯していないと主張するという意味で「冤罪を晴らす」という言い回しがあります。この場合の「晴らす」とは目的を果たすという意味です。
また冤罪であることを訴えるときには「冤罪を主張する」のような言い回しもあります。
- 「彼は冤罪を晴らして警察から解放された」
- 「冤罪を主張したが認められなかった」
「冤罪をかけられる」とは冤罪を疑われるときの言い回し
冤罪を疑われるときには「冤罪をかける」や「冤罪をかけられる」のような表現の仕方があります。この場合の「かける」は不都合なことを他に与えるという意味で「疑いをかける」や「苦労をかける」などとも使われています。
- 「満員電車で痴漢と間違われて冤罪にかけられた」
- 「冤罪にかけられるようなことはしていない」
「冤罪」の類語
「冤罪」と同義の「無実の罪」
「冤罪」の意味を端的に捉えた表現として「無実の罪」という表現があります。「冤罪」よりもその意味を具体的に伝えられるのでメディアなどでは頻繁に使われています。
- 「無実の罪で訴えられてしまった。どうしよう」
- 「私は何もしていない。無実の罪を着せられた」
- 「なんとしても無実の罪を晴らす」
「冤罪」を例えた表現「濡れ衣」
「濡れ衣(ぬれぎぬ)」とは濡れた衣服という意味もありますが、冤罪のたとえとして用いられます。
「濡れ衣」と「冤罪」との違いは、「冤罪」は法律用語に対して、「濡れ衣」は日常語として使われていることです。「濡れ衣」は犯罪だけでなく、根拠のない噂や犯していない小さなミスを責めるときなどにも使われています。
「濡れ衣」を使い方として「着る」という字と結びつきやすいという特徴があります。
- 「濡れ衣を着せられる」
- 「パソコンを壊したのは僕じゃない。濡れ衣だ」
「濡れ衣」が冤罪のたとえになった由来
「濡れ衣」が「冤罪」のたとえとして使われるようになった由来には下記の4つが挙げられます。
- 美しい先妻の娘に嫉妬した継母が、漁師の濡れた服を娘の枕元に置いてあるのを見て、漁師との関係を誤解したことから父親が娘を殺害したという事件。
- 海に潜ることを「かずく(潜く)」というのですが、「かずく」海女は濡れた衣服を着ていることと、責任を他人に負わせる「かずく(被く)」を掛けたこと。
- 神事での、濡れた衣服が早く乾けば無罪、乾かなければ有罪にするという言い伝え。
- 愛する人が来ないのは雨が原因だと、春の雨に罪を着せた古今集の和歌。
「濡れ衣」の由来には諸説ありますが、どの話が正しいのか確証されることなく現在に至っています。
「冤罪」と「免罪」の違いとは?
「免罪」は犯した罪を許されること
「免罪(めんざい)」とは犯した罪を許されることという意味の言葉です。
「冤罪」と「免罪」では読み方が似ているので混合されやすいのですが、意味としては「冤罪」は罪を犯していないのに対して「免罪」は罪を犯しているという点、また「冤罪」は罰せられるのに対して「免罪」は犯した罪を許されるという点でも違います。
「冤罪」と「免罪」では意味が大きく違うので、使い間違えないように注意しましょう。
「冤罪」の英語表現
「冤罪」は英語で「false charge」
「冤罪」は英語で「false charge」や「false accusation」と訳されます。「false」とは間違ったや偽りのという意味の形容詞で、「charge」と「accusation」は告発や問責、罪という意味です。
「冤罪」の英語例文
- “His ex-wife laid a false charge against a domestic violence.”
「元妻が家庭内暴力の冤罪を着せた」 - “He clears the false accusation.”
「彼は冤罪を晴らす」 - “He has been imprisoned for 3 months for a false accusation. ”
「彼は冤罪で3ヶ月間投獄されている」
まとめ
犯してもいない罪で罰するという意味の「冤罪」という言葉。あまり使う機会がない言葉かもしれませんが、満員電車で痴漢と間違えられる例のように他人の誤解で冤罪を着せられる事態が起こることがあるかもしれません。法律用語で難しい言葉でもありますが、知っておきたい言葉のひとつです。