「千里の道も一歩から」の意味や由来は?使い方の例文や類語も解説

「千里の道も一歩から」は、誰もが聞いたことのあるよく知られたことざです。しかし使いこなせていると感じる人は多くないかもしれません。そこでこの記事では「千里の道も一歩から」の意味や由来とされる中国語を解説します。あわせて使い方・例文や英語表現も紹介しています。

「千里の道も一歩から」の意味とは?

「大きなことでも始めの一歩を踏み出すことから」という意味のことわざ

「千里の道も一歩から」とは、たとえ千里ほどもある遠い道のりであっても、まずは始めの一歩を踏み出すことが大切だという意味のことわざです。さらには、その一歩を踏み出すとともに、着実に努力を重ねれば、大きな事業も成功するという意味を含んで用いられます。

なお、「千里(せんり)」とは、1里の1000倍であり、きわめて遠い所という意味のたとえとして用いられています。「里」とは古代中国における単位であり、1里の長さは400mほどだったとされます。

「千里の道も一歩から」の使い方と例文

目標達成に向けて意欲を高めるための格言として使う

「千里の道も一歩から」は、ビジネスシーンにおいては、目標達成に向けて気持ちを引き締めるための格言として使われることが多いです。

例文
  • 「千里の道も一歩から」と言う通り、大きな目標も最初の一歩から始まる。こつこつと着実に歩みを固めて目標を達成しよう
  • 目標達成に向けての壁は高く大きいが、千里の道も一歩からだ。着実に進んでいけば必ず達成できるだろう。
  • 千里の道も一歩から始まる。問題の収束に向けての道は長いが、少しづつ進んでゆこう。
  • 千里の道も一歩から、毎日の小さな積み重ねを続けてゆけば大きな壁も乗り越えることが可能だ

「千里の道も一歩から」は個人の目標にも使える

ビジネスシーンの他にも、個人の目標達成に向けて次のようにも使うことができます。

例文
  • 「千里の道も一歩から」というとおり、資格取得に向けてこつこつと勉強に励みたい
  • 千里の道も一歩からの精神で、まずは起業に向けての第一歩を歩み出したい

「千里の道も一歩から」の類語とは?

大事業は長い努力の末に実るという意味の「ローマは一日にして成らず」

「千里の道も一歩から」と同じ意味を持つ西洋のことわざが「ローマは一日にして成らず」です。英語のことわざである「Rome was not built in a day.」の訳語として知られています。

古代ローマ帝国は、「全ての道はローマに通ず」と言われたほどに繁栄した大帝国でしたが、それが築かれるまでには数百年にわたる苦難の歴史があったことから生まれた表現です。

小さなことでも根気よく続けて成果を得る「雨垂れ石を穿つ」

中国の『漢書』の一節が原典とされる「雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)」ということわざも「千里の道も一歩から」に通ずる意味を持ちます。

どんなに小さなことでも。根気よく続けていけば、大きな成果を得ることができるとするたとえの表現です。

「千里の道も一歩から」は小さなはじめの一歩に力点を置いた表現ですが、「雨垂れ石を穿つ」は小さなことの継続にポイントを置いた表現です。

大きな事は身近なことから始めよという意味の「隗より始めよ」

「千里の道も一歩から」と同じく、大きな事業を行うなら、まず身近なことから始めよ、という意味を持つことわざに「隗より始めよ(かいよりはじめよ)」があります。

中国の春秋戦国時代の学者であった郭隗(かくかい)が、昭王から人材の集め方を問われ、まず私を重用せよ、と答えたとする故事からできた成語です。

凡庸な自分を重く用いれば、自分より優れた人物が自然に集まるということを言ったされますが、その意味の神髄とは、大事業をするには、まず身近なことから始めなさい、ということでした。

中国の戦国時代の学者や政治家の言葉や逸話からは、このような合理的で理にかなった故事成語が多く作られました。

「千里の道も一歩から」の由来とは

由来は中国語の『老子』の言葉

「千里の道も一歩から」のことわざは、中国春秋時代の思想家である「老子」の思想が書かれた著書『老子』の一節が由来です。

原文と訳文は次の通りです。

「合抱之木 生於毫末 九層之臺 起於累土 千里之行 始於足下」

(両手で抱えるほど大きい大木でも小さな芽から成長し、九層にも及ぶ高い建物もひとつの盛土から始まり、千里の道も足下の一歩から始まる)

例を挙げながら、どんなに大きな事業もまずは始めの一歩からだと教えています。直接的な該当部分は「千里之行 始於足下」ですが、この表現により近い日本語の簡潔な表現として「千里の行も足下に始まる(せんりのこうもそっかにはじまる)」があります。

老子は戦国時代における現実的な処世訓を数多く残しました。

「千里の道も一歩から」の英語表現とは?

英語では「A journey of a thousand miles begins with a single step.」

「千里の道も一歩から」は英語で「A journey of a thousand miles begins with a single step.」「A journey of a thousand miles must start with the first step.」などと表現します。

「journey」とは「道のり」という意味で、「a thousand miles」は「千マイル」という意味です。そして、「始まる」という意味の「begin」「start」と、「一歩」という意味の「single step」や、「第一歩」という意味の「first step」などを用いた表現が、「千里の道も一歩から」の英語版となります。

他には類語で紹介した「Rome was not built in a day.」(ローマは一日にして成らず)と表現されることもあります。

まとめ

「千里の道も一歩から」とは、「大きなことでも始めの一歩を踏み出すことから始まる」という意味のことわざです。最初の一歩を踏み出すことに加えて、一歩一歩着実に努力を重ねれば、大きな事業もやがて成功するという教訓として使われます。

合理的な処世訓を多く残した、中国の春秋戦国時代の思想家「老子」の言葉が由来であり、簡潔な言葉ながら、いつの時代にも通ずる普遍的な教訓であるといえます。

高すぎる目標はやる気をなくしたり、目標達成までの過程が見えにくいことから何をしてよいのかわからないといった状況に陥ります。そのような時、すべきことを明確にしてくれるこのようなことわざを、いくつか心の引き出しにしまっておくとよいかもしれません。