「しのぎを削る」の意味や語源とは?類語や例文・使い方を解説

何気なく使っている「しのぎを削る」という慣用句ですが、「しのぎ(鎬)」とは何のことなのか分からない人も多いでしょう。今回は「しのぎを削る」の意味や語源、類語をご紹介します。また、陶芸やヤクザ物の作品が好きな人は「しのぎ」に聞き覚えがあるかもしれません。それらの「しのぎ」も簡単にご説明します。

「しのぎを削る」の意味

「しのぎを削る」の意味とは「激しく争うこと」

「しのぎを削る」は漢字で書くと「鎬を削る」です。意味は「激しく争うこと」です。お互いに全力を尽くし、なかなか勝負が決まらないような熱戦を例える言葉となります。

個人同士の戦いだけでなく、企業などの集団同士の争いにも使用される慣用句です。

「しのぎを削る」の語源は刀の「鎬」が削れること

「しのぎを削る」は刀での戦いが語源です。刀の「鎬(しのぎ)」という部分が削れるほど何度も切り合う様子から「激しく争う」という意味が生まれたようです。現在では刀と全く関係が無い争いも「しのぎを削る」で表現できます。

「鎬」とは刀身の側面で一番厚くなっている部分のことです。剣道で使う竹刀も、側面を鎬を呼びます。剣先と柄の間に張られた弦(つる)の反対側が刃、左右を鎬と見立てています。

「凌ぎを削る」と書くのは間違い

「しのぎを削る」の「しのぎ」を「凌ぎ」と書くのは間違いになります。先ほどお伝えしました通り、正しい漢字は「鎬」です。

「凌ぐ(しのぐ)」は主に「押し分けて、乗りこえて前に進む」や「困難などを防いで耐える」という意味で使われる言葉です。鎬の語源と関係があるという説もありますが、「しのぎを削る」に使われることはありません。

「しのぎを削る」の使い方と例文

「しのぎを削る」は競争や争い全般に使われる

「しのぎを削る」はさまざまな競争や争いが激しいことを表現します。個人同士の競争だけでなく、商品のシェア争いなど企業や集団同士の争いにも使われます。

例文
  • しのぎを削る戦いを制したのはA校の選手だった。
  • 多くの名店がしのぎを削るラーメン激戦区でなら、きっと満足できる一杯が見つかるはずだ。

「しのぎを削る」は同レベル同士で争う際に使用する

「しのぎを削る」は「能力が近い同レベル同士の争い」に限定されます。能力に差があり、すぐに勝負が決まってしまう場合は「しのぎを削る」には相応しくありません。

語源を考えると理由が分かりやすいでしょう。「しのぎを削る」は何度も切り合って、刀の鎬が削れることでした。片方が圧倒的に強い場合、鎬が削れる前に勝負が終わってしまうのです。

慣用句以外の「しのぎ」の使い方

「しのぎを削る」という慣用句以外にも「しのぎ」が使われています。代表的な言葉をご紹介します。

ヤクザなどの俗語で「シノギ」は収入を得る手段のこと

ヤクザなどが使う俗語にも「シノギ」と呼ばれるものがあります。意味は「収入を得る手段」です。詐欺や賭博などの犯罪・違法な仕事が多いとされています。

シノギの語源は定まっていません。激しい争いの中で勢力を広げ収入を増やすことから「しのぎを削る」が語源だとする説もあります。

陶芸用語の「鎬」とは装飾方法のこと

陶芸の用語にも「しのぎ」があります。ヘラなどで作品を削って、刀の鎬のような凸凹の模様で修飾することです。漢字は刀と同じ「鎬」を使います。

凸凹を利用することで、色の濃淡や立体感が増した作品になるようです。

「しのぎを削る」の類語

「しのぎを削る」の類語は「火花を散らす」

「しのぎを削る」と同じように「激しく争うこと」を意味する類語は「火花を散らす(ひばなをちらす)」です。

「火花」は石や金属がぶつかった際に瞬間的に飛び散る火のことです。火花が散るくらい、激しく刀をぶつけ合って戦う様子が「火花を散らす」の語源だとされています。意味だけでなく、語源も「しのぎを削る」と似ている慣用句です。

火打石やファイヤースターターなどの火花を使う火おこしの道具を使う際も「火花を散らす」と言う場合があります。使われる場面が大きく違うので、前後の文脈から区別するのは難しくないでしょう。

類語「火花を散らす」を使った例文

  • 【慣用句】リーダーの座をめぐって、2人は火花を散らしている。
  • 【火おこし】ファイヤースターターで火花を散らし、ティッシュに引火させる。

「しのぎを削る」の対義語

「しのぎを削る」の対義語は「鎧袖一触」

「しのぎを削る」の対義語は「鎧袖一触(がいしゅういっしょく)」です。意味は「簡単に相手を倒すこと」です。「鎧袖」は「鎧の袖」を、「一触」は少しだけ触れることを意味します。袖が少し触れただけで倒せるぐらいに実力差があることを表現します。「しのぎを削る」の「同レベルの相手と戦う」様子と対になる四字熟語です。

あまり日常会話で使わない言葉のため、相手に通じない可能性もあります。心配な場合は「楽勝」や「圧倒的な強さ」のような分かりやすい言葉に言い換えるとよいでしょう。

まとめ

「しのぎを削る」は、同レベルの相手と「激しく争うこと」という意味です。「しのぎ」は刀の一部分のことで、漢字では「鎬」と書きます。

刀を使った戦いだけでなく、スポーツの競争や企業のシェア争いなど、さまざまな場面を表現できます。汎用性のある使いやすい慣用句だと言えるでしょう。