「足元をすくわれる」は誤用?正しい言い方と意味・使い方や類語も

「足元をすくわれる」は油断した時に「気を付けろ」といった感情を持って使われることわざです。しかし「足元をすくわれる」という言い回しは本当に正しいのでしょうか?

ここでは「足元をすくわれる」の正しい言い方と意味、使い方などをご紹介します。とくに社会人になってからは、言葉の誤用に気を付けていきましょう。

「足元をすくわれる」は誤用?

「足元をすくわれる」ではなく「足をすくわれる」が正しい

うっかり「足元をすくわれる」と言ってしまう人はいませんか?

「足元をすくわれる」は辞書を調べても掲載されていません。つまり、誤った表現となります。「足元をすくわれる」ではなく「足をすくわれる」が正しい言い方です。

「足をすくわれる」の意味は「不意を突かれて相手に失敗させられること」

「足をすくわれる」の意味は「不意を突かれて、まんまと相手に失敗をさせられてしまうこと」です。

いつもは真剣に物事を行っていても、時には休んだり、ちょっとばかり油断をしてしまうことはよくあります。本来は緊張感をもって臨むべきシチュエーションであるのに、のんびりと余裕綽々な態度をとったりしていることもあるでしょう。そのような状況で「隙を上手く突かれて不成功に終わってしまうこと」を意味します。

「足元を救われる」と漢字で書くのは誤り

「足元をすくわれる」という言い方は間違いで「足をすくわれる」が本来の正しい言い方です。それなら「足をすくわれる」は「足を救われる」と表記できるのでしょうか?

結論から言うと「足を救われる」と漢字表記するのは誤りです。

そもそも「足をすくわれる」の「すくわれる」は、下から上の方へ払う、また急に持ち上げるという意味を持つ「掬う(すくう)」のことです。たとえば「井戸の水を掬う」「みそ汁をオタマで掬う」というように使います。

つまり「足をすくわれる」の意味は、人がうかうかしている状況で「足を急に払われて転んでしまうこと」を意味しているのです。そのため「足をすくわれる」は「足を掬われる」が正しい漢字表記となります。

「足をすくわれる」の使い方と例文

「足をすくわれる」は危機感をあおる時に使われる

「足をすくわれる」ということわざは「相手にある種の危機感を与える」時に使われることが多いです。周囲から見て注意散漫になっている相手に対して「物事や状況を軽視しないようにトゲを指す」ような意図で使われます。

たとえば、営業成績が社内で半年も連続でトップの人がいるとします。しかし、この頃、余裕が出てきたのか、努力を惜しむようになりました。このような状況において、本人に危機感を促す目的で「足をすくわれる」という表現を使うことがあります。

「足をすくわれる」は失敗した時に放たれることも

「足をすくわれる」は過去形の「足をすくわれた」という表現を用いて「ああ、やってしまった」と失敗への後悔の念を表す時にも使われます。

つまり、ある状況から一転して失敗を招いてしまった時、また物事が思いも寄らず不成功に終わってしまった時に、ため息交じりに放たれるのが「足をすくわれた」です。

ビジネスシーンを例にとれば、初めての商談契約で話がトントンと進んだ時、「案外上手く行ったな」と過信してしまうこともあるでしょう。しかし、取引内容や人間関係も好感触で全てがスムーズに行くと油断をした時、横入りのライバルに契約を取られてしまったとします。

このように「油断をしてしまったこと」「過信してしまったこと」が原因で失敗に追い込まれてしまった時にも、「足をすくわれた」という表現を使うことができます。

「足をすくわれる」を使った例文

  • 花金で気持ちが緩み、’ついつい午前様になってしまった。妻に言い訳をしたが、やはり足をすくわれたのは言うまでもない。
  • バイリンガルなので海外営業のリーダーになった。しかしトリリンガルの新人が入社し、結局足元をすくわれた。
  • 足をすくわれる前に、プレゼンの予行を一か月前からみっちりと行い気持ちを引き締めた。

「足をすくわれる」の類語は?

ことわざの類語は「寝首を掻かれる」「飼い犬に手を噛まれる」など

「足をすくわれる」の類語には「寝首を掻かれる」「飼い犬に手を噛まれる」などがあります。

「寝首を掻かれる」は、「意識のない就寝中に首を引掻かれる」、また「飼い犬に手を噛まれる」は主人の言うことを聞く犬でも、油断していると手を噛まれる」という意味があり、どちらも「不意打ちされて失敗する」ことを表すことわざです。

例文
  • 部下を馬鹿にしていると、いつか寝首を掻かれることになるぞ。
  • 同士だった仲間に次々と裏切られ、まるで飼い犬に手を噛まれた気持ちになった。

ユニークな類語「とんびに油揚げをさらわれる」「甘い汁を吸われる」

その他「とんびに油揚げをさらわれる」「甘い汁を吸われる」などのように、ユーモアのある類語も存在します。こちらは、余裕綽々な態度でいると、最後の最後で美味しい部分を持っていかれる、という皮肉めいたニュアンスで使われます。

例文
  • 企画を書いたのは私なのに、上司に手柄を取られた。ホントにとんびに油揚げをさらわれたみたいだよ。
  • 社長は、どうやら一人娘の婿にも甘い汁を吸われていしまっているようだ。

まとめ

「足元をすくわれる」は誤用で、本来の正しい言い方は「足をすくわれる」です。漢字表記をすると「足を掬われる」となり「足を救われる」は、意味においても明確に誤りとなるので注意しましょう。

ビジネスでは「油断して不成功に終わった」という状況でよく使われることわざです。会話のマンネリ化を防ぐためにも、ことわざを積極的に会話に加えて言いましょう。