「郷に入っては郷に従え」の意味や由来とは?例文や類語も解説

「郷に入っては郷に従え」のことわざは、新参者の心得として重要だと共感する反面、場合によっては同調圧力のように感じ、反発したくなる考え方であるかもしれません。

この記事では、「郷に入っては郷に従え」の意味や由来、読み方を解説し、あわせて使い方・例文や類語・英語表現も解説しています。

「郷に入っては郷に従え」の意味や由来・読み方

意味は「新しい場所ではその習慣に従うのがよい」

「郷に入っては郷に従え」とは、「新しい土地に来たら、その土地の習慣に従うのがよい」という意味のことわざです。習慣や風俗はその土地によって違うため、新しい土地に入ったらその違いをまずは受け入れ、その土地の習慣に従うのがよいとする処世術に関する教訓だといえます。

転じて、新しい土地に限らず、新しいコミュニティや転職などの際の心得としても使われます。違う習慣や新しい考え方を受け入れるのには抵抗を持つものですが、まずは受け入れる姿勢を持つことで無用な対立を防ぎ、スムーズに新しい環境に溶け込むことができます。

読み方は「ごうにいってはごうにしたがえ」

「郷に入っては郷に従え」の読み方は「ごうにいってはごうにしたがえ」です。「郷に入れば郷に従え」と表現することもありますが、この場合でも「ごうにいればごうにしたがえ」と読みます。

「入って/入れば」は「はいって/はいれば」とは読まないので注意が必要です。また、その読み方から「郷に行っては郷に従え」と書く間違いが起こることがあります。

「郷に入っては郷に従え」の使い方と例文

新参者の心得として使われる

転職して新しい組織に入る場合や、地方に移住して新しいコミュニティに参加する際などの心得として「郷に入っては郷に従え」が用いられます。

日本の企業は独特の企業文化が独自に発展していることが多く、転職などで新しい組織に入ると前職との文化や習慣の違いに戸惑う人が多いですが、そのような時の処世術として「郷に入っては郷に従え」の考え方が紹介されることがあります。

また、新しいライフスタイルとして都会から地方への移住が注目されていますが、都会と田舎では慣習や考え方が大きく異なるため、そこにいかに適応してゆくかが大きな課題としてクローズアップされています。そのような場合も、「郷に入っては郷に従え」の精神が指針として用いられます。

「長い物には巻かれろ」の意味でも使われる

処世術としての使い方の他に、「郷に入っては郷に従え」は「長い物には巻かれろ」の意味で使われることもあります。

「長いものには巻かれろ」とは、強い権力や大きな勢力を持つ者に対しては、敵対せずに従っておくのがよいとする処世術を表現する慣用句です。

「郷に入っては郷に従え」の例文

  • 海外に進出する日本企業は「郷に入っては郷に従え」の精神で現地に定着する努力が求められる
  • 転職した際に「郷に入っては郷に従え」の気持ちが大切だと上司に説かれた
  • 新しいコミュニティに早くとけこむためには「郷に入っては郷に従え」の考え方が参考になる

「郷に入っては郷に従え」の類語とは?

「郷に入っては郷に従え」の類語は「長い物には巻かれろ」

「長い物には巻かれろ」とは、力のある者や自分の手に負えない者には逆らったりせずに従うのが得策であるということわざです。

「郷に入っては郷に従え」は、力のある者には逆らわない方が良いという意味ではありませんが、解釈を拡大して「長い物には巻かれろ」と同じニュアンスで使われることがあります。

「嘘も方便」も「郷に入っては郷に従え」の類語

「嘘も方便(うそもほうべん)」とは、嘘をつくことは悪いことだが、時と場合によっては嘘をつくことも必要だという意味のことわざです。

「新しい場所ではその考え方に従う」という「郷に入っては郷に従え」の考え方には、「嘘も方便」の考え方のニュアンスが含まれているともいえます。

「郷に入っては郷に従え」の由来

「郷に入っては郷に従え」の由来は『童子教』

「郷に入っては郷に従え」の由来は、鎌倉時代から明治時代中期頃まで日本の初等教育で使われた『童子教(どうじきょう)』という書籍におさめられた教訓のうちの一節です。

『入郷而従郷、入俗而随俗』という句が「郷に入っては郷に従え」という意味を表しますが、その語源は中国禅宗の歴史書である『五灯会元』に書かれた句に遡ります。

『五灯会元』に書かれた句からは、中国のことわざである「入郷随俗」が起こり、これは「郷に入っては郷に従え」と同じ意味を持ちます。

「郷に入っては郷に従え」の由来は『童子教』であり、さらに遡れば中国のことわざであるといえます。

「郷に入っては郷に従え」の英語表現とは?

「郷に入っては郷に従え」は英語で「Conform to the custom of the place.」

「郷に入っては郷に従え」は英語で「Conform to the custom of the place (land, country).」と表現します。

「conform」とは「従う、順応する」という意味で、「custom」は「習慣」という意味です。そして、「場所」という意味の「place」、「土地」という意味の「land」や「国」という意味の「country」などで「その場所(土地、国)の習慣に従え」(郷に入っては郷に従え)となります。

他には、直接的ではない表現として「When in Rome, do as the Romans do.」(ローマではローマ人のするようにせよ)も知られています。

まとめ

「郷に入っては郷に従え」とは、「新しい場所ではその習慣に従うのがよい」と言う意味のことわざで、人間関係を円滑にすすめるための処世術であるともいえます。「郷」とは村里の意味ですが、土地の意味から発展して比喩的にも用いられ、ビジネスにおいては、新しい組織に入る時の教訓として使われたりします。

良い意味では、新しい価値観を受容する寛大な精神を説く言葉となりますが、悪い意味では自分の意見を殺して空気を読めといったような行き過ぎた同調圧力を生みかねない考え方ともなる可能性があります。

人間関係を良好に保つために、良い意味での潤滑剤としてうまく利用したいことわざです。