「落とし前」というと、任侠映画や現代アニメなどのセリフで「落とし前つけろ!」と、どすの利いた声で言いがかるシーンを思い出しますが、「落とし前」の本来の意味や由来が気になったりしませんか?
ここでは「落とし前」の意味や「落とし前をつける」の使い方、また類語や英語フレーズについてご紹介します。
「落とし前」の意味と由来は?
「落とし前」とは「失敗・無礼への後始末すること」の意味
「落とし前」とは「失敗や無礼への後始末をする」という意味です。つまり、不祥事や間違いに対して「責任を自らがとること」という意味で使われる言葉です。
「落とし前」の由来は「露店での客との値段折衝」
「落とし前」は、縁日や祭りで食べ物や商品を売ったり、見世物を興行する「香具師(やし)=てきや」が、客との値段折衝で、適切な金額まで下げることを意味しています。つまり、客との真剣なやりとりで上手に話を付けることを言います。
その意味から転じて「落とし前」は人との揉め事や話し合いで仲違いになると解釈され、「失敗や無礼への後始末をする」というような使い方をするようになりました。
「落とし前」の使い方と例文
「落とし前をつける」が最も多い使い方
周知のとおり「落とし前」は「落とし前をつける」という熟語表現で最も使われています。
「落とし前をつける」の「つける」は「白黒つける」「決着をつける」と同じ使い方で「物事の是非や真偽、善悪などをはっきりさせる」という意味があります。そのため「落とし前をつける」で、「失敗や無礼への後始末をはっきりとする」という意味で使われています。
「落とし前をつける」を使うときの注意点
「落とし前を付ける」は表現の性質上、日常生活でも、またビジネスシーンでもあまり使われることはありません。
ごくまれに「ミスや過失に対して責任を取ってもらう」ということを比喩的に表現する時に使われることもありますが、やはり言葉のイメージから「脅し」のようなニュアンスが伝わってしまうことがほとんどでであるため、敬遠される傾向があります。
「落とし前をつける」を使った例文
- 悪徳商法で損をした落とし前はどうつけるつもりだ。
- 落とし前をつけるまで、誰にもこのことは言うなよ。
- 彼女を泣かせるなんて、男として落とし前はしっかりとしろよ。
- 落とし前をつけるもなにも、失ったものは帰ってこないんだぜ。
- 心の中では、相手を軽蔑することで、すっかり落とし前はついていた。
「落とし前」の類語は?
「けり」は決着や物事の終わりのこと
「けり」は「けりをつける」などで使われ、決着や物事の終わり、また始末などの意味があります。また「けりをつける」は「決着をつける」「始末をする」という意味で決闘や揉め事のシーンで、終止符を打つというニュアンスで使われることがほとんどです。
また「けりをつける」は「落とし前をつける」と比べて、角々しい響きがないのが特徴です。そのため、日常的にも「駆け引きの決着をつける」場面でよく使われます。加えて、自分の心の中で迷いがある時、その迷いに「けりをつける」という使い方もできるでしょう。
「落とし前」の類語を使った例文
- 転職をするか、しないか、やっと心の中でけりがついた。
- ライバル会社との顧客争奪戦で、今日やっとけりがついた。
- 元カレとけりをつけるのもよいが、殴り合いの喧嘩にはならないように。
「落とし前」を英語でいうと?
英語で「落とし前をつける」は「How would you pay for this?」
英語圏で「「落とし前をつける」は「How would you pay for this?」というフレーズを使います。これは金銭的・道徳的の両方の意味での後始末を指し、相手に強く責任を追及する時に、落とし前の大小関係なく使われます。
たとえば、恋人が待ち合わせの時間を破った時やレストランで頼んだものが違っていた時など、小さい過ちにも、冗談交じりに相手を揶揄するように使うこともあります。
また、仕事で契約違反をしたり、相手にけがをさせてしまったような重大な過失の時は「How would you compensate?(どうやって損害賠償するつもりだ?)」を使うことが多いです。この場合、心の負った傷や心身的なダメージに対しても問われる可能性があるため、あえて法律的な手続きを踏まえて「compensate」を使っています。
「落とし前をつける」を使った英語例文
- 浮気現場を目撃。さあ、どう落とし前をつけてもらおうか。
I saw you were having an affair. How would you pay for this? - 車をぶつけやがって。どうやって落とし前をつけるつもりだ。
You have crushed into my car. How would you pay for this?
まとめ
「落とし前」とは「失礼や無礼に対して後始末をすること」「不祥事に対して自ら責任をとること」という意味があります。
「落とし前をつける」は日常生活ではほぼ使わない表現ですが、責任を追及する場面で「落とし前ってものがあるよね」「落とし前はしてもらわないと」などとは言ったりするかもしれません。少なくとも言葉にインパクトがあるので、覚悟を決めて、相当な「責任問題」に対してだけに使うようにしましょう。