「親しき仲にも礼儀あり」の意味とは?由来・例文や類義語も解説

「親しき仲にも礼儀あり」という注意の言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。また、礼儀を失した相手の態度に心の中で「親しき仲にも礼儀あり」とつぶやいたことがあるかもしれません。

この記事では、「親しき仲にも礼儀あり」の意味や由来、使い方・例文を紹介します。あわせて類語や英語表現も解説します。

「親しき仲にも礼儀あり」の意味とは?

「親しき仲にも礼儀あり」の意味は「親しい間柄でも守るべき礼儀がある」

「親しき仲にも礼儀あり」とは、どんなに親密で親しい間柄であっても、守るべき礼儀があるという意味を伝えることわざです。

仲が良すぎたり、関係が深すぎたりすると、つい気が緩んでしまい、一線を越えて礼を失するようなことをしてしまいがちであり、またそのことから人間関係を損なうことがあるので、気を付けなければならないという戒めの意味を持っています。

「親しき中にも礼儀あり」と書くこともあり、また「親しき仲に礼儀あり」ともいいます。

「親しき仲にも礼儀あり」の由来とは?

由来と断定されていないが『論語』に同じ意味の言葉がある

「親しき仲にも礼儀あり」の由来や語源はわかっていません。しかし、古代中国の思想家である孔子の言葉をまとめた『論語』に礼儀の大切さを説いた教えがあり、これを起源とする説もあります。

また、あとで紹介する欧米のことわざにも「親しき仲にも礼儀あり」と同じ意味を持つものが複数あり、古今東西、人間の普遍の真理として各国に古くから伝わる共通の人生訓であるといえます。

『論語』から対象箇所の原文と書き下し文、日本語訳文を紹介します。

『論語』(学而第一より)

原文:
有子曰、礼之用和為貴、先王之道斯為美、小大由之、有所不行、知和而和、不以礼節之、亦不可行也。

書き下し文:
有子曰く、礼の用は和を貴しと為す、先王の道、これを美と為す。小大之に由る。行われざる所あり、和を知って和すとも、礼を以てこれを節せざれば、亦行わるべからざるなり。

訳文例:
有子先生がおっしゃいました。礼の働きには「和」が重要です。昔の王も和をもって国を治めることを大切にしていました。しかし何事にも和だけに即して行おうとしてもうまくゆかないこともあります。「礼」をもって調和をはかるのがよいでしょう。

「親しき仲にも礼儀あり」の使い方と例文

「親しき仲にも礼儀あり」は、親しい間柄であっても超えてはならない一線があるという戒めの言葉として引用される形で使われます。

例文
  • 親しき仲にも礼儀ありと言うとおり、どんなに仲の良い友達であっても言葉のマナーには気を付けたい
  • 親しき中にも礼儀ありの気持ちを忘れずに、仲の良い同僚同士の飲み会でも羽目を外し過ぎないことが大切だ
  • いくら親しい仲でもお礼の言葉は忘れないようにしたい。親しき仲にも礼儀あり。
  • 親しき仲にも礼儀ありというとおり、親しい間柄でも踏み込んではいけない領域があることを自覚しておくことだ
  • 親密になるために何でも言い合える関係を目指すのはよいが、親しき仲にも礼儀の精神は忘れないようにしたい
  • 親子であっても親しき中にも礼儀ありだから、何でも思ったことを言ってよいわけではない

「親しき仲にも礼儀あり」の類義語(類語)とは?

「親しき仲にも礼儀あり」と同じ意味の類語「良仲には垣をせよ」

「親しき仲にも礼儀あり」と同じ意味を持つ格言に、「良仲には垣をせよ(よいなかにはかきをせよ)」があります。親しい間柄でも、礼儀は守らなくてはいけない、という意味を「垣(囲いの意)」をたとえとして表現しています。「親しき仲に垣をせよ」ともいいます。

このような同じ意味をもつ格言は他にもあり、「思う仲には垣をせよ」「心安いは不和の基」などもあります。

親しくなりすぎるのは仲たがいのもとという意味の類語「心安いは不和の基」

あまりに親しくなりすぎるのは、仲たがいのもとであるという意味のことわざに「心安いは不和の基(こころやすいはふわのもと)」があります。

親しくなりすぎるとつい遠慮がなくなり、礼儀を失することがあるということを戒める言葉です。「親しき仲にも礼儀あり」と共通して、人間関係に陥りがちな気のゆるみを指摘する表現です。

優れた人物の精神の独立性を説く「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」

「親しき仲にも礼儀あり」は、人間関係の距離の取り方を説く処世術の側面があります。同じく人間関係における直接的な類語ではありませんが、『論語』を出典とする孔子の言葉に「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず(くんしはわしてどうぜず、しょうじんはどうじてわせず)」というものがあり、同じく距離の取り方を示しています。

「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」とは、「優れた人物は人と親しくしてもむやみに同調することがない。器の小さい人間は自主性を欠いてすぐに人に同調しする」という意味です。

他人と真に親しくつきあうには、一線を引いて独立した精神を持つことが必要だと述べており、「親しき仲にも礼儀あり」と通ずる精神であるといえます。

「親しき仲にも礼儀あり」の英語表現は?

「親しき仲にも礼儀あり」は英語で「A hedge between keeps friendship green.」

「親しき仲にも礼儀あり」の英語表現はいくつかありますが、代表的なものに「A hedge between keeps friendship green.」があります。

「hedge」とは「生け垣、垣根」という意味で、「between」は「間」という意味です。そして、「保つ」という意味の「keep」と「友好、友人関係」という意味の「friendship」、そして「活気に満ちた、生き生きした」という意味の「green」で「親しき仲にも礼儀あり」(間に垣根があることが友情を生き生きと保つ)となります。

他には「Good fences make good neighbors.」とも表現されます。「fence」とは「柵、垣」という意味で、「make」は「作る、作り上げる」、「neighbor」は「隣人」という意味です。

まとめ

「親しき仲にも礼儀あり」とは、どんなに親しい間柄であっても、礼儀を忘れてはならないとする戒めの言葉です。気を許した相手にはついつい甘えてしまい、この位は許してくれるだろうと、心無い言葉をぶつけてしまうことが往々にしてあるものです。

そのような気のゆるみから、大切な人間関係にひびが入ってしまうリスクを回避するためにも、相手に対して「礼儀」を守るという基本を忘れないようにしたいものです。