「失念」の意味と使い方とは?類語「放念」との違いも解説

ビジネスメールやビジネス文書で「~の件、失念しておりました」など、「失念」という言葉を使うことが多いと思いますが、意味や使い方についてもしっかり理解を深めたいものです。

ビジネスシーンで使用頻度の高い「失念」を取り上げ、意味と使い方、類語と反対語、英語表現を解説します。

「失念」の意味

まず「失念」の意味と言葉の成り立ち味を紹介しましょう。

「失念」の意味は「うっかり忘れる」

「失念」の意味は「うっかり物事を忘れること」です。他にも「物忘れをすること」「度忘れをしてしまうこと」という意味があります。「財布を家に忘れた」「カバンを置き忘れた」などの「忘れる」の意味ではありません。

「失念」は「本当はわっかっているのですが、うっかり頭から離れてしまいました」というようなニュアンスを持ち合わせている言葉であるため、「故意に忘れた」「意識にも残っていない」というような無関心で無礼な印象を与えることも少ないでしょう。「失念」は自分の「うっかり」に対し、相手に丁寧な印象を与えながら伝えることができるとても便利な言葉です。

「失念」の成り立ち

「失念」の「失」は「忘恩」「忘我」「忘却」「健忘」などの言葉にも使われ、「記憶がなくなる」、「念」は「ものごとについての考えや内容」「思い」「願い」などの意味をそれぞれ持ち合わせています。「失念」は言葉が説明するように「ものごとへの考えや思いの記憶がなくなること」を意図して成り立つ言葉です。

「失念する」の使い方と敬語表現

続いて「失念」の正しい使い方と気を付けたい点を挙げてみます。

「失念」は「忘れる」の謙譲語

「失念」は「忘れる」の敬語表現で「私」が主語となる謙譲語になります。あくまで「私が失念しておりました」というように使つため、「失念」をする人物が必ず「私」「自分」であることを確認することが大切です。

また、第三者や目上の人に対して「失念」の敬語表現をしたい時は「部長は失念したようです」「田中さんは失念していた」などとするのは間違いです。「部長はお忘れになったようです」「田中さんはお忘れになっていた」のように「尊敬語」を用いるようにしましょう。

「失念」は多用NG

「失念する」という言葉は「うっかり忘れること」です。忙しいビジネスシーンでは多くの業務を一人でこなすことも稀ではなく、一度や二度の「うっかり」はあることでしょう。

しかし、この「うっかり」が日に何度もあるとどうでしょうか。「本当に真剣に仕事をしているのだろうか」「私のことは後回しにされているのでは」と疑問の念を抱いてしまうことも否めません。

「信用」が最も大切なビジネスシーンでは「失念」の多用は避けましょう。「うっかり」もほどほどにしなければ、信用が落ちてしまうかもしれません。

「失念」にはお詫びの気持ちも含まれる

「失念」は「うっかり忘れている」ことに対して「申し訳ない」「すまない」といった「お詫び」の気持ちが含まれている言葉です。「失念しておりました」と表現することで「申し訳ありません。うっかり忘れておりました。お許しください」というニュアンスを運んでくれる表現でもあるのです。

「業務が立て込んでおり、メールの返信を忘れておりました」「業務が立て込んでおり、メールの返信を失念しておりました」では、相手に伝わる「お詫び」の度合いが変ってきます。

「失念」を使ったビジネス例文

「失念」を使ったビジネス例文を挙げてみましょう。

「失念する」

  • 営業日誌の提出を何度も失念することは、もはや許されないだろう。
  • 部長との個人面談の時間を失念することのないよう、机にメモをはっておこう。

「失念しておりました」

  • ミーティングが長引いたせいか、メールの返信を失念しておりました。
  • 顧客への来訪時間を、失念しておりました。

「失念いたしました」

  • 申し訳ございません。不幸にもログインへのパスワードを失念いたしました。
  • お約束の入金を失念いたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。

「失念」の類語と反対語は?

それでは「失念」の類語と反対語についてみましょう。

「失念」と類語「放念」の意味の違い

「失念」と似た言葉に「放念」があります。ビジネスシーンでも「どうぞ、ご放念ください」というように使われますが、この言葉の意味は「どうぞ、心に留めず気にしないでください」「どうぞ、忘れてください」です。

やりとりをしている相手に対し「ご放念ください」を用いることで、「こちらは忘れていただいて構いません」という意図を丁寧な表現を持って伝えることができます。「状況や内容が変わりました。どうぞ、ご放念ください」「こちらの勘違いでございました。申し訳ありませんが、ご放念下されば幸いです。」などのように表現すれば、相手への敬意もしっかり表すことができるでしょう。

「失念」のその他の類語は「取り忘れる」「面忘れ」

「失念」で「ものごをうっかり忘れる」という意義での類語には「取り忘れる」「面忘れ」「打ち忘れる」、「覚えていることが困難である」という意義の類語には「忘失」「忘却」「廃忘」などがあります。

  • 顧客との商談が難航し、部長への連絡を面忘れしてしまった。
  • 同僚の業務も抱えることになったため、ものごとに対して忘失することが増えた。

「失念」の反対語は「記憶」「留意」

「失念」の反対語にあたるのは「記憶をする」「心に留めておく」という意味の「記憶」「留意」などです。ビジネスシーンでも「どうぞ、ご留意下さいますようお願い申し上げます」などのように用います。

「失念」の英語で表現すると?

最後に「失念」の英語表現についてみてみましょう。

「失念」は英語で「I made a mistake」

「忘れる」は「forget」ですが、ビジネスシーンで「I forgot to do this(するのを忘れた)」と表現すると、相手にやや「無責任」なニュアンスを与えてしまいます。そのため、代わる言葉として使いたいのが「I made a mistake」です。

状況によっては「I’ve somehow lost my memory(どうやって記憶をなくしたことか)」「I’ve been bit forgetful=忘れっぽくなった」 なども使えますが、「I made a mistake」を含め、頭に「I’m sorry」「I’m terribly sorry」などの「お詫び」のフレーズを忘れないようにしましょう。

「失念」を使ったビジネス英文

  • I am sorry, I made a mistake about the time to meet you up today.
    申し訳ありません。待ち合わせの時間を失念しておりました。
  • I am terribly sorry. I’ve been bit forgetful as getting really busy at work.
    業務が忙しくて、いろいろ失念することが多くなったよ。本当に申し訳ない。

まとめ

「失念」は「うっかり忘れる」「度忘れする」「物忘れをする」という意味があり、敬語表現である謙譲語として使われます。しかし、「失念」を使い過ぎてしいまうと、相手への信用に欠けてしまうことがあるため、多用は避けるようにすることが大切です。

言葉の力を信じて快活なコミュニケーションを始めることができれば、自分流にビジネスライフを楽しむことも夢ではありません。さあ、ボキャブラリーの量を増やしてビジネスチャンスを良好に築いていきましょう。