「紙一重(かみひとえ)」は「金持ちと貧乏は紙一重」というように、二つの対照的なものごとを挙げてわずかな違いしかない、というような意味で使われる3文字熟語です。何となく、普段から使っている言葉ですが、似た言葉「表裏一体」とはどのように意味が違うのでしょうか?
ここでは「紙一重」の意味を中心に、使い方や類語などをご紹介します。
「紙一重」の意味とは?
「紙一重」の意味は「わずかな違い」
「紙一重」とは「わずかな違い」という意味があります。2つ以上のものごとを比べた時に、「薄っぺらい紙きれ一枚の厚さほどの」や「若干の差」という意味で使われます。
「紙一重」はものとものとの間に、数量や程度において、ほんの些細な隔てしかない様子を意味します。たとえば、物質的なもの同士、また状況や地位など目に見えない事象の間にある「わずかな違い」を指す時に使われます。
「紙一重」の「一重」は「一重(いちじゅう)」という意味で、花の「一重咲き」や一重まぶた」などでも使われている言葉です。つまり、もともと「紙一重」とは「紙一枚」ということを表す言葉でもあったのです。
「紙一重」と「表裏一体」との違いは?
「表裏一体」との違いは「根底での密接な結びつき」
「紙一重」に似た表現に「表裏一体」があります。同じような状況で使われる2つの言葉ですが、若干ながらニュアンスに違いがあります。
「表裏一体」とは「相反するように映る二つのものが、実際は根底の部分で密接な結びつきがあること」を表し、二つの物事に深い関係性があることを示す言葉となります。一方で「紙一重」は「わずかな違い」や「若干の差」というように双方の「相違部分」にフォーカスされています。わかりやすく、下記で二つの言葉の比較例文を挙げてみます。
- 金持ちと貧乏は紙一重:金持ちと貧乏にはわずかな違いしかない
- 金持ちと貧乏は紙一重:金持ちと貧乏は実は根底で密接な関係がある
「紙一重」の使い方と注意点とは?
相手に注意や自分への警告を促す時にも使われる
「紙一重」は相手に注意したり、自分への警告として使われることがあります。
「紙一重」は普段の生活の中で、ものごとを紙一枚に例えて比喩的に「わずかな差しかない」と意味で使われていますが、ビジネスや私生活で「ちょっとの差しかないから、気を付けるように」という意図を持って「紙一重」という表現を使うことがあります。
たとえば、職場において取引が初めてのクライアントと感触の良い商談が進んでいるとしましょう。相手は商談に乗り気であっても、翌日に断りの連絡を受けることもあります。このような場合に、状況を慎重に見極めるよう注意する意味で「YESとNOは紙一重」というようにも使うことができます。
また、プライベートでは恋人の笑顔が急にふくれっ面になってしまった時「笑顔とふくれっ面は紙一重」と言って、自分への警告として受け止めることもできるでしょう。
「紙一重」は「一瞬の差」という意味でも使われる
「紙一重」には「わずかな差」という意味もあるため、「一瞬の差」という意味でも使われることがあります。
たとえば、猛スピードの車にぶつかりそうになった時「紙一重でぶつかりそうになった」と言ったり、締め切り時間ギリギリに原稿を提出した時なら「紙一重で間に合った」という表現することができます。
このように「紙一重」は「わずかな違い」というニュアンスの他、距離的に極めて近いという状況でも使われます。
「紙一重」を使った例文
- 今話題の本に、天才と馬鹿は紙一重だという項目があった。
- 梅雨の時期は、雨と晴れは紙一重だっていうよね。
- 係長と課長は紙一重の差で営業成績を争った。
- たとえ紙一重の差とはいえ、入社時期は私の方が早い。
- 人生における成功と失敗は紙一重というより、その繰り返しである。
- スポーツカーが紙一重で、目の前を走って行った。
- ラグビーの決勝戦では、紙一重の差で競合チームに負けてしまった。
「紙一重」の類語とは?
「紙一重」の類語は「辛うじて」「瀬戸際」「首の皮一枚繋がって」
「紙一重」の類語には「辛うじて」「瀬戸際」また、ユニークな表現では「首の皮一枚繋がって」などがあります。下記で意味と使い方を挙げてみましょう。
- 辛うじて:やっとのことで、ギリギリで、何とか(辛うじて投票に間に合った)
- 瀬戸際:生死や勝ち負けなど、運命の分かれ目のこと(今が勝敗の瀬戸際だ)
- 首の皮一枚繋がって:持ちこたえている状況(仕事も首の皮一枚繋がってる状態だ)
これらの言葉は類語としては適切ですが、言い換えの語句としては文脈的にしっくりこない場合があります。「紙一重」は一般的に広く使われている言葉であるため、言い換えが必要な時だけ文脈に沿って適切な語を選ぶようにして下さい。
「紙一重」の四字熟語の類語は「一触即発」
「紙一重」の意義に似た四字熟語の類語は「一触即発(いっしょくそくはつ)」です。「一触即発」とは、ほんの少し触れただけで、ただちに爆発をしてしまうような状況を意味します。つまり、ほんのわずかなきっかけによって重大な事態に発展してしまうことを指す言葉です。
「紙一重」や「一触即発」は、物事の見かけに左右されて油断をしていると、ちょっとしたきっかけで思わぬ事態を招く、といった注意喚起を意図して使われることが多いです。下記で例文を挙げてみます。
- 部長が笑っていても、紙一重で10分後にはどうなっているかわからない。
- 部長が笑っていても、一触即発で10分後はどうなっているかわかrない。
まとめ
「紙一重」とは「紙一枚の薄さほどの」「わずかな違い・差」という意味があり、ものとものとの間にあまり隙間がなく、距離が極めて近いというニュアンスで使われます。
「紙一重」は「〇〇とXXは紙一重だから、注意するべき」というように、表面上は物事にたいそう差があるようでも、実際はわずかな差かないという「ちょっとした警告」のような意味合いで使われることもあります。ぜひ「紙一重」を上手に使って語彙力を高めていきましょう。