「無手勝流」の意味とは?勝負事やビジネスへの使い方・類語を解説

「無手勝流」というと、時代劇や古い映画などで、武士が声を低めて唱える意味深なイメージがあるかもしれません。しかし「無手勝流」はビジネスシーンでも多くの状況で使える言葉でもあるのをご存知でしょうか?

ここでは「無手勝流」の意味と語源をはじめ、ビジネスシーンでの使い方と例文、また類語表現をご紹介します。

「無手勝流」の意味とは?

「無手勝流」の意味1「戦わず相手に勝つこと」

「無手勝流(むてかつりゅう)」とは「戦わず相手に勝つこと」を意味します。勝負事や試合など相手と戦わずして、相手を負かすことを「無手勝流」と言います。

「無手勝流」の「無手」とは、武器や道具などを使用しないこと、「勝流」とは「勝負で相手を倒す方法・流儀」を意味します。つまり、「無手勝流」は「武器や道具などを使わず、自分流の方法で相手を打ち負かすこと」となります。

「無手勝流」の意味2「自分勝手な方法」

前述でもご説明したように、「無手勝流」には「自分流」という意味も持ち合わせています。そのため「自分勝手な方法」という意味としても使われています。現代の使い方では、おおむね、こちらの意味で使われることが多いです。

「無手勝流」の語源

「無手勝流」の語源は戦国時代の剣豪「塚原卜伝」の言葉

「無手勝流」は、今から約500年前の戦国時代に活躍した剣豪「塚原卜伝(つかはらぼくでん)」が、戦いを挑まれた時に相手に放った言葉だと言われています。元となったストーリーの背景については、以下で紹介します。

「塚原卜伝」はどうやって勝ったのか?

ある日、船に乗っていた「卜伝」は突然として勝負を挑まれました。船に上ではまっとうな戦いができないと、相手を上手に川岸に上げました。すると、「卜伝」自身は下船せず、持っていた釣り竿を使って船を岸から離し、何事もなく去っていきました。

この時に言った言葉が「戦わずして相手を負かす。これこそ無手勝流」でした。

もちろん、逃げたのではなく「自己流ながら、勝負に勝った」という意味で放った言葉です。

「塚原卜伝」とは応人の乱や文明の乱といった、激動の戦国時代を生きた人物ですが、そもそ「卜伝」の父親が名剣士であり、剣法の継承者でもあったそうです。厳格な教育を受けたこともあり「剣士たるもの、刀を使って戦うだけが勝負への道ではない」そう悟ったのでしょう。

「無手勝流」の使い方と例文

「無手勝流」はビジネスシーンで大いに活用できる

「無手勝流」は勝負や試合の時だけに使われる言葉ではありません。ビジネスシーンでも活用できる言葉です。

たとえば、いつもは営業成績が思わしくない同僚が、最近調子を上げて成績トップに躍り出た時に周囲に「一体、どんな方法で成績を上げたの?」と質問攻めにあったとします。このような状況では、やや秘密めいた表情で「いや、無手勝流ですよ」と言い放つことができます。

また、社会人として間もない新人社員に対して「無手勝流もいいけど、先輩のアドバイスも聞こうね」と、業務に対する取り組みや目上の人へのマナーに対して、間接的に忠言することもできるでしょう。

その他、プロジェクトや企画などを任された時に「無手勝流ながら、全力投球で頑張ります」と、自身の意気込みをアピールしたり、「無手勝流であったため、顧客に逃げられました」と反省文の一部として言葉を引用することもできます。

「無手勝流」を使った簡単な例文

  • 無手勝流というように、ライバル会社が仕掛けてきても相手にするな。
  • ここは焦らず、無手勝流の精神を持って、相手を泳がせますか?
  • 「広告のデザイン、とても良かったよ」「いや、まさに無手勝流ですよ」
  • 業務マニュアルを度外視していた若手社員に「無手勝流もほどほどに」と揶揄した。
  • 無手勝流とは言えども、今月の売り上げが倍以上伸びたのは評価すべきだ。
  • 部長は頑固の上、新人教育もかなりの無手勝流を通す。

「無手勝流」の類語とは?

「自己流」は自分一己の流儀・方法

「自己流」は「自己一己の流儀や方法、やり方」を意味する言葉です。「自己流」は「自己流のやり方」「自己流を通す」など、広く使われていますが、根本的には「第三者から指導されたり、教わったものではなく、世間一般の方法とは異なる」という意味となります。

「無手勝流」と異なるのは「戦わずして相手を負かす」というニュアンスに欠けるという点でしょう。「自己流」は「自分独自のやり方」を良しとして相手に主張する際に使うのがベストです。

例文
  • スペイン語を習得したけど、結果的にほぼ自己流だった。
  • 職場では、誰が何といおうと自己流を通した。

「我流」は「自分勝手な流儀・方法」

「我流」とは「自分勝手な流儀や方法」を意味し、自分が決めた独自のやり方や「オンリーワンの流儀」を指す時に使われます。つまり、正規の流儀や作法などにのっとっていない自分流のやり方を指します。前述の類語「自己流」と同じような意味合いで使われますが「我流」を使うと「やや自分勝手でわがままな」というニュアンスが強調されることがあります。

また「無手勝流」と異なる点は、「自己流」と同様「戦わず相手に勝つ」と意味では使われないことです。

例文
  • 生け花教室に通ったことはないが、我流で花を活けてみた。
  • 母は子育てで我流を貫き通したが、子供たちは健康で元気に育った。

まとめ

「無手勝流(むてかつりゅう)」とは、「戦わず相手を負かすこと、相手に勝つこと」また「自己流」「自分流」という意味を持つ言葉です。

語源となった背景を想像すれば、冷静沈着に相手を見送り「自分なりの勝ち方」を見出した瞬間だったのでしょう。ビジネスシーンでも「無手勝流」を戦略的にに使って、無駄のない戦いを実践することができるのかもしれません。