「据え膳食わぬは男の恥」という食を題材にしたことわざがあります。一般的に男性に対して「好意を持つ女性がいるのに相手を受け入れない」状況で使うことが多いですが「据え膳」と「男の恥」には、どのような関係があるのでしょうか?
ここでは「据え膳食わぬは男の恥」の意味をはじめ、適切な英語表現、日常生活での使い方や類語などをご紹介します。
「据え膳食わぬは男の恥」の意味とは?
意味は「言い寄る女性を拒むのは男の恥」
「据え膳食わぬは男の恥」とは「女性から言い寄っているにも関わらず、その好意を受け入れないことは男として恥ずかしい」という意味を持ちます。
男女の色恋には「男性から持ちかける場合」と「女性から持ちかける場合」がありますが、このことわざでは、女性からわざわざ好意を寄せて相手に近づいている状況が舞台となります。あとは、男性が受け入れるだけですが、そうしないことを「男性の恥」と位置づけたことわざが「据え膳食わぬは男の恥」です。
「据え膳」には「周囲に任せて何もしないこと」また「男女の仲で女性が男性に身を任せること」という2つの意味があります。「据え膳食わぬは男の恥」で使われいる意味は、後者の方です。
そもそも「据え膳」は「支度の整った食事」のこと
「据え膳(すえぜん)」は、現代では「上げ膳、据え膳」」というように使われることが多いですが、もともと「すでに準備されている食事」という意味があります。例えば、旅館や料亭で宿泊する時に朝食や夕食が御膳の上に並べられていて、「後は食すだけ」という状態が「据え膳」です。手間も努力も必要なく、美味しい料理をすっと食べることができるのが特徴でしょう。
本膳料理や懐石料理などは一つの御膳に一人分の食事が支度されていますが、これらも現代に残るリッチな「据え膳」の例となります。
英語では「A gentlemn must not embarrass a lady」
「据え膳食わぬは男の恥」は英語圏の感覚では理解しずらいことわざです。しかし、レディーファーストを率先する欧米色の文化を考慮して英訳するなら「A gentleman must not embarras a lady(女性に恥をかかせるべきではに) 」程度で留めておいた方が無難でより自然です。
「据え膳食わぬは男の恥」の使い方と例文
「据え膳食わぬは男の恥」で男性の身勝手さを表すことも
男女の恋愛における背景は、十人十色で本当に様々です。ことに女性が積極的に男性に思いをアピールしているのに、男性は知らんぷりをしていると、あたかも男性の方に非があるかのように、「身勝手な人」だと後ろ指を指されてしまうことがあります。
せっかく女性から一心決意をして言い寄っているのに「好意を無駄にするとは男としてやましい、後ろめたい」また「女性に恥を欠かせないように」というニュアンスを含めた意味で使うことがあります。男性にとっては余計なお世話となるかもしれませんが、周囲からみると「身勝手」と取れてしまうのは「可愛そう」と感じる人もいるでしょう。
逆に、男性が女性に思いを寄せて一方的にアタックしている場合は「女性の身勝手」というイメージが薄れるのは不思議です。
「据え膳食わぬは男の恥」で「もったいない」と揶揄する
現代では「男女の交際に至るプロセスの容易性」を揶揄する意味でも使われることもあります。
つまり、あとは「OK」のサインを出すだけなのに「もったいない」「何をモタモタしているんだ」と相手をからかうというニュアンスです。
確かに、男女の交際においては、相手の趣味趣向を調べて、それから交際を申し込んで、気持ちを確かめて、返事を待ってというプロセスは時間と労力を多大に使ってしまいます。むしろ、このような苦労をせず、目の前に現れた女性を受け入れた方が楽である、という意味で使われるのは、皮肉でありながらも現実的で的を得ているのかもしれません。
「据え膳食わぬは男の恥」を使った例文
- 新人社員のAさんが、あなたに言い寄ってきているみたいだけど、交際を断るなんて気が知れないわ。据え膳食わぬは男の恥っていうじゃない?
- 据え膳食わぬは男の恥とはいうが、何でもかんでも受け入れることこそ、男の恥ではないか?
- 見合い相手から好意的な返事をもらい、両親から「据え膳食わぬは男の恥って言うでしょ」と肩を押された。
「据え膳食わぬは男の恥」の類語は?
「至れり尽くせり」は「十分な配慮が行き渡っていること」
「至れりつくせり」とは「十分な配慮が行き渡っていること」を意味します。「至る」は「注意が行き届く」、「尽くす」は「出来る限りの努力をして、これ以上申し分がない状態まで持っていく」という意味があります。つまり「至れり尽くせり」で「これ以上注意する点がないほど注意が行き届いて、十分な配慮が施されていること」となります。
「据え膳食わぬは男の恥」が持つ「男女の色恋において女性の思いを男性が受け入れない」という部分は含んでいませんが、「すべての支度ができている」「十分な準備が整っている」という点で共通していると言えるでしょう。
- 彼女は料理も裁縫も得意らしいが、不精な彼には本当に至れり尽くせりだね。
- 至れり尽くせりという状況は、人間をダメにすると母が言っていた。
まとめ
「据え膳食わぬは男の恥」とは」男女の情事に関して、女性が持ちかけた思いを男性が受け取らないことは男の恥」という意味を持ちます。目の前にいる女性が身を任せてもよいと言っているのに、それを受け入れないとは哀れで恥ずかしいというニュアンスを持って使われます。
好意を寄せている女性が目の前にいて、その好意を無駄にするとは男として身勝手である、という意味を強調したこわわざともなりますが、むしろ「もしかしたら、これが良い縁に繋がるかもしれない」と優しく肩を押すイメージで使えば、相手にも肯定的に伝わるでしょう。