「立ち回り」の意味とは?類語や歌舞伎の殺陣・FPSとの関係も

「立ち回り」はさまざまな意味を持ちます。「立ち回りがうまい」という発言から、歌舞伎や演劇の殺陣を連想する人もいれば、FPSゲームが得意なのかと思う人もいます。ですが、ビジネスシーンではどちらの意味でも使わないことが多いでしょう。「立ち回り」の意味や、言い換えに使える類語をご紹介します。

「立ち回り」の意味

「立ち回り」の意味は「有利になるふるまい」

ビジネスシーンや日常生活でよく使われる「立ち回り」の意味は「ふるまい」や「行動」です。自分が有利になるような動き方という意味合いもあります。

例文
先輩がうまく立ち回ってくれたおかげで、部長の機嫌が直った。

人によっては「立ち回りがうまい人」に「ずる賢い」「相手によって態度を変えている」という印象を持つ人がいるようです。「自分が有利になる」という部分を「自分のことしか考えない」ように感じているのかもしれません。本来は「立ち回り」にネガティブな意味は含まれませんが、気になる場合は別の表現に言い換えるとよいでしょう。おすすめの表現は後ほどご紹介します。

歌舞伎などの演劇では「アクションシーン」のこと

「立ち回り」は演劇や映画の世界でも使われます。意味は「乱闘などのアクションシーン全般」です。歌舞伎などの伝統芸能の中には、決まった型を守った立ち回りをするものもあります。

例文
立ち回りを演じることができるように、今から体を鍛えておこう。

当初は、芝居の中の舞と踊りを除いた全ての動きが「立ち回り」と言われていました。次第に、戦いのような激しいアクションシーンを示すように変わっていったようです。

近年ではFPSなどのゲームで「上手な動き方」という意味で使われる

近年では「立ち回り」はFPSなどのゲームの「上手な動き方」という意味で使われることが増えてきています。難易度が高く、繊細な動作が必要なゲームで使われることが多いようです。

例文
このボスを倒すには、もっと立ち回りを考える必要がある。

FPSとは、First Person Shooter(ファーストパーソンシューター)の略です。ゲーム画面には動かすキャラクターの視界が描写されるため、自分がキャラクターになったような一体感を味わえるのが魅力です。武器を使って相手と戦うゲームが多いのですが、戦いがないアクションゲームでも「FPS視点」と呼ぶことがあります。

「歩き回る」「乱闘」という意味もある

「立ち回り」には以下のような意味もあります。

  • 歩き回ること、立ち寄ること。
  • 殴り合うような喧嘩(けんか)、乱闘。
  • 能の所作。演奏を伴いながら、舞台を一回りすること。

「乱闘」に関しては、由来は演劇で使う「立ち回り」だと言われています。

「立ち回り」の使い方と例文

話題によって「立ち回りがうまい」の意味は変わる

「立ち回り」はさまざまな分野で使われるため、話題によって具体的な意味合いが変わってきます。「立ち回りがうまい」という言葉を例にして、差を見てみましょう。

「立ち回りがうまい」の詳細(一例)
  • 職場や日常生活
    人間関係の構築がうまい。
    明るく、周囲の人との交流をしっかりとっている。
  • 演劇関係
    アクションシーンの演技がうまい。
  • ゲーム関係
    ゲームのスキルがあり、操作がうまい。
    適切に行動して、有利に戦うことができる。

「立ち回り」の類語や言い換え

職場や日常生活の「立ち回り」の類語は「処世術」

職場や日常生活の「立ち回り」の類語は「処世術(しょせいじゅつ)」です。「処世」は「世間と交わり、上手に生活していくこと」です。「処世術」はその方法ということになります。

言い換え例
Aさんの立ち回り方は、とても参考になる。
→Aさんの処世術は、とても参考になる。

印象が気になる場合は「周りをよく見ている」に言い換える

本来、「立ち回り」にはネガティブな意味はありません。しかし、多くはありませんが「立ち回りがうまい」ことに悪い印象を持つ人もいます。気になる場合は「周りを良く見ている」や「良く見える」に言い換えましょう。

言い換え例
私も先輩のように、立ち回りがうまい人になりたいです。
→私も先輩のように、周りがよく見える人になりたいです。

演劇の「立ち回り」の類語は「殺陣」

演劇の「立ち回り」の類語は「殺陣(たて)」になります。劇中の試合や喧嘩、戦いなどのアクションシーンの演技のことです。

もともとは歌舞伎で使われていた用語です。歌舞伎の殺陣・立ち回りは、美しさを重視し、舞踊のように定型化されています。一般の劇やドラマで見られる写実的な殺陣は、大正時代に新国劇(しんこくげき)という劇団が始めたと言われています。

FPSゲームの「立ち回り」の類語は「ムーブ」

FPSなどのゲームでの「立ち回り」の類語は「ムーブ」です。「ムーブ」は英語の「move」の「動く」という意味で使われています。ゲーム内での立ち回りを「動き」と表現しているのです。

「生存ムーブ」のように、他の単語につなげて使うこともあります。意味は、つなげた単語を重視した動きや、単語になる原因になった動きのことです。

例文
  • 初心者のうちは無理せず生存ムーブでいいよ。
    (無理に活躍せず、ゲームオーバーにならないことを重視する立ち回り)
  • 戦犯ムーブをしてしまったが、仲間がカバーしてくれた。
    (チームの敗因になるような失敗や、下手な立ち回り)

まとめ

「立ち回り」の主な意味は「有利になるふるまい」です。ゲームのプレイの仕方にも使われます。また、演劇関係ではアクションシーンのことを意味します。

ビジネスで使われることが多い意味合いは「人付き合いがうまく処世術に長けている」でしょう。「上司がゲームの話をしている」と勘違いしないよう注意してください。