「有事」という言葉を、戦争などの軍事的な危機にしか使わないと思っている人もいるかもしれません。実際には、新型コロナウィルスなどの感染症流行や、経済的な事件、大きな災害など、さまざまな状態に使える言葉です。意味や使い方を確認しましょう。また、類語や対義語もご紹介します。
「有事」の意味
「有事」の意味は「普段と違う事件が起きること」
「有事(ゆうじ)」とは「普段と違う事件が起きること」という意味です。
戦争などの軍事的な危機に主に使われますが、災害や経済的な混乱など、影響の多い事件や危機的状況にも使用できます。個人的な事柄に使うことはまずありません。「大げさすぎる」と思われてしまうでしょう。
「有事」の使い方と例文
「有事」は戦争の代わりに使われる
「有事」は「戦争」や「テロ」という意味で使われます。ニュースで多く見られますが、日常会話にも使えます。
- 有事に備えるため、新たな軍事基地を建設することが発表されました。
- 夫は自衛隊員なので、有事の際には出動してしまうんです。だから、私が子どもを守らないと。
「有事」は自然災害の意味でも使われる
「有事」は自然災害にも使われます。日本は火山の噴火や地震、台風など災害が身近な国のため、戦争よりも災害の方が「有事」のイメージがあるという人もいるかもしれません。
- 有事が起きてからでは遅いので、今のうちに防災グッズを用意している。
- 非常用飲料水貯水槽は、有事の際に使える給水施設だ。
- 有事のときだけではなく、普段から防災・減災を意識して生活しよう。
- 有事に備えて避難用すべり台を設置した。
コロナ流行や経済危機などの事件にも使われる
「有事」はさまざまな危機的状況に使用できます。感染症の流行や、経済的な危機、人為的な大事故・大事件など、ジャンルを問わないのが特徴です。
- 有事の際には、安否確認メールを全従業員に送信することになっている。
- 有事対応マニュアルを更新したので、今週中に変更内容を確認してください。
- 有事は起こるものだと思って、万全の準備をしておこう。
「有事の円買い」は国際的に信頼される円が買われること
「有事の円買い」とは、国際的に信用されている日本円が、有事の際に買われる現象のことです。有事が起きると、市場は混乱します。そのため、投資家はリスクを回避しようと、国際的に信頼される安全資産を求めます。円はその中に含まれているのです。
ただし、今後もずっと安全資産とみなされるとは言い切れません。例えば、以前は「有事の米ドル買い」と言われていました。しかし、2000年以降にテロなどの大きな事件が発生したことが影響し、有事の際に米ドルが買われることは減っていったのです。日本円も同じように、価値が変化する可能性があります。
「有事法制」とは武力攻撃を受けることに備える法律
有事法制(ゆうじほうせい)とは、武力攻撃などの有事が起きたり、攻撃が予想される際に軍隊(日本の場合は自衛隊・米軍)が円滑に動けるよう規定されている法律です。公共団体や公共機関、国民も協力することになっています。
国民を守るための法律ですが、日本の場合は「憲法第九条に反しているのでは」という疑問・反対の声もあります。第九条の内容は、簡単にまとめると「自発的な戦争を放棄する」というものです。ただし、防衛省のWebページのQ&Aでは、国民を守る自衛のため憲法違反ではないと表記されています。
「有事」の類語
「有事」の類語は「非常事態」「緊急事態」
「有事」と同じように、さまざまなジャンルの危機的状況に使われる類語が「非常事態」と「緊急事態」です。
- 非常事態(ひじょうじたい)
通常のときとは違い、危機のある状態。
例文:楽しみにしていた海外旅行だったが、現地で非常事態宣言が発令されたので中止することにした。 - 緊急事態(きんきゅうじたい)
すぐに対応する必要がある状態。
例文:緊急事態だと言うのに、社内にいるはずの社長が見つからない。
日常記録だけでなく、有事の際に国が地方自治体が発令する宣言にも「緊急事態」「非常事態」が使われます。2020年には、新型コロナウィルス流行の際に緊急事態宣言が発令されました。なお、現代の日本の場合、緊急事態宣言・非常事態宣言に強制力や罰則はありません。
「有事」の対義語
「有事」の対義語は「平時」「無事」
「有事」の対義語は「平時」「無事」です。
- 平時(へいじ)
変わったことや戦争などがない、平和でいつも通りなこと。
例文:「平時にも邪魔にならない」が、この防災グッズのテーマです。 - 無事(ぶじ)
変わったことがなく、普段とおりのこと。
例文:毎日、無事に過ごせることを神様に感謝している。
なお、「無事」には他の意味もあります。「事故や失敗がないこと」「元気で健康なこと」です。
まとめ
「有事」は「普段と違う事件が起きること」という意味です。影響が広い、危機的な状況に使われることがほとんどです。戦争や災害、感染症の流行など、さまざまな状況に使用されます。
防災や感染予防など、個人でも有事に備えられることは多くあります。有事が起きてから慌てるのではなく、平時から準備を整えておきましょう。