「已む」の意味と読み方とは?「已む無し」等の使い方や類語も

「已む」という言葉を読むことができますか?「已む」は「已むを得ない」という熟語表現として日常的に使われていますが、正確な意味や使い方を把握できていますか?
ここでは「已む」について、意味と読み方のほか、よく使う言い回し「已むを得ない」の使い方や類語などを、例文を用いてわかりやすく解説します。

「已む」の意味と読み方とは?

「已む」の意味は「継続していたことが終わる」

「已む」とは「継続していたことが終わる」ことを意味します。今まで続いていたことが、何らかの原因で続かなかくなる様子を指します。

また、行動や物事をしないままで済ませてしまうこと、実行されないまま終了してしまうこと、という意味も持ち合わせます。「已む」には物事に決着がつき、動きがストップしてしまうことを表す抽象的な言葉として使われます。

「已む」が読めない?読み方は「やむ」

「已む」の正しい読み方は「やむ」です。

ちなみに「已む」の「已」には「以」と同じ意味があり、「已降(以降)」「已降(以降)」「已上(以上)」というように使うことがあります。現代ではほぼ使われませんが、古い書物や歴史本などでは稀に見かけることがあります。

「已む」と「止む」は同義語として使われる

「已む」と「止む」は、読み方も同じで、かつ同義語として使われます。あえて違いを挙げるなら、現代で使われている方が「止む」、そうでない方が「已む」というニュアンスです。私たちが一般的に目にする新聞や雑誌、教本や漫画などでは「已む」という漢字はほぼ見かけないでしょう。

「已む」の語源

「已む」の「已」の字は象形文字で、曲がった木の農具「すき」を表しています。後に3つの異体字に分かれ、「已」は止まることを意味する字として使われるようになったことが「已む」の語源と考えられています。

「已む」の使い方とその例文

「已む」は気持ちや痛みなどに対しても使われる

「已む」は気持ちや感情、また「足の痛み」などのように実際的に感じる痛みに対して、「気持ちが已む」「感情が已む」「痛みが已む」などのように使います。以下で例文を挙げてみます。

例文
  • 沈んでいた気持ちがようやく已んだ。
  • 怒りやイライラとした感情は、すっかり已んだようである。
  • 腰の痛みが已み、運動を続けることができるようになった。

このように、物事の状況が止まることを表す意図で使われますが、「已む」は良い意味や良い方向に向かう状況でも用いられることが理解できます。

「已むを得ない」は「仕方がない」という意味

「已むを得ない」とは「どうすることもできず、仕方がない」という意味があります。状況や物事などに対し、他の方法や手段をとっても何も手立てがなく、しょうがないという意味で使われる言葉です。

言葉を分解すると「已む」と「得ない」に分かれますが、「得ない」には「物事を行うことが不可能なさま」という意味があります。

「已むを得ない」という表現を使う時は、何かを施して良くしたいという気持ちがありながら、どうすることもできないという感情で溢れていることが多いです。非常に残念だが断念するしかないという落胆した感情を伴いのが特徴となります。

また「已むを得ない」は、現代のメディアや読み物において「止むを得ない」と表記することが多いようです。もっとも「止む」は広く一般的に使われる馴染みのある常用漢字であるため、好んで用いられる傾向にあるといえます。もちろん「已むを得ない」でも間違いではありません。

「已むを得ない」を使った例文

通常は「止むを得ない」と「止む」を使った方が相手に伝わりやすいですが、ここでは、「已む」という表記を使って例文を挙げていきます。

例文
  • 台風が接近しているため、運動会は延期にするのは已むを得ない。
  • 出張先から、已むを得ず会社に戻ったのは、重要な会議があったからだ。
  • 彼女には別の恋人がいた。交際をを断念するのは已むを得ない。
  • 週末の休みでも、已むを得ない状況であれば、いつでも連絡をして下さい。
  • 子供が遠足で熱を出し、已むを得ず、帰宅することになった。

「已むに已まれぬ」「已む無し/已む無く」も同様に使われる

「已むを得ない」とほぼ同意義で使われるのが、「已む無し」「已む無く」や「已むに已まれぬ」です。

「已む無く」は「已む無い」の連用形で「仕方なく」、「已むに已まれぬ」は「そうするよりほかはない」「やめようにもやめられない」という意味になります。

「已む」と「已むを得ない」の類語と例文

「已む」の類語は「停まる」「休止」「停止」

「已む」の類語には、止まることや物事が継続できなくなることを意味する「停まる(とまる)」「休止」「停止」などがあります。

「停まる」や「停止」は、継続していた物事が絶えてしまったり、人の動きがとまることを意味し、「休止」は一旦休んで止まるものの、後で動きだす可能性を含む言葉です。その点では「休止」は「已む」と使い方が異なる場合もあります。

類語の比較例文
  • 胸の痛みが已んだ(痛みは止まった)
  • 胸の痛みが停止した(痛みは継続しなくなった)
  • 胸の痛みが休止した(今は止まっているが、痛み出すかもしない)

「已むを得ない」の類語は「致し方ない」「打つ手がない」

「已むを得ない」の類語は「致し方ない」「打つ手がない」などです。

「致し方ない」は「致す」という謙譲表現を用いているため、相手に対して自分をへり下る状況で使われます。

「打つ手がない」は「有効な手段や方法がない」という意味で、なすすべや方策が見当たらないというニュアンスで使われます。そのため状況にフォーカスした「已むを得ない」と違い「手段」にフォーカスした言い回しとなります。

類語の比較例文
  • 電車が運休となれば、已むを得ない(仕方がない)
  • 電車が運休となれば、致し方ない(仕方がない、の丁寧な言い回し)
  • 電車が運休となれば、打つ手はない(八方ふさがりである)

まとめ

「已む」の読み方は「やむ」で、「物事や状況が続かなくない止まること、終了すること」を意味する言葉となります。現代では、多くの場合で同義語の「止む」が使われ、日常的に「已むを得ない」「已む無い」というように文章で用います。