日本では会社が社員の健康管理を行うために、定期的に健康診断を行いますが、その中で、雇用をする時に行うものが「雇い入れ時健康診断」です。会社の労務としてや雇用者として等、どのような項目を受ける必要があるのか、またいつまで行うべきか等を把握しておくことが大切です。ここでは「雇い入れ時健康診断」について、受けるべき項目や気を付ける点などをご紹介します。
「雇い入れ時健康診断」とは?対象者・費用について
意味は「雇用者が入社する時に受ける健康診断」
「雇い入れ時健康診断」とは、雇用者が入社の際に受ける健康診断のことをいいます。
「雇い入れ時健康診断」は、企業が雇用者に対して行うべき規則が定められている、労働安全衛生規則の第43条で確認することができます。この条項に「事業者が雇用者を受け入れる時、医師による健康診断を実施しなければならない」とあります。
つまり、雇用時に、事業側は雇用者の健康を確認するために行う健康診断のことです。
パートやアルバイトが対象に含まれる場合も
「雇い入れ時健康診断」を実施すべき対象者は、正社員や契約社員だけではありません。パートやアルバイトの場合でも一定の条件に該当する場合は、検査を受診する義務があります。
「雇い入れ時健康診断」が必要な条件は以「雇用期間が1年以上の予定の人で、かつ一週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上ある場合」です。つまり、契約の年数と労働時間において該当する場合は、雇い入れ時健康診断を受ける義務があるということになります。
たとえパートやアルバイトでも、契約を更新して1年以上の就業予定がある人は「雇い入れ時健康診断」が必要となります。
- 3か月(もしくは半年など)の契約だが更新をして、1年以上の就業が予定される人
- 1年の契約だが、引き続き更新を行う予定の人
有害業務従事者は6か月以上の場合必要
深夜業や有機溶剤などのは、有害業務従事者に対して特定業務従事者の枠に当てはまります。そのため、1年ではなく6か月以上の雇用で「雇い入れ時健康診断」が必要になります。
一般的な業務ではなく、極めて健康管理に注意しなければならない職種であることから、半年という区切りを設けて検査を実施しています。
費用負担の原則は事業主
雇い入れ時健康診断にかかる費用について「企業持ちか、それとも個人負担か」という点で不可解な点もあるでしょう。
雇い入れ時健康診断は労働安全衛生規則で正式に定められていますが、かかる費用については法律的な決まりはありません。そのため、基本的には費用を負担するのは事業主でも雇用者でも、どちらでも構わないということになります。
しかし、雇い入れ時健康診断が法的に義務付けられて行うのは事業主です。そのため、原則的には、雇用者の健康を管理する側の立場としても、事業主が負担をするという解釈が最も適切だといえます。
「雇い入れ時健康診断」はいつでまに実施する?
実施時期は入社の直前・直後
先述しましたように「雇い入れ時健康診断」は、事業主が雇用者に対して、入社時に行なわなければならない義務となっていますが、あわせて「実施する時期」にも気を付ける必要があります。
「雇い入れ時」の実施時期は「雇い入れの直前か、もしくは直後」となっています。しかし、「直前・直後」という表現はやや不明確なニュアンスがあるでしょう。
具体的に「雇い入れ時健康診断」を実施すべき時期として適切なのは、「入社をする前おおむね3か月以内、また入社後になる場合は直後から1か月程度」です。事業側が雇用を決めた場合は、できるだけ早く連絡を入れて、雇い入れ時健康診断の時期を説明きましょう。
定期健康診断と重なった時の対応
もし、雇い入れ時健康診断と会社の定期健康診断が重なった場合は、事業主と雇用者が話し合い、双方が納得すれば、定期券診断を雇い入れ時健康診断という形で解釈しても問題はありません。
同様に、会社が行う定期検診が1か月から2か月ていど先にあるような場合は、雇い入れ時健康診断を、その年に受診すべき定期健診とみなすこともできるでしょう。年に一度行われる定期健診という性質柄、実際的に短期の間に2度の検査を受ける必要もないと考えることができるからです。
「雇い入れ時健康診断」で実施すべき項目とは?
法律で定められた検査項目に従う
事業側は新しく入社する雇用者に対して、法律で決められた検査項目に従って、健康診断を行なわなければなりません。下記にて必要な検査項目を箇条書きで挙げてみます。
- 既往歴や過去の業務歴の確認・調査
- 自覚症状や他覚症状についての検査
- 身体測定(身長、体重、視覚、聴力、胸囲)
- 心電図の検査
- 尿検査
- 肝機能の検査
- 胸部のX線検査
- 血圧測定
- 貧血の検査
- 血中脂肪の検査
- 血糖値の検査
検査項目は省略してはいけない
雇い入れ時に実施する健康診断は、入社後の健康管理に欠かせないものとなります。そのため、事業側の判断で県さ項目を省略したり、検査項目の延期をしたりすることはできません。
事業主として、また労務管理者としての立場からも、法的に定められた項目を網羅して、雇用者の健康管理に努めるようにしてください。
まとめ
「雇い入れ自健康診断」は、企業が定期的に行う健康診断とは別に、事業主が雇用者に対して実施する法律で定められた義務の一つです。
適切な実施時期は入社までの3か月、もしくは入社後1か月程度が妥当だとされていますので、事業主はこの期間を目途に受診をするように調整していきましょう。
また、受診する項目にも法的に定められています。項目を省略したり、自己判断で飛ばすことはできませんので、事業主、雇用者とも「雇い入れ自健康診断」の内容とその義務を理解するよう努めていきましょう。