「後期高齢者医療費制度」の「高額療養費」申請方法や上限額は?

「後期高齢者医療費制度」では、国民健康保険などと同じく 、医療機関などで支払った額が上限を超えると「高額療養費制度」によってその分が払い戻されます。あるいはあらかじめ「限度額適用認定証」を取得することで限度額までの支払いで療養が受けられる制度があります。

この記事では、「後期高齢者医療費制度」における「高額療養費」の申請方法や上限額、限度額について解説します。

「後期高齢者医療費制度」の 「高額療養費」申請方法は?

1か月のうちで医療機関などで支払った額が一定額を超えた場合に、超えた分が支給される高額医療費支給制度を「高額療養費制度」といいます。

高額療養費では、1か月(同じ月の1日~末日)に支払った医療費が、自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻されます。

なお、一定の所得区分の人は「限度額適用認定証」を提示することにより、医療機関の窓口での自己負担額が自己負担限度額までとなります。つまり、窓口での支払い時に給付が同時に行われることとなり、いったん立て替える必要がありません。「限度額適用認定証」についてはのちほど説明します。

お住まいの市区町村の窓口に「支給申請書」を提出する

初めて高額医療費の該当になったときにお住まいの市区町村から支給申請書が送付されます。必要書類を準備して窓口に提出します。一度申請すると、振込先の口座などが登録され、2回目以降は自動で振込がされます。

申請に必要な書類は本人確認書類や口座番号など

申請時には、高額療養費支給申請書の他に、本人確認書類や口座番号、個人番号(マイナンバー)の確認できる書類、印鑑、後期高齢者医療被保険者証などが必要です。申請書と一緒に送付される案内書で確認することができます。

他にも医療機関等の領収書が求められる場合もありますので、医療に関する領収書は全て大切に保管しておきましょう。

同じ月の複数の医療機関等における自己負担を合算できる

一つの医療機関等における自己負担額が上限額を超えないときで、同じ月に複数の医療機関等に支払いがある場合は自己負担を合算することができ、合算額が上限額を超えれば高額療養費の支給対象となります。

適用対象は、保険適用される診療や処方代に対し、被保険者が支払った自己負担額が対象となります。ただし「先進医療にかかる費用の保険外治療、食事療養費、室料差額」等の保険適用外の支払いは、高額療養費の支給の対象とはされていません。

なお、高額療養費制度は、かかった医療費を月単位で軽減する制度として設計されているため、月をまたいで負担した治療費等は合算することはできません。

申請には2年の期限がある

療養を受けた翌月から2年が経過すると、申請ができなくなります。高額療養費に該当する療養を受けたら、すみやかに手続きを勧めましょう。

逆に、2年間の消滅時効の前の高額療養費であれば、過去にさかのぼって支給申請をすることができます。

高額療養費の払い戻しまでに3か月以上かかる

高額療養費は支払った医療費のうち、限度額を超えた分があとから払い戻される制度です。医療費を支払ってから払い戻しを受けるまでには確認に時間が必要なため、3か月以上かかります。

医療費の支払いが非常に高額になった場合、払い戻されるまでの立て替えが負担になることもあります。そのため、あらかじめ申請しておくことで、窓口の支払いを限度額までの支払いにできる制度があります。次にその制度について紹介します。

あらかじめ限度額までの支払いにできる方法とは?

自己負担3割の人が申請できる「限度額適用認定証」

かかった医療費を窓口で支払う自己負担割合は、一般(住民税非課税の低所得者含む)が1割で、現役並み所得者が3割です。

3割負担の現役並み所得者は、所得に応じて3つの区分に分かれており、最も所得が高い区分1以外の区分2・3の人は、入院や同一医療機関での外来の場合、「限度額適用認定証」の交付をあらかじめ受けることにより、窓口での支払いをあらかじめ限度額までとすることができます。

申請手続きは、お住まいの区市町村の後期高齢者医療制度担当窓口で行えます。

住民税非課税の人が申請できる「限度額適用・標準負担額減額認定証」

自己負担割合が1割の人で、世帯全員が住民税非課税の世帯の人は「限度額適用・標準負担額減額認定証」を申請することができます。

医療機関等に「限度額適用・標準負担額減額認定証」を提示すると、その月に支払う医療費が最初から自己負担限度額までとすることができます。あわせて入院時の食事代が減額されます。

「限度額適用・標準負担額減額認定証」の提示がない場合は、いったん窓口で1割負担分の額を支払い、あとから高額療養費が支給されます。

「後期高齢者医療費制度」の 「高額療養費」上限額はいくら?

所得に応じて3種類に区分されている

「後期高齢者医療費制度」における「高額療養費」の「上限額」は所得に応じて3種類に分かれています。

「現役並み所得者(月収28万円以上で窓口負担3割の方)」「一般」「低所得者(住民税非課税の方)」の区分があります。

1か月の負担の上限額は次のとおりです。

<外来のみ(個人ごと)>

◆「一般」:18,000円

◆「低所得者」:8,000円

※「現役並み所得者」の外来のみの上限は平成30年に撤廃されました。

<外来+入院(同じ世帯で複数の人が受けた治療に対する医療費の合算)>

◆「現役並み所得者」
1.年収約1160万円~(課税所得690万円以上):252,600円+(医療費-842,000)×1%

2.年収約770万~約1160万円(課税所得380万円以上):167,400円+(医療費-558,000)×1%

3.年収約370万~約770万円(課税所得145万円以上):80,100円+(医療費-267,000)×1%

※3.の区分の人が100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が30万円かかる場合の計算例
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1% = 87,430円

◆「一般」
年収156万~約370万円 (課税所得145万円未満):44,400円

◆「低所得者」

区分Ⅱ 住民税非課税世帯(Ⅰ以外の方)」:24,600円

区分Ⅰ 住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など):15,000円

なお、過去1年以内に3回以上、上限額に達した月があった場合は、4回目から上限額が下がります。(「住民税非課税」の方については適用はありません)

また、人工透析などの高額な治療を長期間にわたって継続される場合は、高額療養費支給の特例が設けられており、これが適用されると上限額は1万円となります。

まとめ

「後期高齢者医療費制度」は、外来や入院で支払う医療費の自己負担額は一般が1割、現役並みの所得がある人は3割となっています。それぞれの所得区分に応じて支払った自己負担額が、定められた限度額を超えた場合は、その分が「高額療養費」として支給されます。

限度額は所得区分ごとに個人単位の外来と、世帯単位の外来+入院でそれぞれに設定されており、非常にわかりにくい設計となっています。

また、事前に申請すれば窓口での支払いをあらかじめ限度額までにできる制度もありますが、こちらも所得区分に応じて内容が異なっています。

加えて、限度額の改定も重ねられているため、おおまかな制度設計を把握したうえで、最新の詳細についてはお住まいの市区町村の「後期高齢者医療費制度」窓口に確認するのがよいでしょう。