消費税の「仕入税額控除」とは何か?対象と要件・計算方法を解説

消費税は消費者が払う税金ですが、仕入れの段階では事業者が消費税を支払っています。この時に生じる消費税の累積分を解消するのが「仕入税額控除」です。

今回は仕入取引において消費税が累積する仕組みと「仕入税額控除」の意味を解説します。また「仕入れ税額控除」の対象と要件、さらに計算方法を紹介します。

「仕入税額控除」とは?

受け取った消費税をそのまま納付すると払い過ぎになる

「仕入税額控除」は事業者が流通や生産段階で支払う消費税の払い過ぎ(二重課税)を解消するための制度なのですが、そもそもなぜ消費税の払い過ぎが起こるのでしょうか。

「消費税」とは消費者が商品を買った時に支払われる税金です。ところが消費税は商品が生産者から販売店に仕入れられるまでの仕入れの段階で、すでに支払われています。事業者がある事業者から商品を購入するたびに消費税を支払っているのですが、支払われた額面のまま消費税を納税してしまうと消費税の払い過ぎ(二重課税)になってしまいます。なぜなら該当取引前の取引ですでに消費税の一部が支払われているからです。

1000円の商品が流通において消費税が累積される例

B社がA社から1000円の商品を購入

→ B社はA社に代金1000円と消費税100円を支払う。

⇒ A社は消費税100円を納税する。

C社がB社から同商品を1300円で購入

→ C社はB社に代金1300円と消費税130円を支払う。

⇒ C社が消費税130円を納税すると累積分100円も納税することになり二重課税となる。

「仕入税額控除」で課税売上と課税仕入の消費税の差額を納税

前述した業者による消費税の払い過ぎを解消するために「仕入税額控除」が導入されました。「仕入れ税額控除」により、各事業者は課税売上で課せられた消費税と課税仕入で課せられた消費税の差額を納付します。「課税売上」とは税込みで商品を売ることで、「課税仕入」とは税込みで商品を購入したり借り受けたりすることです。

1000円の商品をA社からC社まで流通している間にB社が消費税を納税する段階では消費税が130円ですが、そのうちの100円は累積されています。

この累積分である100円はA社が支払うためB社は支払う必要はないので、B社は消費税額130円から累積分100円を差し引いた30円を納付します。

このように各取引で生じた消費税の累積分を解消し、必要な分だけを納税をするために「仕入税額控除」が取り入れられています。

「仕入税額控除」の時期は課税期間に行う

「仕入税額控除」は行える期間は課税期間です。課税期間とは消費税の確定申告の対象となる期間となり、課税対象となる品目の仕入れを行った事業年度です。

「仕入税額控除」の対象と要件

「仕入税額控除」の対象は商品や原材料などの事業に必要なもの

「仕入税額控除」は、適用されるものと適用されないものがあります。適用対象となるものは事業に必要なものとして購入または借り入れられたもので、例えば棚卸資産として購入された商品や原材料、機械や建物の他にも車両や器具備品、事務用品や新聞図書、さらに消耗品も事業に必要なものとして認められれば対象です。

また事業運営を目的として必要とされる広告費や厚生費、通信費、光熱費なども含まれます。

仕入税額控除の要件は帳簿と請求書等の保存

仕入税額控除の要件は、区分整理に対応した帳簿と区分記載請求書などの保存です。2019年10月に導入された軽減税率制度によって品目ごとに税率が違うことから、帳簿や請求書には税率ごとに区分整理をして税込み対価を記載します。

インボイス制度への移行は2023年10月1日から

2020年8月現在では区分整理に対応した帳簿や請求書が作成される区分記載請求書等保存方式が取られていますが、2023年10月1日からは「インボイス制度」に変更されます。

「インボイス制度」は適格請求書等保存方式とも言われ、売り手が買い手に対して発行する正しい税率や消費税額が記載された請求書(インボイス)が採用されます。その請求書を作成、保存することが仕入税額控除の要件になります。

消費税の仕入税額控除の計算方法

業者が納付すべき正しい消費税額を導き出すための仕入税額控除ですが、全額控除される場合と一部のみが控除される場合があります。そのカギとなるのが課税売上割合です。ここでは課税売上割合と仕入税額控除の計算方法について解説します。

「課税売上割合」とは売上に占める課税売上が占める割合

「課税売上割合」とは売り上げに対して課税売上が占める割合のことで、課税売上割合が95%以上で課税売上高が5億円以下ならば消費税の全額が控除されるのですが、95%未満だと一部しか控除されません。

課税売上割合の計算式

課税売上割合=課税売上高(税抜)÷(課税売上高(税抜)+非課税売上高)

課税売上割合95%以上なら全額控除

課税売上割合が95%以上で課税売上高が5億円以下の場合、課税仕入れにかかる消費税の全額が控除になります。課税売上の規模があまり大きくない個人事業主などではこの方式が適用されることが多いです。

課税売上割合が95%未満なら個別対応方式か一括比例配分方式

課税売上割合が95%未満または課税売上高が5億円を超える場合には、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」が取られます。

  • 「個別対応方式」

「個別対応方式」では、課税仕入れの内容により控除の金額を個別に計算します。

課税商品の仕入れなどの課税売上に対応する仕入れなら消費税が全額控除されますが、手数料など非課税売上に対応する仕入れでは消費税は控除されません。また事業所の賃料や光熱費などの課税売上と非課税売上に共通する仕入れならば、課税売上に区分されるものに対してのみ消費税が控除されます。

  • 「一括比例配分方式」

「一括比例配分方式」は、仕入れ全てに対する消費税の合計金額のうち、課税売上割合に応じた分だけ控除される方式です。

一括比例配分方式の計算式

仕入控除の税額=課税仕入合計額×課税売上割合

「一括比例配分方式」のほうが「個別対応方式」よりも計算が楽なのですが、控除される金額は個別対応方式の方が多いことがよくあることと、一度「一括比例配分方式」を採用すると二年間は同方式を採用しなくてはならないため、どの方式を取るのかを見極める必要があります。

まとめ

「仕入税額控除」とは業者が支払う消費税額が二重課税にならないための制度です。控除税額は課税売上割合と関係するため、事務的な処理としては手間がかかります。しかし消費税の払い過ぎを防げるため、仕入税額控除を正しく理解することが大切でしょう。