美しいものを表す言葉に「奇麗(きれい)」があります。一般的に見かけるのは「綺麗」や「きれい」の方ですが、意味や使い方の上では、どのような違いがあるのでしょうか?
ここでは「奇麗」の意味を中心に、「綺麗」との違いや使い方の例文、類語をわかりやすく紹介します。言葉の意味や使い方をマスターして、物事への繊細な描写をしていきましょう。
「奇麗(きれい)」の6つの意味とは?
「奇麗」の意味「色や形が美しいさま」
「奇麗」とは、色や形が美しく華やかなさまを意味します。モノの色彩や色合いなどの見た目がよく、美しいフォルムや形態を持つさまを表しています。外見や造作が映えて華やかな様子を表現する時に使われます。
- テーブルの上に奇麗な花が飾られている。
- ミュージアムで奇麗な抽象画を見た。
「奇麗」の意味「容姿が整っているさま」
「奇麗」は人の容姿が整っているさまを表しています。顔立ちやヘアースタイルなどを含め、身体の部分が麗しく艶やかな様子、身ぎれいなさまを示す時に使われます。つまり、容姿端麗という意味があります。
- 街で奇麗な女性を見かけた。
- あの人は奇麗な顔立ちをしている。
「奇麗」の意味「声が快活であるさま」
「奇麗」は、音声や歌声などが快活であるさまを意味します。耳に伝わる音や声が快く、心地よい時に使われます。心に染みる歌声、心が安らぐような美しい響きを持つ音声に対して使うことが多いです。
- 奇麗なクラシック音楽が流れている。
- 彼のスペイン語の発音はとても奇麗だ。
「奇麗」の意味「清潔で汚れていないさま」
「奇麗」とは汚れやシミなどがなく、清潔なことを意味します。空気が汚染されていないことや身体に泥や垢がなく清潔なことを表す言葉となります。衛生的にきれいで、気分がスッキリするような状態を指す時に使われることが多いです。
- 山麓は奇麗な空気に包まれている。
- 入室前に、手を奇麗に洗ってください。
「奇麗」の意味「整然とし乱れがないさま」
「奇麗」には「物事が整然として乱れがないさま」をという意味があります。散らかりがなく整っていること、こぎれいにまとまり、統一された雰囲気があることを意味します。
- 書斎はいつも奇麗にしている。
- 皿を奇麗に片づけておいて下さい。
「奇麗」の意味「純潔なさま」
「奇麗」は「純潔なさま」を意味します。「純潔」とは、肉体的な交渉がないことを意味し、主に男女の間柄においてクリーンな関係を表す時に使われます。
- 彼女とは奇麗な関係だ。
- 彼とは結婚まで、奇麗な付き合い方を続けるつもりだ。
「奇麗」と「綺麗」の違いとそれぞれの使い方
「奇麗」と「綺麗」はほぼ同じ意味
辞書を調べてみると、「奇麗」と「綺麗」は同じ項目「奇麗/綺麗」というように掲載されています。そのため、基本的には同じ意味で、漢字の書き方だけが異なる語句であることが理解できます。
「綺麗」の「綺」は常用外漢字
ここで「奇麗」と「綺麗」、それぞれ使用されている漢字ついて見てみます。
「奇麗」の「奇」は「珍しい」「怪しい」という意味の常用漢字、「綺」は「織り方の模様に斜が入っているもの」や「あやの絹」という意味の常用外漢字となります。そして「麗」は「うるわしい」となります。
つまり「奇麗」は「珍しいくらいに美しい」、「綺麗」は「シンプルに美しい」という意味があるということがわかります。同じように「きれい」でも、「きれい」の度合や美しさの質がちょっとだけ異なると解釈できます。
「奇麗」もしくは「きれい」と書くのが通常
前述しましたように、「奇」は常用漢字、「綺」は常用外漢字となることから、新聞やウェブサイト、公文書などでは常用漢字を使うことが推奨されています。そのため、書き方においては、「奇麗」もしくは「きれい」と書くのが正しいということになります。
小説や脚本などは「綺麗」を使ってもOK
「綺麗」は常用外漢字のため、一般的には使われないことが多いです。しかし、小説や漫画、脚本やスクリプトなど、自由に言葉を表現できる環境では、「綺麗」をあえて使うこともあります。
逆に、社会人の方でビジネスメールや資料などを作成する時は「奇麗」か「きれい」を使うようにしましょう。また、役所に提出する書類やフォーマルな場面で使う文書についても、「奇麗」か「きれい」を用いたほうが無難です。
「奇麗」の類語とは?
「美々しい」は華やかで美しい
「美々しい(びびしい)」とは、言葉が示す通り、華やかで美しいという意味があります。人の立ち振る舞いや行動、また見かけや身なりやが立派で凛とした様子を表す時に使う言葉です。
「美々しい」にも清潔で汚れがないという意味を含みますが、それ以上に花々しく鮮やかといった美的な感覚を刺激するようなニュアンスを多く含みます。
- 娘の美々しい着物姿を久しぶりに見た。
- 容姿が美々しいあまり、多くの観客をくぎ付けにした。
「秀麗皎潔」は汚れやくすみがなく美しい
「秀麗皎潔(しゅうれいこうけつ)」とは、汚れやくすみがなく美しいことを意味する四字熟語です。
「秀麗」は美しく秀でていること、「皎潔」は清らかで汚れがないさまを表しています。響きが堅い言葉ですが、美しく気品に満ち溢れ、純潔なさまを表現するときに使うと良いでしょう。
- 秀麗皎潔のごとく、美しい松並木は続いていた。
- ヨーロッパ建築の優美さは、まさに秀麗皎潔といったところである。
「奇麗」を外国語で表現してみよう
英語で「奇麗」は「beautiful」
「奇麗」は英語で「beautiful」を使うのが一般的です。これ以外に「奇麗」を表すフレーズとしては「fantastic」「gorgeous」「wonderful」、また純潔は「clean」、物事が整っていることを表す時は「tidy」を使います。
- You are beautiful.(君は奇麗だ)
- What a wonderful picture.(何と奇麗な絵だろうか)
- He looks fantastic.(彼は身なりが奇麗だ)
- This kitchen is very tidy.(奇麗に整ったキッチン)
韓国語で「奇麗」は「아름답다」
韓国語で奇麗は「아름답다(アルムダプタ)」といいあす。心のありかたや容姿、外見を含め、景観や風景などが美しい時に使われます。また、別の表現では「예뻐요(イェッポヨ)、話言葉では「아름다워(アルムダウォ)」を頻繁に使います。
スペイン語で「奇麗」は「hermoso/hermosa」
スペイン語で「奇麗」は「hermoso(男性に対して)」や「fermosa(女性に対して)」が一般的です。その他、男性に対して「bello」「lindo」、女性に対して「bella」「lindo」を使うこともあります。
まとめ
辞書では「奇麗」と「綺麗」は同じ項目に記載されています。そのため、意味の上ではほぼ同じだと解釈できます。細かいニュアンスの違いを探るなら、「奇麗」は「気味が悪いほど、また珍しいくらいに美しい」、「綺麗」は「純粋に、シンプルに美しい」となります。
「奇麗VS綺麗」は、結果的に引き分けとなりますが、もともとは「綺麗」が使われていた背景があります。
戦後の漢字教育で「常用漢字」という規定が生まれ「奇麗」が使われるようになったため、現在は公文書をふくめ、新聞やウェブサイトでは「奇麗」もしくは「きれい」が使われています。