「うるさい」という言葉はよく使われますが、漢字で書くと「煩い」「五月蠅い」などがあるのをご存知ですか。これらの漢字にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は「うるさい」の意味と語源のほかに、「うるさい」の漢字表記である「煩い」や「五月蠅い」の由来を解説。また類語や英語表現の例文も紹介します。
「うるさい」の意味とは?
「うるさい」の意味①「音量が大きくて腹立たしい」
「うるさい」とは音量が大きくて騒々しく耳障りであり腹立たしいという意味です。「うるさい」の意味のなかでも使われることの多いです。
- 車のクラクションがうるさい。
- あなたたち、うるさいから静かにして!
「うるさい」の意味②「面倒に感じられる」
「うるさい」には音量に関わる意味以外にネガティブに捉えられる意味があります。扱いに手間がかかるため面倒に感じられるやつきまとわれてしつこいために邪魔でわずらわしいなどの意味です。よく気が回る相手で気が許せないという意味もあります。
- 小うるさい小姑。
- ハエがうるさく飛び回る。
「うるさい」の意味③「大変優れている」
「うるさい」にはポジティブに捉えられる意味もあり、それは行き届いているや大変優れている、芸事に至っては技芸が優れているといった意味です。
- 彼女は服装にうるさい。
- 味にうるさい。
「うるさい」の語源と成り立ち
「嫌になるほど」という意味合いが両極端の意味を生む
「うるさい」にネガティブとポジティブの両極端とも思える意味がある理由には、その語源にあります。「うるさい」は本来、同じことが何度も繰り返されることに嫌気がさして心が閉ざされるような状態を指していました。この状態が転じると、相手が優れていることを認めることになり嫌になって反発する気持ちから「うるさい」のネガティブな意味が生まれました。一方、相手の状態を嫌になるほど素晴らしいと受け止めることで「うるさい」にポジティブな意味が生まれました。
つまり「うるさい」の本来の意味に含まれていた嫌気がさすが別々の方向へと発展して、ネガティブな意味とポジティブな意味の両方を持つ言葉になりました。
「うるさい」は「心が狭い」という意味の語で成立
「うるさい」は「心が狭い」という意味の語によって成り立っています。「うるさい」の「うる」は心を意味した「うら」の母音が変わった母音交替が起こって「うり」となり、「さい」は狭いを意味する「さし(狭し)」という二つのことばが結び付いています。
「うるさい」の漢字「煩い」と「五月蠅い」とは?
「煩い」は「表外読み」の漢字
「うるさい」を書き表す漢字のひとつに「煩い」がありますが、「煩い」は「煩」の表外読みです。「煩」の訓読みは「わずら・う(煩う)」であり、「うるさい」とは読みません。ところが漢字には常用漢字とは違う読み方をすることもあり、それを「表外読み」と言います。
「煩」を表外読みは「うるさ・い(煩い)」です。ただし表外読みは常用外となるので通例ではひらがなで表記されるため、「煩い」も「うるさい」と表記されるのが一般的です。
「五月蠅い」は「五月のハエ」の当て字
五月はハエが飛び回ってうるさいことから、「うるさい」に「五月蠅い」という字が当てられました。「五月蝿い」とも書き表しますが、「蠅」から転じた「蝿」を用いています。
「蠅」から「蝿」へと転じたように、標準的な字から転じた字を「異体文字」や「書写体」と呼ばれます。そのため「うるさい」の当て字には「五月蠅い」と「五月蝿い」の両方が使われます。
「うるさい」の類語
「やかましい」は不快感が強い時に使われる
「やかましい」は声や物音などが騒々しくうるさいという意味のほかにも、人の話題にのぼり騒がしいや面倒くさいなどの意味がある言葉です。
「うるさい」と意味の上では類似することが多いのですが、「やかましい」は「うるさい」よりも不快な時に使われます。
- 「騒音がやかましい」
- 「噂話がやかましくて仕事もやる気になれない」
「煩わしい」は「うんざりするや面倒」という意味
「煩わしい(わずらわしい)」とは心を悩ますことがありうんざりする気持ちや複雑で面倒なこと、さらに体の具合が悪いなどの意味があります。
「煩わしい」のうんざりする気持ちという意味合いにおいて「うるさい」の類語ですが、「煩わしい」には「うるさい」のように大きな音が騒々しくて耳障りであるといった意味はありません。
- 「人間関係が煩わしくて仕事に集中できない」
- 「手続きが煩わしいので、役所に行くのが面倒だ」
「面倒臭い」は「非常にわずらわしい」という意味
「面倒臭い」とは非常にわずらわしいや大変厄介という意味で「うるさい」の類義語ですが、「面倒臭い」は煩わしさの度合いが強い場合に用いられる言葉です。
「これから新しい仕事を始めるのは面倒臭いのでやめておくよ」
「うるさい」の英語表現
「音がうるさい」なら英語で「noisy」
「うるさい」の意味で音量がうるさいのなら「noisy」が相応しいでしょう。騒音を意味する名詞「noise」の形容詞形です。
“They are noisy.”
「彼女たちの話し声がうるさい」
騒々しい人に静かにしてもらうために「うるさい」と言うときには “You are noisy.”(訳:あなたはうるさい)と言い表せますが、それでは静かにしてほしいという気持ちは相手に伝わりにくいです。英語表現では自分の気持ちを表現することで相手に伝わりますから、静かにしてほしいという気持ちを翻訳して「Be quiet!」(訳:静かにして)と言った方がいいでしょう。
「優れている」の意味なら「particular」
服装や味などに特に優れていると意味で使われる「うるさい」には、形容詞「particular」(意味:特別の、格別の)を使います。「うるさい」を直訳せず意味から訳すようにするといいでしょう。
“She is particular about the clothes/foods.”
「彼女は服装/味にうるさい」
まとめ
「うるさい」とは「音が大きい」という意味のほかにも、「面倒に感じられる」や「わずらわしい」などのネガティブな意味だけでなく「優れている」といったポジティブな意味もある言葉です。そのためそれぞれの意味を理解して、状況に応じた使い分けが大切です。