「地獄絵図」とはどんな絵?意味や日本に伝わった由来・類語を解説

「地獄絵図(じごくえず)」と聞いて、どのような光景を思い浮かべますか?少なくとも幸福の広がる美しい世界ではないと思いますが、「地獄絵図」とは具体的にどのような状況を表しているのか、よくわからないという人もいるでしょう。ここでは「地獄絵図」の意味をはじめ、現代における使い方や例文、類語や英語を解説します。

「地獄絵図」とは?

「地獄絵図」の意味は”極めて惨い状況のこと”

「地獄絵図」の意味は、“極めて惨い状況のこと”です。そもそも「地獄絵図」は、地獄で死者がもがき苦しむ様子を表し、状況は極めて悲惨、見る意絶えないような凄まじいあり様を示す言葉です。

「地獄絵図」の「地獄」とは仏教の世界において、生前に悪事を働いた者が死後に身をやつす場所です。「地獄に落ちる」というように、悪いことをした人が次の世界で「苦しみ」という裁きを受ける場所が「地獄」となります。その状況やあり様を表す言葉が「地獄絵図」です。

「地獄絵図」の由来は”インドの六道輪廻”

「地獄絵図」とは、もともとインドの”六道輪廻(天人界・人間界・修羅界・畜生界・餓鬼界・地獄界)”を描写したものとして日本に伝わったと言われています。つまり、遠い昔、お釈迦様の時代にインドから伝来した仏教と一緒に日本にやってきたのが「地獄絵図」です。

「地獄絵図」はなぜ人々に広まったのか?

「地獄絵図」は地獄界を表したものですが、人々が悪いことをしないようにという教えが軸となります。生前に悪事をすれば死後の世界でもがき苦しむ、身動きすらとれない泥沼の世界がある、という教えが効力を持っていたことから広がったとされています。

「地獄絵図」は罪を犯した人が落ちる場所として伝えられている、仏教に基づく教えの一つですが、現代ではその教えを信じる人は少なくなったと言われています。しかし「地獄絵図」は、現代では心のあり方を指導する「良き教訓」として残っています。

「地獄絵図」の使い方と例文とは?

悲惨な状況を比喩的に表す時に使われる

「地獄絵図」は日常でもビジネスシーンでも、ごく一般的に使われる四字熟語です。主に「地獄絵図のよう・まるで地獄絵図みたい」というように、状況の惨さや凄まじさを比喩的に表現する時に使われます。

たとえば、戦争が起こっている場所や、災害の後の状況というものは、言葉では表せないほど無残で痛ましいことが多いです。そのような場合、純粋に「悲惨だった」と表現するより「地獄絵図のようだった」としたほうが、相手はイメージが湧きやすいでしょう。下記で似たような意味を持つ例文を比較してみます。

比較例文
  • 戦地の写真を見たが、とても悲惨だった。
  • 戦地の写真を見たが、まるで地獄絵図のようだった。
  • 台風の被害状況は、悲惨極まりない。
  • 台風の被害状況は、まるで地獄絵図のようである。

この4つの例文を比べてみても、「地獄絵図」という表現が、相手にいかに強いインパクトを与えるかが理解できるでしょう。

「地獄絵図」を使った例文

「地獄絵図」を使った例文をご紹介しましょう。

  • あらかじめ口裏を合わせておいた方がいい。後で地獄絵図をみないようにね。
  • 会議室で部長と課長とが怒鳴り合いの喧嘩をしている。まさに地獄絵図さながらである。
  • 地獄絵図とまでは言わないが、日々、サービスへのクレームは膨らむ一方だ。
  • のちに訴訟問題に発展しては困る。ぜひとも、最悪の地獄絵図だけは避けたい。

「地獄絵図」の類語とは?

「地獄絵図」の類語は”おぞましい”や”惨烈”など

「地獄絵図」と言い換えができる類語には、悲惨さや惨さを意味する“おぞましい・惨烈(さんれつ)”です。また「この世のものとは思えない・救いのない・酸鼻(さんび)」などが挙げられます。

どの類語も、状況や現場の様子を見ていられないほど痛ましいというニュアンスが非常に強く、事故現場やショッキングな結末を伝える時に用いられます。状況を見るに絶えないほど心が痛み、むごたらしいあり様を表す時に、文脈にしっくりする一つを選んで言い換えると良いでしょう。

「地獄絵図」の四字熟語での類語は”阿鼻叫喚”

「阿鼻叫喚(あびきょうかん)」とは、人がもがき苦しみ、泣き叫ぶようなあり様を表す表現です。「地獄絵図」と同様に、状況がむごたらしく、悲惨極まりない時に使われます。

「阿鼻叫喚」はもともと、極めて痛々しい辛苦の中で大声で泣きわめきながら、救いの手を求める様子を表し、死者が責め苦に絶えかねて泣き叫ぶ様子を示す言葉です。ちなみに「阿鼻叫喚」の「阿鼻」は究極の罪を犯した者が、八熱地獄の無間地獄で身を焼かれること、「叫喚」とは泣きわめくことを意味します。

例文
  • 災害に襲われ、阿鼻叫喚の巷と化した。
  • 阿鼻叫喚の様子を伝え、被害の惨さを伝えた。

「地獄絵図」の英語表現とは?

「地獄絵図」は英語で”a picture of hell”

「地獄絵図」を英語で表す時は、シンプルに“a picture of hell”を使いましょう。「まるで地獄絵図のよう」というように比喩的に使う時は”just like a picture of hell”というようにします。また、被害や状況の凄まじさを表す言葉としては、大災害や大惨事、非常な不幸を意味する「catastrophe(キャタストロフィ)」を使うこともできます。

「地獄絵図」を使った英語例文

「地獄絵図」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • It was just like a picture of hell when I saw that town after it was hit by the massive earthquake.
    大地震の後の街は、まるで地獄絵図のようだった。
  • The relationship with my wife has dropped into the picture of hell because she found out I was cheating.
    浮気がバレて、妻との関係が地獄絵図と化した。

まとめ

「地獄絵図」とは、”極めて無残や悲惨な状況や地獄変相”を表す言葉です。インドから仏教の伝来ともにやてきた六道輪廻の一つ「地獄界」が語源で、生前に悪事や罪を働いたものが落ちる地獄のあり様を表現したものとなります。

「地獄絵図」は、昔は犯罪や悪いことをすると地獄に落ちるという教訓が説得力を持っていましたが、現代では「悪いことをしないように自分を戒める」という教えや心のあり方として残っています。

「まるで地獄絵図のようだった」「地獄絵図さながらの凄まじさ」というように、現場や状況の悲惨さを比喩的に表す時に使いましょう。