「イギリスの正式名称」とは?英語表記と由来・イギリスと呼ぶ理由

「イギリス」と聞くと首都がロンドンの国としてすぐにイメージできますが、この「イギリス」という表現は日本人だけが使っている言い方だということをご存知でしょうか。

この記事では、イギリスの正式名称と英語表記の他に、なぜ日本人はイギリスのことを「イギリス」と呼ぶようになったのかを解説します。

※この記事の担当:Light1(海外在住20年。イギリス在住経験あり。イギリスのビネガー味のフライドポテトが好き)

イギリスの正式名称と英語表記とは?

イギリスの正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」

イギリスの正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」です。これは正式名称の日本語訳になります。この正式名称から分かるように、イギリスはグレートブリテン島とアイルランド島の北東部に加えて、その周辺にある大小の島々から成り立っています。

グレートブリテン島には島の約2/3の面積を有する「イングランド」、グレートブリテン島の南西部に位置する「ウェールズ」と島北部を占める「スコットランド」によって構成されています。

英語表記は「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」

イギリスの正式名称は英語表記で「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」です。

グレートブリテン島の王国を意味する「United Kingdom of Great Britain」とアイルランド王国を意味する「Northern Ireland」が接続助詞である「and」で結ばれています。

イギリスの正式名称が長い理由とは?

正式名称の長さはイギリスの成立の仕方と関係

イギリスは、1801年にグレートブリテン王国とアイルランド王国が連合して「グレートブリテンおよびアイルランド連合王国」として成立しました。しかし1922年に現在のアイルランド共和国が独立したため、残ったアイルランドの北部とグレートブリテン王国が一つの国家となり、正式名称が「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」と改名されて、現在に至ります。

イギリスはカントリーの連合国

イギリスを構成するイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドはそれぞれが一つのカントリー(国)として理解されています。北アイルランドについては、カントリーではなく「プロヴィンス」と表現されることもあります。

各カントリーでは国境もあり、それぞれ国旗もあります。イングランドを除く各国には権限を委譲された政権があり、議会も設置されています。イングランドは独自の議会がないため、イギリス議会によって政局が運営されています。法律に関しては、スコットランドはスコットランド法、北アイルランドは北アイルランド法があります。イングランドとウェールズは英国法という法律の下に統治されています。

しかしイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドは主権・領土・国民の三大要素からなる主権国家としては成立していません。そのためを意味する「カントリー(country)」や、時には地域を意味する「レギオン(region)」といった表現が使われています。

国際法上において、主権国家としては4つのカントリーをまとめた「イギリス」が認められています。

スコットランドでは独立を望む声も多い

連合国として成立しているイギリスですが、特にスコットランドからは独立を望む声が聞かれます。スコットランドは2014年には独立住民投票が実施されて否決されたものの44.7%もの住民が独立を支持しています。

スコットランドはイングランドとは異なる文化や言語も保持していたことと、イギリス政府がイングランド政府という印象が拭いきれないため、連合体制よりもイギリスから独立したいと考える人が多いようです。

どうして「イギリス」を「イギリス」と呼ぶのか?

ポルトガル語の「イングレス」がなまって「イギリス」となった

日本人がイギリスの正式名称を使わずに「イギリス」と呼ぶようになった理由は、日本人がイギリスの正式名称を知る前に、ポルトガル語でイングランドを意味する「イングレス(Inglez)」がなまった「イギリス」を使っていたからだと言われています。

この「イングレス」という言葉は、遡ること戦国時代にポルトガル人が日本に訪れたときに「イングレス」を使っていました。「イングレス」がイングランドという意味だったにもかかわらず、日本人はグレートブリテン及びアイルランド連合王国を指す言葉として使ったことに端を発しています。

オランダ語源の「エゲレス」も江戸時代には使われていた

また江戸時代にはオランダ語の「エンゲルシュ(Engelsch)」がなまった「エゲレス」という言葉も使われていました。

幕末以降には、「英吉利」と漢字で表記して「えいぎりす」と呼ばれていたこともあります。

イギリス人は「イギリス」をどう呼ぶのか?

英国人は「ブリテン」「United Kingdom」「UK」と呼ぶ

イギリス人はイギリスのことを「ブリテン」や「UK」と呼ぶことが多いようです。「ブリテン(Britain)」は国名の正式名称の一部を使った表現です。これでは北アイルランドが含まれていないと思われるかもしれませんが、日常会話で「ブリテン」と使われた場合には正式名称の略語だと解釈されるので、北アイルランドが抜かされているとは思われないようです。

ほかにも正式名称の最初の文字だけを使って「United Kingdom」や、正式名称の一部である「United Kingdom」の頭文字を取り「ユーケー(UK)」という呼び方もあります。

まとめ

「イギリス」は日本人が「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」のことを呼ぶときに使う呼称です。そのため「イギリス」を英訳して「England」とイギリス人に言っても「イギリス」のことを指しているとは理解されないでしょう。外国人にイギリスのことを話すときは、正式名称でなければ「UK」や「ブリテン」などの表現を使いましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。