「真善美」の意味と使い方とは?プラトンや仏教との関係も解説

人生の究極的価値として「真善美」が語られることがあります。真善美を追求する、真善美を求める、などと使われる「真善美」とはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか?

この記事では、「真善美」の意味や由来となったギリシャ哲学を解説します。あわせて真善美の使い方や仏教との関係についても触れています。

「真善美」とは?

「真善美」の意味は”理想を具現した最高の状態”

「真善美(しんぜんび)」の意味は、“人間が生きる上での理想の状態を3つの言葉で具現化した表現”です。人間としての最高の状態が「真と善と美」の樹立であるとするものです。

「真」とは、うそ・偽りでないこと、真実、誠意を意味します。「善」とはよいこと、道徳的に正しいことの意味を持ちます。「美」とは、美しいという意味とともによいこと、価値のあること、また調和の状態を表す意味があります。

このような意味を持つ「真善美」は、哲学や宗教の教えなどにおいてしばしば言及されます。

学問の目的でもある「真善美」

「真善美」は学問の目的としての普遍的な価値を意味する言葉でもあります。「認識上の真・倫理上の善・審美上の美」と整理され、それぞれ「論理学・倫理学・美学」における主題とされます。

さらに「真善美」は、相互に関連しあう統一的な価値として、学問全体の究極的な目的として追究される概念でもあります。

「真善美」の使い方と例文とは?

生きる上での究極の理想を「真善美」と表現する

「真善美」は生きる上での究極の理想の状態を表現する言葉として象徴的に使われます。また、真(偽りのないこと)、善(正しいこと)、美(調和していること)のそれぞれの価値が等しく調和する状態が人として最高の状態であるという意味を含んで使われます。

例文
  • わが校の教育の理念は真善美の調和である
  • 彼は生涯において究極の理想としての真善美を追い求めた

高い美意識を示す言葉として「真善美」を使う

人としての最高の状態という哲学的な意味を持つ「真善美」の言葉は、ビジネスにおける美意識の哲学や、理想的な人物像のあり方としても引用されることがあります。

例文
  • 優れたビジネスパーソンには真善美の美意識が備わっている
  • リーダーシップに大切な哲学は真善美の調和である
  • ビジネスにおいて正しい手法を決断し、実行するには真善美の力を備えることが大切だ

「真善美」の語源とは?

「プラトン」のイデア論が出発点

人間の普遍的な理想のあり方、あるいは普遍的な価値を示す概念として「真・善・美」の3つの概念が用いられるようになった原点は、プラトンのイデア論にあるといわれています。

プラトンは古代ギリシャの哲学者でソクラテスの弟子として多くの著書を著し、その思想は西洋哲学の源流となりました。プラトンの思想の中心に「イデア論」があります。イデアには「かたち・形相」という意味がありますが、精神が捉える非物質のイデアこそが永遠の真理であるとするものです。

そしてイデアには「善のイデア・美のイデア」等の種類があります。善と美は融合して道徳的完成へと高まり、「美にして善なるもの」との言葉が生まれました。「美にして善なるもの」の概念は、「真善美」の三者が並置して語られる哲学の概念へと受け継がれてゆきました。

「カント」の哲学が”真善美”の語源

近世の哲学体系に「真・善・美」という3つの概念が区分されたのは、ドイツの哲学者カントの影響によるものと考えられています。

カントの三批判書である『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』はそれぞれ「真・善・美」に対応しており、哲学や学問体系の区分として近世以後に定着することとなりました。

仏教における「真善美」とは?

仏教では「真善美」を「真我」と表現する

「真善美」は西欧哲学において、人間が生きる上での理想の状態を表現する普遍的な真実の概念です。インドを出発点とする仏教における普遍的な真理の概念は「無我」であり、その意味で「真善美」に対応する概念であるといえます。

仏教においてはあらゆる事象を根拠づける普遍的な本質は存在しないとされ、全てのものには実在としての我はないとされます。その教義から、仏教における人間の最高の状態は我の無い状態、すなわち「無我」であるとされるのです。

まとめ

「真善美」とは、哲学においては”認識上の真・倫理上の善・審美上の美”と整理されます。一般的な概念としては、嘘・偽りがなく、道徳的・倫理的に正しく、美と調和する状態をいい、人間が生きる上での最高の状態を表す言葉として比喩的に用いられます。

「真善美」は究極の価値であることから、人生の目標や理想として掲げる人も多く、著名人の中ではユニクロ創業者である柳井正氏が生き方のモットーとしてこの言葉をしばしば紹介しています。

なお、「真善美」は英語で”goodness, truth and beauty”と表現され、音楽や芸術作品のタイトルなどに象徴的に用いられています。