「労働三法」は第二次世界大戦後に制定された3つの労働法のことで、数ある労働法の中でも基礎となるものです。この記事では、労働者として知っておくべき労働法の入口として、労働三法とは何かを解説します。あわせて「労働三権」と「労働組合」についても説明しています。
「労働三法」とは?
「労働三法」とは”労働基準法・労働組合法・労働関係調整法”の総称
「労働三法」とは、労働法の根幹となる事項を定めた”労働基準法・労働組合法・労働関係調整法”の三つの法律の総称です。
「労働基準法」は労働条件の最低基準を定めた法律であり、「労働組合法」は労働者が労働組合をつくり、雇用者と労働条件などを交渉することを保障した法律です。そして「労働関係調整法」は、労働者と雇用者の争いを解決する手続きを定めた法律となります。
これらの法律は第二次世界大戦後に制定された労働者を守るための法律で、現在まで労働法の根幹として機能しています。数ある労働法の基本となる法律が労働三法です。
「労働法」とは労働者を守る法律の総称
「労働法」とは、そのような名前の法律があるのではなく、働くことに関して労働者を守るための法律の総称です。
労働三法をはじめ、労働者を守る法律は他にも男女雇用機会均等法、最低賃金法、育児・介護休業法、労働契約法などたくさんあります。
なお、労働法における「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金や給料による収入によって生活する者のことをいいます。つまり、正規・非正規、パートタイムなどの雇用形態は問いません。
「労働三法」それぞれの法律の内容とは?
労働条件の最低基準を定めた「労働基準法」
「労働基準法(略して労基法とも呼ばれる)」は、日本国内における労働者を保護するために、労働条件の最低基準を定めた法律で、労働契約関係についての基本を規定しています。具体的には、賃金の支払い方法や労働時間、休日などを定めています。
対象となる労働者は正社員だけでなく、パートやアルバイト等のいわゆる非正規と呼ばれる従業員も含まれ、事業に従事するすべての労働者です。
労働者と雇い主が労働契約を結ぶ際は、労働基準法にのっとった条件で契約を結ばなければならず、万が一労基法の基準を下回る契約に合意したとしても、法律上無効となります。また、労働基準法は罰則が付く定めもあり、労働基準法に違反した場合は刑事罰が科せられる場合もあります。
労働組合を組織し団結することを保障する「労働組合法」
労働者が労働組合を組織し、団結することを保障するのが「労働組合法」です。労働者が使用者と対等の立場で交渉することを促進することにより、労働者の地位を向上させることなどを目的としています。
なお、労働組合とは、労働者が、労働条件の維持や改善を目的として自主的に組織する団体のことです。労働者が一人で使用者や会社を相手に自分の権利を守ろうと要求することは困難ですが、集団を作り団体交渉を行うことで会社と対等な関係を作ることができます。
また、労働組合と使用者(その団体)との間で結ぶ取り決めを「労働協約」と呼びます。
労働争議の予防と解決のための手続きを定めた「労働関係調整法」
「労働関係調整法」は、労働者と雇う側での労働争議を予防し、解決するための手続きを定めた法律です。「労働組合法」と関連しながら労働関係の公正な調整を図るものです。
「労働三法」の目的と「労働三権」とは?
「労働三法」の目的は憲法28条「労働基本権」の具現化
「労働三法」は、憲法28条の「労働基本権」の理念を具現化する法律であり、日本の労使関係が対等であることを規定しています。
「労働基本権」は第二次世界大戦後に国際的に定着した労働者の権利です。日本においても戦後の労使関係を対等なものであるとする基礎として憲法に保障されています。
労働基本権(憲法28条)
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
「労働三権」とは”労働基本権”で認める労働者の3つの権利
憲法28条の「労働基本権」では、労働者の3つの権利である”団結権・団体交渉権・団体行動権”を保障しており、これらを「労働三権」と呼びます。
具体的には次のような内容が定められています。
「労働三権」と「労働三法」の違い
「労働三権」は労働者が団結、団体交渉、団体行動を行うことの3つの権利のことで、「労働三法」は労働三権を含む労働者の権利の根幹を定めた3つの法律のことです。労働三法の中でも「労働組合法」が労働三権を具体的に保障しています。
「労働三権」と「労働三法」を混同することがないよう、それぞれ確認しておきましょう。
「労働組合」の基礎知識
労働者であれば誰もが「労働組合」をつくる権利がある
先に説明したように、憲法で保障されている労働三権の「団結権」により、労働者であれば誰もが労働組合をつくることができます。正社員や契約社員、あるいはパートといった雇用形態に関わらず、働いて給料を得て生活する人全てに労働組合をつくる権利があります。
労働組合は2人以上の労働者が自主的に団結し、組合規約に必要な取り決め事項を定めることにより、結成することができます。
「労働組合」は労働条件の改善などの交渉が保障されている
労働組合を組織するメリットは、個人では交渉することが難しい労働条件の改善や維持などの交渉ができる点です。前に説明したように、労働三法や労働三権により、労働組合の団体交渉を会社側は拒否することができません。
個人対会社では対等な関係を結ぶことは難しいですが、法によって保障された労働組合として行動することにより、有利な交渉を行える可能性が高まるのです。
ただし、労働組合に加入することにより、労働時間以外に活動のための時間が必要となることがデメリットであるといえます。
まとめ
働き方の多様化がますます加速する中、労働者としての権利を個人で守る姿勢が必要な時代となってきています。法律や憲法で保障された労働者としての権利を確認しておくことは重要です。この記事で紹介した労働法の基礎となる「労働三法」をはじめとして、最低賃金法や労働契約法など、他の労働法に関してもその基本事項をおさえておきたいものです。
労働者が労働条件の改善などを図ることを目的として団体(労働組合)を結成し、運営する権利
労働者が使用者や団体と労働条件などについて団体交渉を行う権利
労働者が要求を実現するために団体で行動する権利
争議権(一定範囲での争議行為の権利、いわゆるストライキ権)と組合活動権(集会や演説など争議行為および団体交渉以外の団結体の行動を保障する権利)