イギリスに行ったら中華やエスニック料理を食べたほうがいいと皮肉られるほどまずいと言われていたイギリス料理。しかし90年代頃に健康ブームが始まり、イギリス人の食への意識が変わり始めてからはイギリス料理も変わってきました。
今回は、有名なイギリス料理や伝統料理のほかに、人気の料理人などを紹介します。
※この記事の担当:Light1(海外在住20年。イギリス在住経験あり。イギリスのビネガー味のフライドポテトが好き)
イギリス料理で有名なのは?
伝統的な朝食は「イングリッシュ・ブレックファースト」
イギリス料理で有名なのは、「イングリッシュ・ブレックファースト」です。伝統的なイギリスの朝食「イングリッシュ・ブレックファースト」はボリュームがたっぷりです。厚切りベーコンに目玉焼き、焼きソーセージにベイクドビーンズ、焼きトマトなどがワンプレートに乗ってきます。
「イングリッシュ・ブレックファースト」はイギリス人の朝食として有名ですが、全てのイギリス人が毎朝「イングリッシュ・ブレックファースト」を食べているわけではないようです。私の周りでは「イングリッシュ・ブレックファースト」を食べている人は皆無で、朝食にはバターやマーマレードを塗ったトースト、またはコーンフレークなどで軽く済ませている人がほとんどです。
「サンデーロースト」は日曜日にパブで食べたい
のんびり起きた日曜日の朝には「サンデーロースト」はいかがですか。ローストした肉にジャガイモやヨークシャープディングと呼ばれるパイが添えられて、グレイビーソースと一緒にいただきます。レストランでも食べられますが、昼間のパブでまったりとしながらサンデーローストを食べるのがおすすめです。
他にもパブ料理として「バンガーズ・アンド・マッシュ」も有名です。焼きソーセージにマッシュドポテトとグリーンピースを付け合わせて、その上からグレイビーソースがたっぷりとかけられています。
「フィッシュ・アンド・チップス」はモルトビネガーを試したい
「フィッシュ・アンド・チップス」とは白身魚のフライとフライドポテトという揚げ物を組み合わせたイギリスの伝統料理です。レストランで食べるか、またはテイクアウトフードとしても親しまれています。
味付けは塩もありますが、モルトビネガーはイギリスらしいチョイス。食べ慣れてくるとさっぱりとしておいしいです。
イギリス人が大好き「ピクニック・ランチ」
初夏で日が長くなってくる頃、ハンバーと呼ばれるバスケットを下げてピクニックに行く姿がよく見られます。ピクニックはビクトリア時代から続くイギリス文化で、今でも多くのイギリス人はピクニックが大好きです。
ピクニックにはお店で買ったサンドウィッチとポテトチップで済ましてしまうこともできますが、伝統的なピクニックでは「ティーサンドイッチ(Tea sandwich)」と呼ばれる小さなサンドイッチに、半熟卵が入ったハンバーグ「スコッチエッグ」やソーセージをパイ皮で焼いた「ソーセージ・ロール」、ポークパイやスコーン、タルトなどを持っていきます。
伝統的なイギリス料理とは?
「アフタヌーンティー」は紅茶付きの軽い食事
1840年初めからハイソサエティの人々の間で続いている「アフタヌーンティー」は、紅茶と一緒に軽く食事をする習慣です。夕食が8時ごろと遅いため、小腹を満たすために小ぶりのサンドウィッチや濃厚なクロテッドクリームとジャムを付けたスコーン、スイーツなどをいただきます。
3段のティースタンドにまるで装飾品のように並べたケーキやサンドウィッチが魅力的で、高級ホテルやカフェでアフタヌーンティーを楽しめます。
イースターには「ホットクロスバンズ」と「シムネルケーキ」でお祝い
卵型のチョコレートや茹で卵はイースターをお祝いする地域では定番ですが、イギリスならではのイースター料理は「ホットクロスバンズ」と「シムネルケーキ」でしょう。
「ホットクロスバンズ」はパンの表面に刻まれた十字が印象的なパンで、グッド・フライデーに食べるのが伝統です。シナモンなどが効いてスパイシーでありながら、ドライフルーツも入って甘みもあるパンです。
「シムネルケーキ」はマジパンを挟み込んだケーキで、飾りつけに同じくマジパンで作った11個のボールを使いキリストの弟子として知られる11人の使徒を表しています。
クリスマスには「七面鳥」と「ローストポテト」
クリスマスの料理と言えば、数時間かけてオーブンで焼いた「七面鳥の丸焼き」とパセリやタイムなどのハーブを効かせた「ローストポテト」、ソースは肉汁を煮詰めた「グレイビーソース」が定番です。また「ブリュッセル・スプラウツ」と呼ばれる芽キャベツのローストもクリスマスを思い起こさせるメニューのひとつです。
定番デザートは「クリスマスプディング」と呼ばれるケーキです。ドライフルーツがぎっしりと詰まったケーキで、仕上げにテーブル上でブランデーを注いで火をつけるというのがクリスマスディナーのクライマックスになります。
イギリス料理はまずいって本当?
イギリス料理は「まずい」と言われてきた
朝食を例外として、イギリス料理はまずいと言われてきました。その理由は、味付けが塩かグレイビーソースのどちらかと言われるほど単純なことです。また、イギリス料理を代表すると言われるウナギのゼリー寄せなどは味もさることながら、イギリス料理全体で野菜も少なく彩に欠けることもあるようです。
また食卓でもレンジでチンした料理が並ぶことも少なくなく、イギリス人の食に対する情熱は薄い傾向にあるようです。
美味しいイギリス料理へと導いた料理人たち
まずいと言われ続けたイギリス料理をおいしい料理だと認識を変えてくれたのは、テレビや新聞、雑誌などを通じて料理のおいしさを伝えてきた料理人たちが大きく貢献しました。
特に影響を与えた料理人の筆頭として挙げられるのは、ジェイミー・オリヴァー氏です。1998年にBBCで放送された料理番組『裸のシェフ(原題:the naked chef)』で人気に火がつき、彼の飾らないおしゃべりとお料理は健康的で美味しい料理は難しくないということを教えてくれました。またオリヴァー氏は子供たちに健康的な食事を提供する活動にも積極的で、2030年までに子供の肥満率を下げるプロジェクトも進行中です。
他にも人気のあるイギリス人シェフがいますので、その一部を紹介します。
- ゴードン・ラムジィ:ミシュランの3つ星を獲得するレストランのシェフで、スコットランド人です。サッカー選手からシェフへと転向して、気性の荒い性格が注目され数々のテレビ番組にも出演しています。
- メアリー・ベリー:料理研究家、またコメンテーターとしても活躍するメアリー・ベリーは1935年生まれ。特にスイーツとオーブン料理の専門家として知られていて、75冊以上の料理本を出版しています。
- ナイジェル・スレーター:フードライターとして人気で、イギリス政府が年に2回に発表する勲章授与で、2020年の「新年の叙勲(New Year Honours List)」では大英帝国四等勲爵士(オフィサー)に選ばれました。
- ナディア・フセイン:実直な人柄で人々の関心を集めて、人気TV番組『The Great British Bake Off』の第6シーズンで優勝したナディア・フセインは、現在テレビシェフやコラムニストとして活躍中。2020年の新年の叙勲(New Year Honours List)では、大英帝国五等勲爵士(メンバー)にも選ばれました。
まとめ
イギリス料理はまずいと言われ続けていましたが、伝統的なイギリス料理は美味しいものも多いですし、またテレビの料理番組等の影響もあり食卓の料理も美味しくなってきました。東京などの都市部やその周辺ではイギリス料理を食べられるお店もありますので、一度味わってみてはいかがでしょうか。