「猟奇的」は意味が誤解されやすい言葉です。凶悪事件やスプラッター映画の説明に使われることから「残虐な」という意味だと思っている人もいるようです。また、過去に流行した映画の影響で誉め言葉だと思う人もいるかもしれません。「猟奇的」の本来の意味・使い方や類語「狂気的」との違いを確認しましょう。
「猟奇的」の意味と語源とは?
「猟奇的」の意味は”異常なものを求める様子”
「猟奇的(りょうきてき)」の意味は、“異常なものを探し求める様子や、そういった気持ちを満足させる様子”です。また「残忍な欲求を満たす・スリルを求める」という意味だとする辞書もあります。
「猟奇」とは”異常なものに関心を持ち、探し求める”という意味です。これに「そのような性質を持った・そのような様子の」という意味の”的”を付けた言葉が「猟奇的」です。
「猟奇的」は”残虐なもの”だけを表現する言葉ではない
「猟奇的」とは、“異常なものを求める様子”という意味です。この「異常」には、さまざまなものが含まれます。よくイメージされるのは「残虐なもの」ですが、それ以外にも「不思議なもの・不気味なもの・理解できないもの」も表現できます。
「猟奇」の語源は”珍しいものを狩猟すること”
「猟奇的」の「猟奇」の語源ははっきりしていませんが「食べられるか分からないぐらい珍しいものを狩猟すること」だという説があります。狩りの努力が無駄になってしまうかもしれないのに、わざわざ珍しいものを探すことから「異常なものを探し求める」という意味になったと言われています。転じて「異常な行動」の表現にも使われるようになったようです。
「猟奇的」の使い方と例文とは?
「猟奇的」は異常で怪しい様子や物に使われる
「猟奇的」は、異常で怪しい様子や、不思議なものを表現する際に使用されます。言葉の意味にある「探し求める」要素が全くない場合にも用いられます。
- 彼女は妖怪モノの小説にハマってから、猟奇的な作品ばかり見るようになった。
- 彼は「孤独に苦しむ殺人犯」という難しい役を、猟奇的な目付きで見事に演じていた。
- 新作ドラマは、猟奇的な事件に挑む探偵物語のようだ。
「猟奇的」は残虐・グロテスクな様子にも使われる
「猟奇的」は残虐でグロテスクな様子の表現にも使われます。この意味しかないと思っている人も多く「猟奇的」の一般的な使い方だと言えるでしょう。基本的にはネガティブな意味ですが、スプラッターやホラーなどのフィクション作品では、猟奇的なものを好んでいる人もいます。
- 生々しいケガの描写が猟奇的で、見ていて気分が悪くなるイラストだった。
- 猟奇的な事件の犯人がなかなか捕まらないことに、近隣住民は怯えていた。
- 本当は猟奇的なスプラッター映画が好きなのだが、彼に嫌われるのが不安で言い出せないでいる。
「猟奇的な人」はネガティブな意味で使用される
「猟奇的な人」と使う場合も、基本的にネガティブな意味で使用されます。残虐な人や、おかしな行動をする人を非難する場合に用いられます。
- こんな残虐なことを平気でするなんて、犯人はきっと猟奇的な人だろう。
- 彼の演技は凄まじく、本当に猟奇的な人なのかと思ってしまった。
誉め言葉として使わない方が無難
「猟奇的」にはネガティブなイメージが強いため、誉め言葉として使うのは避けた方が良いでしょう。別の表現に直して、誉めていることが伝わるようにするのが無難です。
例えば「怪奇なものの研究者」に対する誉め言葉として「猟奇的」が使えると思う人がいるかもしれません。また、有名な映画のタイトルに使われたことから、誉め言葉だと思っている人もいるようです。ヒロインのイメージから「いたずらめいている」「独特でかわいい」というポジティブな言葉に感じられるのかもしれません。しかし、元の言葉の意味から離れているため、相手に通じる可能性は低いでしょう。
- 猟奇的な彼のおかげで、各地に伝わる妖怪伝説をまとめた本が完成した。
→研究熱心な彼のおかげで、各地に伝わる妖怪伝説をまとめた本が完成した。 - 彼女って、とても猟奇的だから好きだな。
→彼女って、いたずらっ子だけど魅力的だから好きだな。
「猟奇的」の類語とは?
「猟奇的」の類語は”狂気的”
「猟奇的」の類語は“狂気的(きょうきてき)”です。「気が狂っていること・精神が異常な状態」を意味する”狂気”に「的」を続けた言葉です。
「猟奇的」とは”異常な状態”だという共通点がありますが、言い換えには使いづらい場面があります。「狂気的」は精神のことを示しますが、「猟奇的」は精神だけではなく、行動も異常な状態に用いられるためです。例えば「猟奇的な殺人事件」はよく言いますが、「狂気的な殺人事件」はあまり言われません。
「猟奇的」の言い換えは伝えたい意味から考える
「猟奇的」は意味が広い言葉のため、言い換えたい場合は「伝えたい意味」から言葉を選びましょう。意味を誤解される可能性も減ります。
- 人間や動物に対する、むごい行い
残虐(ざんぎゃく)、残酷(ざんこく)など - 不思議で怪しいこと
怪奇(かいき)、奇怪(きかい)など
まとめ
「猟奇的」とは”異常なものを求める様子”という意味です。しかし、一般的には「異常な様子や行動」という意味で用いられます。残虐なイメージが強い言葉ですが、本来は不思議なものや怪しいものも表現できます。
基本的にはネガティブな言葉のため、誉め言葉としては使用できません。別の言葉に言い換えましょう。