「色々(いろいろ)」は日常会話でよく見られる言葉です。しかし、身近な表現にもかかわらず、注意が必要な場面もあります。「色々」「色々と」の意味や使い方、敬語表現を確認しましょう。また、類語「様々」との違いもご説明します。
「色々」の意味と語源とは?
「色々」の意味は”種類が多いこと”
「色々(いろいろ)」の意味は、“物事の種類が多いことやその様子”です。この場合、「色」は色彩の意味で使われません。
あまり見かけられませんが「色彩の種類が多い」という意味も持ちます。また、公家の衣服に関する用語としても用いられていました。
「色々と」とは「色々となにかをしたこと」
「色々」を使った表現に「色々と」があります。「色々と」とは「色々となにかをしたこと」を表す表現です。
「色々とお世話になりました」「色々とご面倒をおかけしました」など、その物事について多くなにかしたことを意味します。
「色々」の語源は”色”
「色々」の語源は”色”だと言われています。もともとは「色彩の種類が多いこと」を意味していたため「色」を繰り返していました。しかし、色が混ざると他の色に変化することから、次第に「種類が多い・数が多い」ことを「色々」で表現するようになったと考えられているようです。
「色々」の使い方と例文とは?
「色々」は種類が多い状態を説明する
「色々」は物事の種類が多い状態を表現します。物理的な物だけでなく、日常的なできごとをまとめて表現することも可能です。
- 今まで、色々お世話になりました。
- 色々なくじの当選確率を調べて、もっとも当たりやすいものを購入しよう。
迷ったら平仮名で「いろいろ」と書く
「色々」と「いろいろ」で悩んだら、平仮名で書いた方が無難です。「漢字が持っている意味が使われていない場合は平仮名で書く」という考え方があるためです。「色々」は色彩の意味で使われることは減っていますので、平仮名の方が良いと言えるでしょう。また、「色々」より「いろいろ」の方が温かみを感じるという意見もあります。
ただし「色々」と書いても誤用ではありません。特にプライベートの文章で、無理に「いろいろ」に統一する必要はないでしょう。
「色々」の注意点とは?
「色々」を敬語に使う場合は「諸々」に言い換える
「色々」は敬語に使えない表現のため、別の言葉に言い換える必要があります。同じ意味で使いやすい熟語が「諸々(もろもろ)」です。また、意味が同じになる別の表現にする方法もあります。
- 色々な方法をご紹介いたします。
→諸々の方法をご紹介いたします。 - 色々と助けてくれてありがとうございました。
→平素は何かとお力添えいただき、ありがとうございます。
「色々」は説明を要する場面では避ける
詳細な説明が必要な場面には「色々」は向きません。数や種類を省略する言葉のためです。以下のような場面では、可能な限り具体的な説明をしましょう。
- 重要な事柄へのお礼をするとき
「〇〇していただき、ありがとうございます」と具体的に言う方が丁寧です。 - 失敗の謝罪をするとき
「色々」でまとめず、失敗した理由を説明した方が良い場面も多いでしょう。ただし、言い訳に聞こえないよう注意してください。 - 説得力を持たせたいとき
具体的な数字や種類を出して説明した方が、説得力が増します。
「色々」は冠婚葬祭では「忌み言葉」になる
「色々」は一部の冠婚葬祭の場では忌み言葉になります。使用を避けるのがマナーです。「多くの・大変」などに言い換えましょう。
忌み言葉(いみことば)とは、縁起の悪い言葉のことです。結婚式や葬式など、繰り返さない方が良い場面では、「色々」などの繰り返し言葉は縁起が悪いと考えられます。
- 結婚式を迎えるまで、色々なことがありました。
→結婚式を迎えるまで、多くのことがありました。 - 色々とお世話になりました。
→大変お世話になりました。
「色々」と類語「様々」の違いとは?
「色々」と「様々」の違いは”数と違いのどちらがメインか”
「様々(さまざま)」の意味は”それぞれ種類が違うこと”です。「色々」とは微妙な意味合いの違いで使い分けます。「種類の数が多いこと」を強調したい場合は”色々”、「それぞれ違うこと」を強調したい場合は”様々”を使うと良いでしょう。
なお、日常のできごとをまとめて省略することは「色々」でしか表現できません。「様々」に言い換える場合は、文章を変更する必要があります。
新しくできたレストランは、色々なメニューがあるので楽しい。
→新しくできたレストランは、様々なメニューがあるので楽しい。
- 色々お世話になりました。→様々なご配慮をいただきました。
- 色々疲れたよ。→様々な要因が重なり、疲れました。
「色々」の対義語とは?
「色々」の対義語は”画一”
「色々」の対義語は“画一(かくいつ)”です。全体を同じように統一することを意味します。「特色をななくす」「個人の事情を配慮しない」という一面もあるため、ネガティブな印象を持たれやすい言葉です。ただし、どの店舗でもサービスの質をそろえる必要のあるチェーン店などでは「画一」をポジティブな意味合いで使うこともあります。
まとめ
「色々」とは”物事の種類が多いこと”を意味します。日常的なできごとをまとめて表現することも可能です。
使いやすい言葉ですが、敬語の必要な場面や冠婚葬祭には不向きです。別の言葉に言い換えて、その場にあったやり取りを心がけましょう。