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国民健康保険料の滞納でどうなる?保険証返却・最終差し押さえとは

会社を通じて社会保険制度に加入しているサラリーマンとは違い、自営業者や非正規雇用で働く人などは個人で国民健康保険に加入しています。国民健康保険料の納付はサラリーマンと違って給与からの天引きではないため、うっかり納付をし忘れてしまったり、あるいは経済的理由から支払えなくなる人もいます。

この記事では、国民健康保険を滞納するとどうなるのかや、支払いが困難な場合にすべきことなどをわかりやすく解説します。

「国民健康保険料」滞納するとどうなる?とられる措置とは?

「国民健康保険料」を滞納すると”督促・遅延金加算”が行われる

「国民健康保険料」を滞納した(納付期限までに完納されなかった)場合、一定期間以内に督促状が送付され、督促手数料も加わります。さらに督促の期限までに完納とならない場合には、遅延金(延滞料)が加算されます。

なお、督促や遅延金加算の対象となる滞納期限等については、国民健康保険法や地方自治法等の法律をもとに、各市区町村が規定を定めているため、詳細については住所のある市区町村に問い合わせて確認することになります。

遅延金の計算方法は納期限の翌日から1か月を経過した日以降について、年14.6%が加算されます。

最終的には「財産の差し押さえ」が行われることもある

督促等により納付が促されても滞納が続く場合、最終的に財産の差し押さえが行われることがあります。財産の差し押さえは国税徴収法に基づいて行われるもので、預貯金や給与のほかにも生命保険や不動産等が対象となります。金融機関や勤務先などに財産調査が行われるため、社会的信用に影響が及ぶ可能性があります。

平成30年度の差し押さえ世帯の件数は356,141 件で、加入全世帯のうちの2%、滞納世帯のうちでは15%となっています。(厚生労働省保険局国民健康保険課調べ)

国民健康保険の措置が行われるのは世帯単位

国民皆保険制度の日本では、なんらかの公的医療保険に国民全員が加入することになっています。
職場の健康保険に加入している人、生活保護を受けている人、75歳以上の人以外の人は国民健康保険の加入対象者です。

国民健康保険は住民登録が同一の世帯を単位として加入し、保険料の支払いは世帯主がまとめて行うため、滞納による措置は世帯に対して行われます。国民健康保険料の納付期限が過ぎても支払いをしなかった場合、保険者である市区町村からは段階的な措置が行われますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

「国民健康保険料」滞納すると「保険証」はどうなる?

短期間しか使用できない「短期被保険者証」が交付される

滞納期間が6か月以上1年未満の場合は、通常の保険証は使えなくなり、保険証を返還する代わりに「短期被保険者証」が交付されます。「短期被保険者証」は有効期間が最大6か月までの短い保険証です。

通常の保険証と同様に医療機関の窓口負担は3割となりますが、更新のたびに市区町村の窓口で手続きをする必要があり、またその際に滞納している保険料の分割などによる支払いを求められることがあります。滞納分を全て支払えば、通常の保険証が交付されます。

さらに滞納すると保険証ではなく「被保険者資格証明書」が交付される

「短期被保険者証」が交付されたあとにも支払いに応じることができず、滞納期間が1年以上1年6か月未満となる場合は、保険証は取り上げられ、代わりに国民健康保険の被保険者であることを証明する「被保険者資格証明書」が交付されます。

被保険者資格証明書とは?

「被保険者資格証明書」では3割負担で医療機関を利用することはできず、医療費は全額自己負担となります。

支払い後に市区町村の窓口で支払った金額の7割を払い戻してもらうことができますが、それまでに滞納している保険料と相殺されるため、全額が戻るわけではありません。

「被保険者資格証明書」が交付された後であっても、先に説明した「特別な事情」に該当する場合や、医療費の一時払いが困難な事情がある場合などは、「短期被保険者証」が交付される場合があります。高校生以下については6か月以上の有効期限の保険証が発行されることもあります。詳しくは住所のある市区町村の窓口にお問い合わせください。

滞納が1年6か月以上続くと保険給付が差し止められる

滞納が1年6か月以上続くと、窓口負担が全額となることに加え、高額療養費の給付や葬祭費等の現金給付が行われなかったり、給付金から保険料が控除されたりします。

高額療養費とは同じ月内の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が支給される制度で、葬祭費とは被保険者が死亡した場合に葬祭費が支払われるものです。このような現金給付は他にもありますが、全てが停止の対象となる可能性があります。このような事態になる前に、窓口に支払いの相談を行うことが大切です。

保険料の納付が困難な場合はどうすべき?

特別な事情がないまま保険料を滞納していると、段階的な措置が取られ、保険給付に制限が設けられます。しかし経済的事情等により保険料の支払いが困難と認められる場合には、保険料が減免される制度があります。

減免制度を利用すれば督促や保険証返還などの対象とならない

経済的理由等で納付が困難な場合は、市区町村の窓口に相談の上、保険料の減免を申請できます。減免制度では、4月1日時点における世帯の総所得金額に応じて、7割から2割の減免を受けることができます。

令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、一定程度の収入が減少した世帯の人も減免を受けることができる制度が設けられています。

減免制度の対象外であってもあきらめずに相談を

また、減免対象とならない場合でも、窓口に相談して少しづつでも納付し、支払いの意思を示すことで継続して保険給付を受けることもできます。対象から外れていてもまずは相談してみることが大切です。

保険料支払いに「時効」はあるの?

保険料の支払いに「時効」の概念は無いが、特別な事情は考慮される

国民健康保険料の支払いに「時効」の概念は無いため、一定期間が過ぎれば支払いの義務が消滅することはありません。しかし保険料を支払うことができない特別な事情がある場合、支払いが免除されることがあります。

特別な事情とは、国民健康保険法に規定される次の内容です。

1.世帯主がその財産につき災害を受け、又は盗難にあったこと。
2.世帯主又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
3.世帯主がその事業を廃止し、又は休止したこと。
4.世帯主がその事業につき著しい損失を受けたこと。
5.1から4に類する事由があったこと。

また、令和2年度時点において、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、感染症の影響により一定程度収入が下がった人に対して国民健康保険料の免除を行うことが閣議決定されました。詳しくはお住まいの市区町村にお問い合わせください。

まとめ

「国民健康保険」は国民皆保険の基礎となる保険です。被保険者となり保険証を持つことで国民の誰もが低額の自己負担額で高度な医療を受けることができます。その財源の約半分は被保険者が支払う保険料でまかなわれています。

国民健康保険は国民全体で支えあう制度であるため、支払い能力があるにもかかわらず、保険料の納付を滞納すると、保険給付の制限や財産の差し押さえが行われる場合があります。しかし経済的な事情等がある場合には、保険料が免除されたり、納付期限が過ぎた分について分割払いに応じてもらえることもあります。

令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少した人に対する減免制度も設置されています。保険料の支払いが苦しい場合には、市区町村の窓口に相談してみましょう。