日本では「国民皆保険」の制度により、国民はなんらかの公的な医療保険に加入する仕組みとなっています。国の公的な医療保険は複数あり、働き方と年齢によって加入する保険が決まります。
この記事では、どのような仕事の人がどの保険に加入するのか、また年齢によってどのように保険が変わるのかを整理して解説します。あわせて保険の種類による保険料の違いなど、公的健康保険の仕組みについてもわかりやすく解説します。
健康保険の種類とは?
健康保険は「被用者保険」と「国民健康保険」に大別される
「健康保険」の種類は、“被用者保険”と“国民健康保険”に大きく分けられます。働き方の違いによって分類すると、サラリーマンや公務員などの企業や団体などに勤める人が加入する「被用者保険」のグループと、自営業者や勤務時間の少ない非正規雇用者や、学生・年金生活者などが加入する「国民健康保険」に分かれます。
「被用者保険」は3種類ある
会社などに勤める人が加入する「被用者保険」の保険者(保険の運営主体)には、「健康保険組合・協会けんぽ・共済組合」の3種類があります。
「健康保険組合」は大企業に勤めるサラリーマンとその扶養家族が加入
「健康保険組合」は健康保険法に基づいて大企業が設立する保険組合です。大企業に勤めるサラリーマンとその扶養家族が被保険者となります。
「協会けんぽ」は中小・零細企業に勤めるサラリーマンとその扶養家族が加入
「協会けんぽ」は健康保険組合の設立が困難な中小・零細企業に勤めるサラリーマンとその扶養家族が加入できるよう設立された保険協会です。健康保険組合が解散した場合はその組合の被保険者は協会けんぽに加入することになり、協会けんぽは被用者保険のセーフティネットの役割も果たしています。
「共済組合」は公務員とその家族が加入
「共済組合」は共済各法に基づいて公務員とその家族を対象に設立された共済組合です。
それぞれの保険の加入者(被扶養者含む)は平成30(2018)年3月末時点で「健康保険組合」は約2,948万人、「協会けんぽ」は約3,893万人、「共済組合」は約865万人です。
被用者保険に加入しない人は「国民健康保険」に加入する
被用者保険に加入する人、つまり企業や団体等に勤めることにより会社等と通じて健康保険に加入する人以外のすべての国民は、国民健康保険に加入する義務があります。ただし、生活保護を受給している人と75歳以上の人は除きます。(75歳以上の後期高齢者は別制度となりますので次に説明します)
また、国民健康保険の保険者は市町村です。平成30年度からは都道府県も保険者に加わりましたが、窓口は今までと同じ市町村が担当します。
国民健康保険の加入者は平成30(2018)年3月末時点で約2,870万人です。
75歳以上になると「後期高齢者医療制度」に移行する
働き方の違いにより加入する保険が2種類のグループに分かれること、また会社等に勤める人の保険には複数の種類があることを説明しましたが、年齢が75歳に達するとそれらの保険とは全く別の保険に全員が加入することになります。
75歳以上の後期高齢者になると、それまで加入していた保険制度から切り離されて、「後期高齢者医療制度」に加入します。65歳~74歳の前期高齢者で一定の障害の状態にある人も加入できます。
後期高齢者医療制度は平成20年2008年から開始された制度です。後期高齢者医療制度の平成30年3月末時点の加入者数は1,722万人です。
保険の種類による「保険料」と「自己負担割合」の違いとは?
公的健康保険は、働き方によって異なる保険に加入することと、75歳になるとそれらの保険から切り離されて後期高齢者医療制度に加入することを説明しました。それでは、加入する保険によって毎月支払う保険料や、病院などの窓口で支払う自己負担金の割合は異なるのでしょうか?
「被用者保険」は給与額に応じて保険料が決まる
「協会けんぽ」や「健康保険組合」など「被用者保険」については、毎月の給与に保険者ごとに決まっている保険料率を掛けて保険料の額が決められます。つまり給与の高い人は保険料が高く、低い人は保険料が低くなる仕組みです。保険料は会社と被保険者が折半負担します。
「国民健康保険」は市町村ごとに一律の保険料が定められている
「国民健康保険」については市町村ごとに保険料率が定められています。負担能力に応じて決まる「応能割(所得割・資産割)」と「応益割(一人当たりの定額・1世帯当たりの定額)」を組み合わせて決定します。
また、被用者保険では、被保険者の無業の妻や子供などの扶養家族も被保険者となることができ、保険料を負担することなく医療給付を受けることができます。その一方で、国民健康保険は個人ごとに加入するものであり、扶養の制度はないため、被保険者に扶養家族がいた場合でもそれぞれが保険料を支払います。
「自己負担割合」に違いはない
病院等にかかった際の医療費の自己負担割合は、加入する健康保険の種類による違いはありません。原則として、義務教育就学前は2割負担、義務教育就学後から69歳までは3割負担、70際~74歳までは2割負担(現役並みの所得がある人は3割負担)、75歳以上は1割負担(現役並みの所得がある人は3割負担)となります。
まとめ
日本は全ての国民が公的な医療保険に入る「国民皆保険」の仕組みをとっています。年齢や働き方に応じて複数の健康保険が用意されており、公的医療保険に加入することで病気やけがをしたときに少ない負担額で必要な医療サービスが受けられることが保障されています。
あるのが当たり前なため、普段は関心を寄せることが少ない医療保険制度ですが、日本の国民皆保険制度は世界に誇れる社会保障制度となっています。私たちの健康を支える大切な制度として、その仕組みを理解しておくことも大切です。