年末調整や確定申告の際に扶養控除の対象となる「扶養親族」。その中に「特定扶養親族」が出てくるとお手上げという人もいるかもしれません。
この記事では扶養親族の中でも「特定扶養親族」に焦点をあてて解説します。あわせて「扶養控除」や「所得控除」の仕組みについても解説します。
「特定扶養親族」とは何?控除額や条件は?
「特定扶養親族」とは年齢が19歳以上23歳未満の扶養親族
「特定扶養親族」とは、納税者の扶養親族の中で、納税を行う年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人のことをいいます。「扶養親族」の定義についてはのちほど詳しく説明します。
「特定扶養親族」の控除額は63万円
「特定扶養親族」の控除額は63万円です。なお、控除対象扶養親族に該当する人は、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。一般の控除対象扶養親族(16歳以上)の控除額は38万円です。
「特定扶養親族」の人の年収が103万円を超えると控除の対象とならない
特定扶養親族は年齢で判断されますが、対象の年齢であってもアルバイトなどでの給与年収が103万円を超えると控除の対象となりません。「103万円の壁」と呼ばれるもので、所得額から一律で控除される「基礎控除」の38万円と、給与収入から一律で控除される「給与所得控除」の最低金額の65万円を足した金額が103万円の壁となります。
「特定扶養親族」は大学生の子どもの学費負担を目的として創設
「特定扶養親族」の19歳以上23歳未満という年齢設定は、納税者の子どもが大学生で働いていない場合の学費負担を軽減する目的で創設された仕組みです。しかし子どもが大学生でない場合でもあとで紹介する扶養親族の要件にあてはまれば控除を受けることができます。
そもそも「扶養控除」とは?
「扶養控除」は「所得控除」の一つ
納税者に所得税法で定められた控除対象扶養親族がいる場合には、その対象者の要件に応じて、一定の金額の扶養控除を受けることができます。
扶養控除とは所得控除の一つで、所得税の算出にあたって、所得額から一定の金額を差し引く制度のことです。所得税は所得額に応じて決まるため、所得額が小さくなれば所得税も低くなるため、納税者の事情にあわせて納税の負担を減らすという目的で行われているものです。
扶養控除は同居の老親等がいる場合にも適用されます。申告しなければ必要な控除が行われず、税金を多く支払うことになるため、制度をよく理解しておくことは重要です。
「扶養親族」に該当する4つの条件
扶養親族とは、納税を行う年の12月31日の時点で次の4つの条件すべてに当てはまる人となります。
- 配偶者以外の親族(親族とは6親等内の血族及び3親等内の姻族のこと)
- 納税者と生計を共にしていること(納税者の収入で生活していること)
- 年間の合計所得金額(事業所得や不動産所得、給与所得、その他雑所得の合計で損益通算後の金額)が48万円以下であること。給与所得のみの場合は103万円以下であること
- 青色申告者の「事業専従者」としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は白色申告者の「事業専従者」でないこと。(事業専従者とは、納税者と一緒に生活している家族従業員のこと)
なお、扶養親族のうち「控除対象扶養親族」とは、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人となります。16歳未満の子どもは平成23(2011年)より、児童手当の対象となっています。
扶養控除額の一覧
扶養親族ごとの控除額は次の通りです。
- 一般の控除対象扶養親族:38万円
※扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人 - 特定扶養親族:63万円
※控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人 - 老人扶養親族:48万円
※控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人で同居老親等以外の者 - 同居老親等:58万円
※老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人
そもそも「所得控除」とは?
「所得控除」とは所得の合計金額から一定の金額を差し引く制度
「所得控除」とは、所得の合計金額から一定の金額を差し引く制度のことです。所得税や住民税を計算する際に、各納税者の経済事情を反映するための仕組みです。扶養控除の他に生命保険料控除や医療費控除、配偶者控除など複数の控除があります。
前年の所得額に応じて翌年の所得税や住民税が決定しますが、一定の要件を満たすと所得控除が受けられ、税金が軽減されます。
「扶養控除」と「配偶者控除」は違うので注意が必要
「扶養」と一口で言う場合、配偶者もその所得によって扶養の対象となるため、「扶養控除」の対象者に「配偶者」が含まれると考える人も多いかもしれません。しかし、配偶者の控除は「配偶者控除」となり、仕組みが異なります。
「配偶者控除」における配偶者の所得制限では、103万円の壁が改正され、給与収入の上限が150万円となっています。
まとめ
会社員が年末調整のために提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を作成する場合や、自営業者などが確定申告を行う際に、納税法上の「扶養」の対象や仕組みがどのように定まっているのかがよくわからないことがあります。
「扶養」の概念や控除の仕組みは一度確認しておくと、その都度悩むことなくスムーズに対応することができます。
なおこの記事は、令和2年4月1日現在法令等に基づいて執筆されていますので、控除額等は改定される場合があります。