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「碍」の意味や成り立ちとは?「害」との関係や「障碍」も解説

「障害」を「障碍」と表記することがありますが、「碍」とはどのような意味を持つ漢字なのでしょうか?この記事では、「碍」の意味と読み方、さらに「障碍」の語の成り立ちや「障害」との関係などについて解説します。

「碍」の意味と読み方とは?

「碍」の意味は”邪魔をする”

「碍」の意味は、“邪魔をする・さまたげる・邪魔をして止める”ことです。本来は「礙」の字の俗字でした。

「碍」の読み方は”がい”

「碍(礙)」の読み方は“がい”です。古くは「げ」という読み方もされていました。訓読みでは「さまた‐げる」と読みます。

「碍」は常用漢字ではない

「碍」「礙」とも常用漢字ではないため、一般的にはあまり用いられていません。「がい」とひらがなで表記したり、同じ音の「害」の字が代わりに使われたりしています。

なお、常用漢字とは、内閣が告示する「常用漢字表」で示される漢字のことで、法令や公用文書のほか、新聞や雑誌などにおいて、現代の国語を書き表す際の漢字使用の目安とされるものです。

「碍」の成り立ちとは?

もともとは仏教語「障碍(礙)」に用いられていた

「碍」の字は、古い時代には仏教語で「しょうげ」と読む「障碍(礙)」に使われていました。「物事の発生や持続にあたってさまたげになること」という意味を持ちますが、平安末期以降は仏教語の意味から転じて「怨霊などが邪魔すること・障り(さわり)」の意味でも使われるようになりました。

大正期には「障碍(礙)」を”障害”と書くようになった

仏教語から転じて「邪魔をする」という意味で使われるようになった「障碍(礙)」は、「しょうげ」から「しょうがい」と読み方が変化しました。

「しょうがい」と読むことにともなって「障碍(礙)」の漢字は「障害」と書くことが多くなりました。大正期には「障碍(礙)」よりも「障害」の字が一般的となっていたようです。

「碍」は”害”に置き換えられた

昭和21年に内閣が告示した「当用漢字表」および、昭和56年に告示された当用漢字の後継である「常用漢字表」のどちらからも「碍」は外れています。

「碍」にあてられた同音の「害」の字が一般的に使われるようになったことから、「碍」や「障碍」の字は国民になじみのある漢字ではなくなりました。

中国語で「障害」は”障碍”と書く

中国語では、「障害」は「障碍」と書きます。「邪魔をする・さまたげる」という意味で、日本語の「しょうがい」と同じ意味です。

日本においても、「しょうがい」を「障碍」と表記する時期もありましたが、当用漢字および常用漢字から外れたことから、一般的ではない漢字となりました。

「障害者」が「障碍者」や「障がい者」に置き換えられるのは何故?

身体障害者や精神障害者などについて、法令では「障害」の字が用いられています。しかし「障害者」を「障碍者」や「障がい者」と表記する地方自治体や企業などがあります。何故書き換えが行われているのでしょうか?

「害」の語に対する悪いイメージから「障碍」を推奨する動きがある

「障害」は「障碍」の語を置き換えた漢字として受け入れられていますが、「障害」の「害」の字に注目したとき、その意味に抵抗を感じる場合があるようです。

「害」は「きずつける」「そこなう」という意味とともに「人を殺す」という意味もあり、また「殺害」「危害」などの熟語にも使われているため、「害」の漢字のみに着目した場合、人に対する呼称に用いる漢字として不適切だという意見です。

その一方で、「碍」は「さまたげる」という意味であり、電線を絶縁するために用いる器具のことを「碍子(がいし)」というように、「きずつける」というような意味は持っていません。

そのことから、「障害」ではなく「障碍」と書き表すべきだとする意見があるのです。

「碍」が常用漢字ではないため「障がい」の表記を採用する団体もある

「障害」の漢字を字義から考えた場合に、人に対する表記として不適切であると考える地方公共団体や企業などは、「障がい」の表記を公に用いています。

「障碍」ではなく「障がい」とひらがなで書く理由としては、「碍」が常用漢字ではないために国民の間に浸透していないことに加え、ほかに適切な表記がないことが挙げられます。

「障がい」の表記を採用しているよく知られた企業としては、ソニー株式会社があります。

「碍」の字を使う熟語を紹介

何にもとらわれずに自由であるという意味の「融通無碍」

「碍」の字は一般的ではありませんが、「碍」を用いた熟語である「融通無碍(ゆうづうむげ)」は比較的よく知られている言葉ではないでしょうか。「考えなどが何にもとらわれずに自由であること」という意味です。

「融通」「無碍」ともに、「障害がない」という意味があります。

電線を絶縁する器具のことを「碍子」という

電線とその支持物とを絶縁する器具のことを「碍子(がいし)」といいます。「がいし」の専業メーカーである「日本ガイシ」は当初の会社名は「日本碍子」でした。

まとめ

「碍」とは、「邪魔をする」という意味を持ちます。「しょうがい」の意味を持つ「障碍」の語に用いられていましたが、「碍」が一般社会で使う漢字の目安となる常用漢字から外れたことから、同じ音の「害」の字があてられ、「障害」と書くようになりました。

障害者関連の法令に「障害者」の字が用いられることについて、「害」の字義から人に対する呼称として不適切ではないかとの議論があります。文化庁による文化審議会の国語課題小委員会において、障害者という言葉においては「害」ではなく「碍」を使えるようにするため、常用漢字とするかどうかを議論していました。結論は2020年の会議で出される予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために会議は中止となり、新年度に持ち越されています。今後「碍」が常用漢字となるのかどうか、注目してゆきたいところです。