「燈」の意味や成り立ちとは?灯との違いや名前の読み方を紹介

「燈」という漢字は常用漢字ではないため、固有名詞以外では一般的に使用されません。しかし、比較的最近まで常用漢字だったため、見覚えがあると感じる人もいるでしょう。「燈」の意味や読み方、「燈」を使う名前をご紹介します。また、「灯」との関係もご説明しましょう。

「燈」とは?

「燈」の意味は”火・ともしび・あかり”

「燈」の意味は、“火・ともしび”です。火は周囲を照らすことから“あかり”の意味もあります。

「燈」の読み方は”とう・ひ”

「燈」の基本的な読み方は音読みが“トウ”、訓読みが“ひ”です。それ以外にもさまざまな読み方をします。

読み方
  • 音読み
    トウ、トン、ドン、テイ、チョウ
  • 訓読み
    ひ、あかし、あかり、とぼ(す)、ともし、ともしび、とも(す)

「燈」には”仏の教え”という意味もある

「燈」には“仏の教え”という意味もあります。この意味に関係する熟語が、神仏にそなえるともしびの「燈明(とうみょう)」です。燈明のような明かりは、闇を照らし明るくします。これを、煩悩で悩む人の心を照らす仏の教えに例えたと言われています。

「燈」の成り立ちは”上へ登る火”

「燈」の成り立ちは“上へ登る火”です。「火」は燃える火の、「登」は祭器と両手の象形文字です。祭器を両手で持って上げることから「燈」は”上へ登る火”が成り立ちだと言われています。

象形文字(しょうけいもじ)とは、ものの形を描いた絵を元にして作られた漢字のことです。

「燈」の使い方とは?

「燈」は”灯”の旧字体のため一般的には使わない

「燈」は常用漢字ではなく、「灯」の旧字体とされています。そのため、基本的に新聞や雑誌、公文書などで使われません。ただし、他の旧字に比べると比較的最近(昭和50年代末頃)まで常用漢字でした。そのため、今でも「燈」の方が親しみが湧く人もいるかもしれません。

常用漢字(じょうようかんじ)とは、国が定めている「日常的に使う漢字」です。「常用漢字表」にまとめられています。

「燈」は伝統的なものの名称に使われる

現在、「燈」がよく使われるのは、常用漢字ではなくなる前から続く伝統的なものの名称です。会社や祭り、商品名など、当時名付けられた固有名詞を「灯」に直さず使っているものがあります。

  • 株式会社 〇〇電燈社
  • 〇〇村燈籠祭

熟語の「灯」を「燈」に変えてレトロな雰囲気にする

レトロな雰囲気にするために、「灯」が使われる熟語を「燈」に変えることがあります。古い時代を舞台したフィクション作品や、コンセプトカフェ、お土産品で見られるかもしれません。

熟語の例
  • 燈台(とうだい)
    通常は「灯台」と書く。航路標識。
  • 行燈(あんどん)
    通常は「行灯」と書く。木や竹で作られた照明。
  • 燈籠(とうろう)
    通常は「灯籠」と書く。灯明を置くための用具。
    木枠を使った小型のものや、金属や石を使った屋外用のものがある。
  • ガス燈(がすとう)
    通常は「ガス灯」と書く。ガスを燃やした火を利用する照明。
    電灯が普及するまでは街灯に使われる時代もあった。

「燈」は男の子・女の子の名前に使われる

「燈」は人の名前にも使われます。名前に使用可能な漢字は「常用漢字」と「人名用漢字」だけです。「燈」は常用漢字ではありませんが、人名用漢字に含まれています。

ともしびが「穏やかで優しい様子」を連想させるため、優しい人になって欲しいと名付けられるようです。他にも「灯台が照らしているように、将来が明るくなってほしい」という願いが込められることもあります。ただし「燈花(とうか)」は「燃えかす」の意味もあるため、人名には向かないと思う人もいるかもしれません。

  • 男の子の名前と読み方の例
    燈(ともる、あかし、あかり)
    一燈(かずとも、かずと、かずひ、いっとう)
    瑛燈(えいと)
    燈和(とうわ)
  • 女の子の名前と読み方の例
    燈(あかり、とも)
    燈凛(あかり)
    燈佳(とうか、ともか)
    月燈(つきひ)

「燈」と「灯」の違いとは?

現在は「燈」と「灯」の意味に違いはない

現在は「燈」と「灯」の意味に違いはありません。先ほどご説明した通り「燈」は「灯」の旧字体とされているためです。人名や店舗、行事などの固有名詞以外は「燈」「灯」どちらで書いても誤用にはなりません。誰にでも分かりやすい文章にしたい場合は常用漢字である「灯」を、レトロな印象にしたい場合は「燈」を使うと良いでしょう。

しかし、「灯」は「燈」を簡単に書くために作られた漢字ではなく、本来は別の漢字でした。そのため、意味にも違いがあったと考えられています。

本来は「光源の扱い」が違うという説がある

「燈」と「灯」の本来の意味の違いは「光源の扱い」とする説があります。「燈」は先ほどご説明した通り「上へ登る火」が成り立ちのため「光源は高いところにある」という意味です。対して、「灯」の光源は安定するように「固定されている」ことを意味します。「丁」が釘を意味するためです。

「火の強さ」が違いだという説もある

「燈」と「灯」の違いの2つめの説は「灯の強さ」です。「燈」の火は、ろうそくのような小さな火の表現に使われていました。対して「灯」は激しく燃える火を意味するとされます。

まとめ

「燈」とは、”火・あかり”を意味する漢字です。以前は常用漢字だったため、伝統的な会社や祭りの名称に使われています。人名用漢字のため、子どもの名前に使われることもあります。

現在は常用漢字の「灯」を使うのが一般的ですが、受ける印象の違いから「燈」の方がふさわしい場面もあるかもしれません。念のため把握しておくと良いでしょう。