イギリスの選挙制度の仕組みとは?歴史とEU離脱の影響も解説

イギリスではEU離脱を問う総選挙が2019年12月に行われました。選挙の結果、ブレグジットが推し進められることになりましたが、そもそもイギリスの選挙制度はどのようになっているのでしょうか。

今回は、イギリスの選挙制度の仕組みの他に、選挙制度の歴史や2019年の総選挙について紹介します。

※この記事の担当:Light1(海外在住20年。イギリス在住経験あり。イギリスのビネガー味のフライドポテトが好き)

イギリスの選挙制度と議会とは?

イギリス選挙制度の基本情報

選挙権が得られる年齢など、イギリスの選挙制度に関する基本的な情報は次の通りです。

イギリスの選挙制度の概要
総選挙が行われる回数5年に1度
投票権のある人
  • イギリス国民
  • アイルランド国民
  • イギリス連邦の加盟国の国民で、イギリスでの滞在許可のある人。
実際に選挙に参加できる人投票権のある国民のうち、18歳以上で有権者登録をしている人。
有権者数4577万5800人(2018年12月現在)
選挙区数650
選挙制度小選挙区制
主な政党保守党、労働党、スコットランド国民党、自由民主党、民主統一党、シン・フェイン党、ウェールズ党プライド・カムリ、緑の党。

イギリス議会は国王・上院・下院から構成される

イギリス議会は国王と上院、下院から構成されています。選挙によって議員が選ばれるのは下院で、定数が650人、任期は5年で、任期中に解散もありえます。下院の正式名称は「庶民院(House of Commons of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」で、上院が可決した法案を下院が否決しても法案として成立するなど、下院の方が上院よりも優勢です。

一方、上院は、議員数に定数はなく、議員は選挙ではなく首相の助言に基づいて国王が任命します。上院の正式名称は「貴族院(House of Lords)」で、上院の働きをチェックする役割があります。

国王は国王大権として議会の招集や法案の裁可などを行いますが、直接的に国政に関与することはなく、慣習的に首相の助言に従って国王大権を行使します。

小選挙区制によって下院議員は選ばれる

イギリスの選挙制度では小選挙区制が採用されています。各選挙区で最も票を集めた候補者が当選するため、最も票を集めた議員でも過半数に至らないことがあります。

政権は下院の第1党で、首相は第1党から選出

イギリス政権は下院の過半数の326議席以上を得た第1党が獲得します。もしも第1党が下院の過半数に至らない場合には、他党と連立して政権を組みます。

また首相は第1党の議員の中から選ばれます。第1党の議員が首相として指名されて、国王が任命します。

上院への強い風当たり

上院は貴族院とも呼ばれ、もともと貴族によって構成されていたという成り立ちから、現在でも貴族身分の人が選出されています。世襲貴族の定数は92人、国教会の高位聖職者の定数26人ですが、一代貴族の定数はありません。任期は終身のため、2020年現在の上院議員の総数は794人にまで膨らんでいます。

上院は国政を率いる下院をチェックすることが主な役割です。その役割を果たすためにも上院議員は選挙で選ばれるべきだとして、2012年にキァメロン政権は上院の公選制を提案しましたが失敗に終わりました。

イギリスの貴族に関しては、下記の記事内の「上流階級」の項目で詳しく解説してありますのでご参照ください。
イギリスの階級制度とは?特徴と違い・新しい7つの階級制度を解説

イギリスの選挙制度の歴史

マグナ=カルタによりイギリス議会の基礎ができる

イギリスの選挙制度は1215年に成立したマグナ=カルタ(大憲章)によって、国王の権利を制限して、貴族が特権を得て、市民や教会の自由を認める都市の都市が認められました。これにより、国王が勝手に税制などを変えることができなくなり、政治的な案件は貴族や僧侶によって構成される議会で討論されるようになりました。この仕組みがイギリス議会の基礎となりました。

上院と下院は1330年代に成立

現在のイギリス議会を構成している上院と下院は1330年代に成立します。当時の議会の上院は貴族と聖職者からなり、下院は騎士や市民代表によって構成されていました。

議会は、下院で話し合われた案件が誓願として上院に上げられて、上院で審議後、国王が決定するという流れがすでにできあがっていました。

イギリスの選挙法は5回も改正された

産業革命により社会が劇的に変化していくものの選挙権は貴族と地主のみという選挙制度だったため、議会が国家機関として成立しなくなってきました。そのため選挙法が徐々に見直されていき、18世紀後半から1928年までに選挙法は5回も変更されました。

1回目の選挙法の改正(1832年)では、選挙権が産業資本家に与えられて、2回目の改正(1867年)では選挙権は都市労働者へと拡大します。3回目の改正(1884年)では、農村の労働者にも選挙権が与えられて、1918年には21歳以上の男性と一部の女性に選挙権が与えられました。最後の改正(1928)で21歳以上の男女に選挙権が与えられました。

女性の選挙権は1918年から認められる

女性の選挙権は1860年頃から哲学者J.S.ミルにより女性の政治への参加が提唱され始めたのですが、実際に選挙権を認められたのは1918年です。この時点では30歳以上の家長である女性だけが選挙に参加できました。

1928年の選挙法改正によって、家長でなくても21歳以上の女性なら選挙に参加できるようになりました。

 
 

2019年の総選挙の結果とEU離脱の影響は?

2019年の総選挙ではEU離脱が争点になった

イギリスの選挙は5年に一度行われるのですが、2019年に議会が解散したため2017年に行われた選挙から5年を待たずに2019年12月に総選挙がありました。

この総選挙での争点は党や議員内でも意見が分かれているイギリスEU離脱(ブレグジット)の問題でした。

イギリスはEUメンバーである他国からの干渉を逃れて独立したいという気持ちが強く、またEU参加国内での経済格差が大きいため補助金などの支出による負担も大きいこと、移民に対応しきれない現状などを理由にイギリスではブレグジット案が進められてきました。

ブレグジットを推し進める保守党が勝利

選挙の結果、与党である保守党47議席増やして下院の過半数を獲得し勝利しました。ブレグジットを推し進めたいボリス・ジョンソン首相が後押しされた形となります。

期限内のEU離脱交渉は難航を極める

納得のいく条件でブレグジットをしたいイギリスですが、実際にはEUとの離脱交渉は難航しています。

ブレグジットの移行期間は2020年12月31日を最終日としていますが、12月13日の通商交渉では最終合意を得られませんでした。このままEUとの協定が成立しなければ、イギリスはWHOのルールに則った貿易を始まることになります。すると、関税が復活してイギリス国民の生活に影響が出てくると言われています。また漁業権なども課題となっていて、イギリスのEUとの離脱交渉がどのように決着するのかが見通せない状況です。

まとめ

イギリスでは下院議員の選出のため選挙が行われます。5年に1度行われ、議会が解散すれば5年を待たずに選挙が行われます。長い歴史を誇るイギリス議会も、一代貴族で大半を占めている上院が機能しているとは言い難く、改革を求める声が上がるのですが実現には至らないというのが現状のようです。