「陽炎(かげろう)」とは”光が屈折して起こる自然現象”を意味する言葉です。似た現象に「蜃気楼」がありますが、違いが分からないという人もいるでしょう。この記事では「陽炎」の意味や季語としての使い方、類語・言い換えを解説します。くわえて「陽炎」の英語表現も解説しましょう。
「陽炎」の意味とは?
「陽炎」の意味は”光が屈折して起こる現象”
「陽炎」の意味は、“光が屈折し、地面から炎のような揺らめきが立ち上ること”です。春や夏などの日差しが強い日に起こる自然現象で、地面が熱せられることで上昇気流が発生し、景色が歪んで見えるのです。
「陽炎が立つ」や「ゆらめく陽炎」のように使う他、何かが揺らめいている様子を陽炎に例えて「陽炎のように」や「陽炎のごとく」のように使うこともあります。
「陽炎」の読み方は”かげろう・ようえん”
「陽炎」の読み方には“かげろう”や“ようえん”があります。一般的には「かげろう」と読まれますが、「ようえん」も間違いではありません。ただ、「ようえん」と読む場合、仏教の守護神である「摩利支天(まりしてん)」を指すこともあるため、誤解されないようにしましょう。
「陽炎」の由来は”かぎろひ”にある
「陽炎」の由来は”かぎろひ”という言葉にあります。「陽炎」は本来「かぎろひ」として、『万葉集』や『古事記』などで使われていました。
「かぎろ」とは”かぎろふ”という動詞が変形した表現で、「光がほのめく様子」を意味します。「ひ」は”火”を意味しており、「かぎろ」と「ひ」を合わせることで”炎のように揺らめく様子”を意味するようになったのです。「かぎろひ」が変化して、現代の「かげろう」という言葉が使われています。
「陽炎」の使い方と例文とは?
「陽炎」は春の季語として使える
「陽炎」は春を表す季語として使われます。本来は真夏にも見られる自然現象ですが、夏の季語としては使わないため注意しましょう。「陽炎」を使った有名な俳句には、以下のものがあります。
かげろふと 字にかくやうに かげろへる
富安風生
上記は俳人の富安風生(とみやすふうせい)が詠んだ句です。「かげろふ」をあえて平仮名で書くことで、陽炎の景色が揺らめく様子を表現しています。
「陽炎」は駆逐艦の名前としても有名
「陽炎」は駆逐艦の名前としても有名です。陽炎と名が付く駆逐艦は2隻あり、1つは1899年に完成した「東雲型駆逐艦(しののめかたくちくかん)・陽炎」で「初代陽炎」や「陽炎I」と呼ばれます。
もう1つは1939年に完成した「陽炎型駆逐艦1番艦」です。東雲型駆逐艦・陽炎は1924年に廃船の許可が出され、陽炎型駆逐艦1番艦は1943年に沈没が確認されています。
「陽炎」を使った例文
「陽炎」を使った例文をご紹介しましょう。
- 陽炎のように揺らめく穴へ、躊躇することなく入っていった。
- 外は陽炎が立つほどの暑さで、家から出たくなくなった。
- 陽炎の中に、昨日会った少女がたたずんでいた。
「陽炎」の類語と「蜃気楼」との違いとは?
「陽炎」の類語・言い換えは”糸游”
「陽炎」と似た意味をもつ言葉(類語)には“糸游(いとゆう)”が当てはまります。「糸游」とは”陽炎”の別表現で、主に俳句の世界で使われる表現です。漢語の「游糸(ゆうし)」に影響されて出来た言葉で、「游糸」は昆虫の「クモ」を表します。
クモの糸が光を浴びてゆらゆらと輝いてみえることから、「陽炎」という意味を含むようになりました。
「陽炎」と「蜃気楼」の違いは何が見えるか
「陽炎」と似た自然現象に「蜃気楼(しんきろう)」があります。「蜃気楼」とは”光の異常屈折によって物が浮いて見えたり、反転して見えたり、遠くにあるはずの物が見えたりする現象”を意味する言葉です。
光の屈折による自然現象という点で「陽炎」と「蜃気楼」は共通しています。しかし、「陽炎」は景色がゆれて見えるのに対し、「蜃気楼」は本来そこにはない物が見えたり、景色が反転して見えたりする現象を指します。なにがどう見えるのかによって「陽炎」と「蜃気楼」を使い分けましょう。
「陽炎」の英語表現とは?
「陽炎」は英語で”Heat haze”
「陽炎」の英語表現には“Heat haze”が当てはまります。「Heat haze」は”陽炎”を意味する表現で、「Heat」が”熱”を、「Haze」が”もや”を意味しています。「The heat haze(陽炎)」や「Like a heat haze(陽炎のように)」のように使いましょう。
「陽炎」の英語を使った例文
「陽炎」の英語を使った例文をご紹介しましょう。
It was flickering like a heat haze.
意味:陽炎のように揺らめいていた。
まとめ
「陽炎」とは自然現象の1つで”屈折した光により、景色が炎のように揺らめいて見えること”を意味します。似た現象に「蜃気楼」がありますが、「蜃気楼」は”そこにない物が見えたり、景色が反転して見えたりする現象”を意味するため、使い分けが必要です。
春の季語として使われる「陽炎」ですが、実際には夏の暑い日に起こることが多いため、夏の季語と勘違いしないようにしましょう。
陽炎…景色が炎のように揺らめくこと。
蜃気楼…物が浮いて見えたり、景色が反転して見えたり、遠くにあるはずの物が見えたりすること。