「生活保護」を受ける条件と「収入」との関係は?ポイントを解説

生活に困窮したとき、一時的な救済として利用することもできる「生活保護」。しかし収入があると保護を受けられないと考えて相談を躊躇するケースもあるようです。この記事では、生活保護を受ける条件と収入の関係について解説します。

「生活保護」を受ける条件と「収入」との関係は?

「生活保護」を受ける条件に「収入がないこと」という規定はない

「生活保護」を受ける条件について、いくつかある誤った認識の中でも、働いていて収入がある人は生活保護を受けられないというのは誤りです。

収入があっても生活に困窮しており、その収入が一定の基準以下であれば、生活保護を受給することができます。つまり、生活保護の受給要件としては、収入があるかないか、ではなく、収入がある場合は基準以下であるかが判断の基準となるということです。

一定の条件をクリアして保護が認められた場合、収入の額を差し引いた保護額が支給されます。

「最低生活費」から「世帯全員の収入の合計金額」を引いた額が支給される

生活保護は、世帯を単位として考えます。そのため、世帯を構成する人全員の収入の合計金額を差し引いた「最低生活費」が支給されます。「最低生活費」については次の章でくわしく説明します。

「収入」には給料のほかに仕送りや贈与などあらゆるものが含まれる

収入には、働いて得た給料のほかにも、年金や他の法律で支給される手当や、親族などからの仕送り・贈与、また資産から得られる収入など、あらゆるものが含まれます。

さらには、預貯金がある場合は解約し、土地等の資産がある場合は売却して生活費に充てることが求められます。資産の活用は保護の前提となります。また、他の法律で給付を受けることができる手当がある場合はそちらの給付による収入が優先されます。

これらを対処したうえでもなお収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されることになります。

「最低生活費」とは何?

「最低生活費」とは最低限度の生活を営むことができる生活費のこと

生活保護の基準となる「最低生活費」とは、日本国憲法第25条の理念およびそれを具現化した生活保護法に基づき、厚生労働大臣が定める計算方法によって算出される生活費のことです。

「最低生活費」の基準は、最低限度の生活を維持するために必要十分でかつ最小限の生活費です。家族構成や年齢、地域によって設定された計算式によって計算されるもので、そのときの国民の生活水準に合わせて改定が行われています。

日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

生活保護法第3条(最低生活)
この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

「最低生活費」は年齢や世帯構成、居住する地域によって変動する

「最低生活費」は、世帯を基準に算出します。その世帯の人の年齢や性別、居住する地域などによって計算式が異なり、世帯の事情に応じた額が算出されます。

そのため、収入のある世帯は、同じ世帯の人の全ての収入を合わせた額がその世帯の最低生活費に満たないことが生活保護受給の要件となります。

参考までに、令和元年における夫婦2人と子ども1人の3人世帯の扶助額は、東京都で約16万円、地方部で約13万5千円です。夫婦合計の収入がこれらの金額から差し引かれた額が支給されます。

「収入」を届けずに生活保護を受給するとどうなる?

「不正受給」となり罰則を受けることもある

生活保護の申請を行うときは勿論ですが、生活保護を受給している間も、世帯の収入を正しく届け出る必要があります。世帯の収入について正しく届け出なかった場合は「不正受給」となります。

生活保護費を不正に受け取ることを目的として意図的に正しい届け出をしなかった場合や、保護費の返還に応じない場合などは、告訴されることもあります。告訴された場合は、生活保護法第85条に定める罰則が科される可能性があります。

生活保護法第85条(罰則)
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

まとめ

生活保護は、資産や能力などの全てを活用してもなお生活に困窮する場合に、保護費の支給を受けることができる制度です。その基準は、健康で文化的な最低限度の生活の保障です。

収入があっても、健康で文化的な最低限度の生活を送ることが困難である人は、生活保護を受給する権利を有しています。最低限度の生活費は、年齢や家族構成、住む場所等により変動します。

なお、収入には働いて得た給料のほかに、仕送りや失業保険、年金などの収入も含まれます。あわせて、資産がある場合はそれらを売却して生活費にあてることも求められます。また扶養義務者の扶養が保護に優先されることも保護の条件であるため、援助を受けることができる親族がいる場合は、まず援助や仕送りを受けることが求められます。

このように、「収入」にはさまざまな要件が含まれているため、収入があると保護が受けられないとの誤解が生じると考えられます。