「加給年金」とは?もらえる条件と年金額・申請方法を解説

あまり知られていない年金の加算制度に「加給年金」があります。老齢年金受給開始までにはまだ時間がある人も、その加算の条件が20年以上の被保険者期間であることは知っておいた方がよいかもしれません。この記事では「加入年金」について、もらえる条件やその額などについて解説します。

「加入年金」とはどんな制度?

「加給年金」とは老齢厚生年金に家族手当が加算される制度

「加給年金」とは、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が、65歳になった時点でその人に生計を維持されている配偶者または子どもが一定の条件にある場合に、老齢年金に加算されて支払われる年金のことです。

つまり、「加給年金」とは、加入期間20年の壁を越えた人に、対象となる家族がいる場合に支給される老齢厚生年金の「家族手当」のようなものだといえます。

「加給年金」をもらえる条件:配偶者は65歳未満であること

「加給年金」には「配偶者加給年金」と「子の加給年金」の二つがあります。「加給年金」をもらえる条件となる、配偶者および子どもの要件は下記のとおりです。

加給年金をもらえる配偶者および子の要件

  • 配偶者:65歳未満であること
  • 1人目・2人目の子ども:年齢が18歳到達年度の末日までの間の子
    または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
  • 3人目以降の子ども:18歳到達年度の末日までの間の子
    または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子

加算される「加給年金」の額

条件に一致する家族がいる場合、もらえる加給年金の年額は下記のとおりです。

加給年金の年額

  • 配偶者: 224,900円
  • 1人目・2人目の子ども: 各224,900円
  • 3人目以降の子ども: 各75,000円

上記に加えて「配偶者加給年金」には、特別加算もあります。老齢厚生年金を受けている人(受給権者)の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,200円~166,000円が特別加算されます。

(例)1943(昭和18)年4月2日以降生まれの人の特別加算額は166,000円で、配偶者加給年金+特別加算額は年390,900円(令和2年度)です。

配偶者が65歳になり自分の年金を受給すると終了する

「加給年金」の給付は、配偶者が65歳になり、自分の年金を受給するようになると終了します。年金制度の上で自立するため、家族手当が不要となるという考え方です。

「加給年金」は、配偶者が被保険者よりも年下で、その年齢差の大きいほど長い期間の給付が受けられることになります。

「加給年金」受給者の注意点

「加給年金」は申請しないと給付されない

「加給年金」は、「老齢厚生年金」と同様に請求手続きが必要です。

「老齢厚生年金」は、老齢基礎年金の受給資格があり、かつ厚生年金保険の被保険者期間のある人が65歳から受給できます。しかし年金の受給は自動的に始まるものではなく、自ら請求手続きをする必要があります。年金の申請主義は「加給年金」についても同様です。

具体的には、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」に下記書類を添えて近くの年金事務所に申請します。

  1. 受給権者の戸籍の抄本または、戸籍の謄本(加給年金額の対象者と受給権者との身分関係を明らかにするため)
  2. 加給年金額の対象者が、受給権者によって生計が維持されていることを確認できる書類
    ①世帯全員の住民票
    ②加給年金額の対象者の収入または所得を確認することのできる所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票等のうち、いずれかの書類

被保険者が年金受給を「繰り下げる」とその期間は受け取れない

高齢になっても働く人が増えたことや、年金額を増やす目的などから、近年は年金の受給開始を遅らせる「年金の繰り下げ受給」が注目されるようになりました。

厚生年金の受給を65歳以上に繰り下げると、その期間は加給年金は受け取れないため注意が必要です。また、繰り下げた年金が開始されたとき、加給年金額は増額されません。

年金受給を「繰り上げ」て早めても65歳になるまで加給年金は加算されない

老齢厚生年金の支給開始は65歳からですが、60歳から65歳に達するまでの間に繰り上げて開始することができます。但し、その場合でも加給年金は65歳に達するまでは加算されません。

「厚生年金」の被保険者のみに資格がある

「加給年金」は、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が老齢厚生年金に加算される手当であるため、老齢基礎年金のみの受給資格者には加算されません。つまり、国民年金のみに20年以上加入していたとしても対象となりません。

国民年金保険は、会社員以外の自営業者を対象として設計されたものであることから、会社を定年で退職する会社員が加入する厚生年金保険と違い、定年退職の概念がありません。このことから高齢になったときの家族手当は想定されていないことがその理由です。

「振替加算」とは?

配偶者が65歳を超えて加給年金が停止されたあとに加算される年金のこと

「配偶者加給年金」の対象者となっていた配偶者が65歳になると、加給年金の給付は打ち切られます。このとき、配偶者が老齢基礎年金を受給できる場合には、一定の基準を満たす人に年金額が加算されます。これを「振替加算」といいます。

「振替加算」の対象となる配偶者で、昭和41年4月2日以後生まれの人は対象外です。それ以前に生まれた人について、年齢ごとに加算の額が決められています。ほかにも、配偶者が老齢基礎年金のほかに老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、それらの加入期間があわせて240月未満であることなどの要件があります。

まとめ

「加給年金」は、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が、65歳から受給資格が得られる老齢年金に加算されて支払われる年金のことです。被保険者にに生計を維持されている配偶者または子どもが一定の条件にある場合に支給されます。

加給年金を含めて公的年金を受け取るためには一定の加入期間が求められます。若い世代の人にとっては老齢年金の受給は遠い未来のことだと思われますが、その受給資格を得るためには現役時代の加入期間が問われるため、年金保険についてあらかじめ制度を理解しておくことが重要です。