「ファジー」は過去に「新語・流行語大賞」で金賞を獲得した言葉の一つ。主にあいまいであることを示す時に使われます。ここでは「ファジー」の意味を中心に、使い方と例文の他、ファジー理論やファジー制御、ファジーネーブルについて紹介します。
「ファジー」の意味とは?
「ファジー」の意味は”境界が明確ではないこと”
「ファジー」の意味は、“境界が明確ではないこと、またはその様子”です。物事にはっきりした区分や分け目がなく、ぼやけていることを表しています。つまり「ファジー」は”それくらい・そういった程度”というニュアンスがあります。
もともと「ファジー」とは、英語の「fuzzy」をカタカナ語にしたもので「けばだった・綿毛上の」という意味があります。綿毛は軟らかくフワッとしているため、輪郭がはっきりせずあいまいであるのが特徴です。
そういった背景から「ファジー」は”思考や音などが不明瞭・不鮮明である”ことも意味します。
「ファジー」には”柔軟性がある”という意味も
「ファジー」は”柔軟性がある”という意味も持ち併せています。
「ファジー」は”境界線がなく、不明確なこと”を意味する言葉です。しかし、逆を言えば程度や範囲が決まっていないということ、つまり、状況がフレキシブルであるという意味でもあります。
「ファジー」は状況をはじめ、考え方や人への対応などに対して「柔軟性がある」という「良い意味」でも使われています。
「ファジー」は平成2年の流行語大賞を獲得
「ファジー」とは、型にはまらず、カチカチとせず、どちらかといえば「適当な感覚」のあるニュアンスを持つ言葉です。
平成2年(1990年)に流行語大賞に輝いた「ファジー」は、日本人の性質的なものを軸に、当時の人々のライフスタイルや思考のあり方、服装や髪型など、生き方そのものをを反映した言葉でもありました。そのため、若年層には耳に新しく、逆に熟年層にとっては死語として映る場合も多いでしょう。
「適当な感じが素敵」「あいまいさがカッコいい」、そういった社会性をズバリ表現したカタカナ語として「ファジー」という言葉がもてはやされたのです。
一方で「柔軟性がある」という意味では、インテリジェント機能を取り入れた「ファジー炊飯器」「ファジーエアコン」などの「ファジー〇〇」といった商品が、この頃多く開発されています。
「ファジー」の使い方と例文とは?
「ファジー」は良い意味でも悪い意味でもある
「ファジー」とは、基本的に”あいまいであること・柔軟性のあること”という意味を持つ言葉です。そのため、使い方によっては良い意味ともなれば、皮肉めいた悪い意味ともなります。
たとえば、上司から難しい客に対して「ファジにー対応してくれてありがとう」と言われたら、それは「柔軟に対応してくれてありがとう」という意味です。しかし「この報告書はファジーだね」と言われたら、それは「この報告書は適当だね」という意味となります。
このように「ファジー」は、使う相手や状況によってニュアンスががらりと変わります。うっかり相手に誤解を与えることのないように、使い方には気を付けましょう。
「ファジー」を使った例文
「ファジー」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 仕事のミーティングで意見を求めたが、どれもファジーなアイデアばかりだった。
- 職場ではいつも真剣だから、せめてプライベートの時だけはファジーな感じで行きたいね。
- ファジーな性格が功を為したのか、営業でトップの座を射止めた。
- このセーターはふわっとしていて、ファジーなので着心地がいい。
- 彼女に告白をしたが、答えがファジーなためどうしていいかわからない。
- ビジネスを上手くやっていくには、ちょっとくらいファジーなところがあった方がいい。
「ファジー制御」とは?
「ファジー制御」とは”曖昧な感覚を実現するもの”
「ファジー制御」とは、主に電気製品に使われる”曖昧な感覚を実現する制御機能”のことを意味します。別の呼び方で「ファジーコントロール(fuzzy control)」といいます。
「ファジー制御」は、人間のあいまい感覚や適度なあんばいを実現させたコントロール機能のことです。従来の電気製品は「Yes」か「No」、「On」か「Off」などのどちらかにしか対応できませんでした。しかし、「ファジー制御」を用いた製品は、厳密な数値や計算式を用いて制御せず、柔軟な判断をもって機械をコントロールすることができます。
「ファジー制御」の例
たとえば、ファジー制御のついたエアコンなら、温度設定に「少し高め・少し低め」といった人間の感覚的な項目が追加されています。よりきめ細かな設定を設けることで使いやすさが増し、より優しい使い心地を実現することができます。
「ファジー理論」とは?
「ファジー理論」とは確立変数を用いた数学理論
「ファジー理論」とは”あいまい理論”のことで、人の言語や推論に存在する「あいまいな性質」「特有の感性や考え方」を確率変数として用いる数学理論の一つとなります。もちろん、前述した「ファジー制御」は「ファジー理論(fuzzy theory)」を基本としています。
「ファジー理論」はAIの開発に不可欠
「ファジー理論」とは”不確実性”や”真実性”に関する論理のことで、言ってみれば、広い値を受け入れる「多値論理」でもあります。そのため、人工知能(AI)の開発には欠かせない理論の一つともなっています。
「ファジー理論」が軸とする「人間のような思考」が組み込むことで、純粋に「正解」「不正解」ではないケースにも対応することができるようになります。
ファジーネーブルとは?
ファジーネーブルはリキュールベースのカクテル
ファジーネーブルとは「リキュールベースのカクテル」です。主な材料はピーチツリーなどの「ピーチ・リキュール」と「オレンジジュース」で、ショートドリンク、またはロングドリンクとしても人気があります。
由来は「桃味なのかオレンジ味なのか曖昧」
ファジーネーブルは、基本的に「桃」と「オレンジ」の2種類の味が楽しめるのが特徴です。桃の甘さとオレンジの酸味が微妙にマッチした味わいが魅力ですが、「一体、桃味なのか、オレンジ味なのかが曖昧でわからない」と言われています。
つまり、ファジーネーブルは「桃なのか、オレンジなのかが明確ではない」ということから名づけられたカクテルとなります。この曖昧さが人気の秘密なのかもしれません。
まとめ
「ファジー」とは英語の「fuzzy」のことで「境界線のなくあいまいなこと・柔軟性があること」を意味する言葉です。現代で「ファジー」と言えば「ファジー制御」を指す場合が多いですが、これは「ファジー理論」が基礎となっています。
また「ファジー」という表現は良い意味で使われることもありますが、やや皮肉を含む悪い意味でも使われることがあります。相手や状況によって言葉のニュアンスが変わってくることがあるため、使い方には気を付けるようにしましょう。