「初心忘れるべからず」の意味や使い方は?類語との違いや英語も

「初心忘れるべからず」は、スピーチやビジネスシーンでの注意喚起などでも使われることわざです。由来は世阿弥が記した書物「花鏡」の一節であり、もともとは漢文で「初心不可忘」と記されていました。

この記事は「初心忘れるべからず」の意味や読み方についての解説です。類語や英語表現についても紹介します。

「初心忘れるべからず」の意味や読み方は?

本来の意味は「最初の未熟さを忘れてはならない」

「初心忘れるべからず(しょしんわすれるべからず)」とは、「物事を始めたころの謙虚で真剣な気持ちを忘れてはならない」という意味の言葉。「初心」とは「最初のころの純粋な気持ち」や「習い事や芸事を始めたころの未熟さ」などを意味します。

本来は、習い事や芸事などを始めたころの未熟さを忘れずに精進していかねばならないという意味の言葉です。しかし現在は一般的に、何事も始めたころの純粋で謙虚な気持ちを忘れず持ち続けようという意味でも使われています。

由来は世阿弥が能楽の修行について語った漢文

「初心忘れるべからず」という言葉は、世阿弥(ぜあみ)が能楽の修行について語った言葉を語源としています。世阿弥は室町時代の能役者。父である観阿弥(かんあみ)とともに、能を大成させた人物です。

世阿弥が書き記した書物「花鏡(かきょう)」の一節に、「当流に万納一徳の一句あり。初心忘るべからず。」と書かれており、「初心忘れるべからず」の由来となっています。

「初心忘るべからず」が正しいことわざ表記

「初心忘れるべからず」ということわざは、もともとは漢文で「初心不可忘」と記されています。そのため「初心忘るべからず(しょしんわするべからず)」が正しい表記とされています。しかし現代では、パソコンなどの漢字変換で「忘る」が出てこないこともあり、「初心忘れるべからず」も広く浸透して使われています。

ビジネスでの「初心忘れるべからず」の使い方と例文

仕事に慣れたころに注意を促す言葉

「初心忘れるべからず」は、仕事や作業に慣れたころに、ミスや失敗のないよう注意を促すときに使う言葉です。

何事も最初のころは謙虚で純粋な気持ちで取り組みますが、同じ仕事や作業を繰り返して慣れてくると気が緩んでくるもの。気が緩むとミスや失敗が起きやすくなります。「初心忘れるべからず」は、「慣れた作業でも慢心せず、最初のころの謙虚で純粋な気持ちや緊張感を持って行いましょう」と注意を促すときに使います。

新しい仕事に対する心構えの言葉

「初心忘れるべからず」という言葉は、新しいことに取り組むときの心構えとしても使えます。

どんなことでも、最初に始めるときは未熟でうまくできないものです。しかし、その時期を過ぎてうまくできるようになったとしても、最初の未熟な自分を忘れないで精進していこうという意味で使います。「初心忘れるべからずの精神で取り組みます」などと使い、新しい仕事に対する心構えを表します。

スピーチや挨拶で使う激励の言葉

「初心忘れるべからず」は、スピーチや挨拶などでも良く使われる言葉です。

最初のやる気に満ちていた気持ちを忘れずに頑張りましょうという意味で「初心忘れるべからずで、今後も頑張りましょう」などと使います。上司や先輩から、後輩に向けて使うことが多く、激励や注意喚起といった意味も含んだ表現です。

座右の銘として使う

「初心忘れるべからず」という言葉は、「座右の銘(ざゆうのめい)」として使っている人も多くいます。座右の銘とは、自分が大切にしている戒めの言葉です。

座右の銘として「初心忘れるべからず」を使う場合、「何事も最初の気持ちを忘れずに頑張ります」という意気込みを表します。就活の面接で座右の銘を聞かれたときに使うにも適したことわざでしょう。

「初心忘れるべからず」を使った例文

  • 新しい会社には慣れましたが、初心忘れるべからずの気持ちで取り組んでいます。
  • 新入社員たちの熱意がすごいので、初心忘れるべからずで私も頑張ります。
  • 何事も慣れたころにミスが出やすくなるので、初心忘れるべからずの精神で作業にあたってください。

「初心忘れるべからず」の類語とは?

「原点回帰」は「物事の最初に戻ること」

「原点回帰(げんてんかいき)」とは、物事の最初や出発点に戻ること。「原点」は「物事の基準になる点」や「基本の点」という意味で、「回帰」は「元に戻る」や「同じ状態にもどる」という意味です。

物事が進んでいるときに、元に戻って考えなおしたり基本に戻ってやり直したりするという意味で「原点回帰しましょう」と使います。

最初のころの気持ちを忘れてはならないという「初心忘れるべからず」に対し、「原点回帰」は最初の気持ちや考えに戻ってやり直そうという意味です。

「初志貫徹」は「最初の目標を最後までやり通すこと」

「初志貫徹(しょしかんてつ)」とは、最初に決めた目標や願いを最後までやり通すこと。「初志」は「最初の志」や「初めに考えた目標」という意味で、「貫徹」は「最後までやりとおす」や「考えを続けること」という意味です。最初に掲げた目標や考えを最後までやり通すという意味で「初志貫徹でやり抜きます」などと使います。

「初心忘れるべからず」は最初の頃の気持ちを忘れてはならないというニュアンスですが、「初志貫徹」は最初に考えた目標や志を最後までやり通すというニュアンスです。

「初心忘れるべからず」の英語表現は?

英語では「Don’t forget your first resolution」

「初心忘れるべからず」の英語表現には「Don’t forget your first resolution」という英語のことわざが適しています。「resolution」には「決断」や「覚悟」といった意味があり、「最初に決めたことを忘れてはならない」というニュアンスのフレーズです。

まとめ

「初心忘れるべからず」は、「物事を始めたころの謙虚で真剣な気持ちを忘れてはならない」という意味の言葉。仕事に対する意気込みや心構えを表現したり、座右の銘として心にとどめるにも適したことわざです。

正しくは「初心忘るべからず」ですが、パソコンなどでの「忘る」の変換が難しいこともあり、現代では「初心忘れるべからず」も広く浸透して使われています。