「本当に綺麗ですね」という意味で放った「馬子にも衣装」が、思わぬトラブルのもとなったことはありませんか?それは「馬子にも衣装」を使う状況と相手を間違ってしまったことが原因かもしれません。
ここでは「馬子にも衣装」に注目し、意味と由来、正しい使い方と例文、類語と反対語、英語と中国語での表現をまとめて解説しています。どうぞ、使い方の注意点も参考にしてみて下さい。
「馬子にも衣装」の意味と由来・正しいイントネーション
まず「馬子にも衣装」の本来の意味と言葉の由来を紹介します。
意味は「身なりを整えれば良く見える」
「馬子にも衣装」の意味は、「身なりを整えれば良く見える」です。「誰でも素敵な衣装を着れば、立派に見える」ということを例えたことわざです。
外見的な判断を軸としたことわざの一つになりますが、「清潔な身なりを心がけることの大切さ」と「見かけで容易に印象が変ってしまう」ことのたとえとしても使われています。
由来は「馬子が羽織袴で様変わりした話」
「馬子にも衣装」は、かつて駄馬に引く職業「馬子」が羽織袴を身に着けた時、とても立派に見えたことが由来となっています。
「馬子」は駄馬に人や荷物を乗せることで賃金を得る「身分の低い」職業の一つで、身なりは決して良いとは言えないものでした。その馬子が美しい羽織袴を着ると、たいそう立派に見えたことから「馬子にも衣装」が誕生したと言われています。
当時、馬子の多くは農民が勤めましたが、鎌倉時代以降は交通の脚としての馬子(馬借=ばしゃく)も現れ、年貢や品物の運搬にあたっていました。馬子は「馬追い」「馬方」とも呼ばれています。
「馬子にも衣装」の正しいイントネーション
「馬子にも衣装」を「孫にも衣装」と思い違いをしてしまうことがありますが、それは「馬子」と「孫」のイントネーションを同じだと解釈している場合だと推測できます。
現代では「馬子」と「孫」のイントネーションは同じ場合がほとんどですが、古くは「馬子」のアクセントは「ま」に置いていたと言われることから、本来的には「ま」にアクセントを置くのがもっともな考え方でしょう。
また、「孫」との違いを強調するためにも「ま」にアクセントを置いた方が良いとも捉えることができます。
「柿とカキ」「雨とアメ」などのように、同音異字でアクセントの異なる言葉は多く存在しまが、地方によってイントネーションが変わることを考えると「馬子」「孫」についても、一つの正式な答えを出すのは難しいかもしれません。
「馬子にも衣装」の使い方の注意点(例文つき)
続いて「馬子にも衣装」の正しい使い方と気を付ける点を、例文とあわせて挙げてみましょう。日常的によく用いられるからこそ、正しい使い方を理解する必要があります。
誉め言葉としては不適切
「馬子にも衣装」は一見にして「誉め言葉」のように受け止めることができますが、使う時は適切な状況と相手を選ぶことが大切です。
「馬子にも衣装」は、どのような人であっても着飾って身なりを美しくすれば立派に見えるという意味がありますが、この言葉を使う時は「気心の知れた仲間や家族」などに対し「冗談」として放つことを確認して下さい。
たとえば、社長のご子孫に対し「今日は一段と輝いていらっしゃいます。馬子にも衣装で本当にうっとりするようです。」は間違った使い方です。言葉のニュアンスからも理解できる通り、これでは相手に対して誠に「失礼」であり、「いつもはたいしたことはないが、着るもので随分変わるものだ」と不快な感情を招くのは否めません。
正しい使い方の例文
「馬子にも衣装」を使った例文をご紹介しましょう。
- 「馬子にも衣装」で母のスーツ姿は割ときまっていると思う。
- 久しぶりにデートに出かける同僚のNは「馬子にも衣裳」でなかなかカッコよく見える。
- 泣き虫の妹が卒業式でドレスを身に着けた。「馬子にも衣裳」だと涙が出た。
- 親戚が集まる正月は着物を着てもいいんじゃない?「馬子にも衣装」と言うからね。
- 「馬子にも衣装」と言うけれど、お見合いの場で大切なのはやっぱり中身でしょう?
「馬子にも衣装」の類語と反対語は?
それでは「馬子にも衣装」の類語や反対語についても確認していきましょう。
類語は「鬼瓦に化粧」
「馬子にも衣装」には「鬼瓦に衣装」「猿にも衣装」「切り株にも衣装」「姿は作り物」などがあります。どの類語も「見なりに手をかければ、立派に見える」ことをたとえることわざとなっています。
反対語は「公卿にも襤褸」
一方、反対語には「公卿にも襤褸(くげにもつづれ)」「君飾らざれば臣敬わず」「衣ばかりで和尚はできぬ」などが挙げられます。「公卿にも襤褸」は「いくら高貴な人でも、つぎはぎだらけの破れた衣(襤褸)を身に着けていれば下品に見える」という意味です。
「馬子にも衣裳」の外国語表現とは?
最後に「馬子にも衣装」の英語と中国語での表現を紹介します。国際関係を良好に保つためにも、正しい使い方を心がけましょう。
英語では「Fine clothes make the man」
「馬子にも衣装」を英語で表現すると「Fine clothes make the man=素敵な衣服がその人を作り上げる)」になります。「外見から良くすることで、中身も自然と出来上がる」という意味の言い回しですが、「綺麗な衣服を着ることで、中身も相応しい人間になろう」と努力する人間の心理を説く表現となっています。
中国語では「人是衣裳马是鞍」
お隣の中国で「馬子にも衣装」は「人是衣裳马是鞍=rén shì yī shang mǎ shì ān」です。日本と同じ意味と使い方をします。
まとめ
「馬子にも衣装」は「どのような人でも見事な衣装を身にまとえば、立派にみえるものだ」という意味を持つことわざです。使い方や相手を間違えると「失礼」にあたることがあるため、とくに職場では気を付けるようにしましょう。
しかし、使い方さえ気を付ければ、楽しい会話のきっかけになるのも「馬子にも衣装」です。ぜひ、気心の知れた友達や家族の間でジョークとして取り入れてみて下さい。