リスクマネジメントとは?意味や危機管理との違いも【事例付き】

近年、企業を取り巻く環境が大きく変化し、リスクマネジメントの重要性は年々高まりをみせています。しかし「リスクマネジメント」の意味を正しく説明できるか、となると心もとない人もいるのではないでしょうか。

これからの時代、必須となるリスクマネジメントの意味と定義について紹介しますので、参考にしてください。

「リスクマネジメント」とは?意味とその背景

意味は「リスクを事前に管理し、不利益を最小限におさえる」

「リスクマネジメント」の意味は、「想定されるリスクを事前に管理し、不利益を最小限におさえる」です。経営管理手法のことで、英語では「risk management」と書きます。

「リスクマネジメント」の背景

20世紀初頭、世界的規模の不況が起こり、アメリカでコストの見直しに迫られた際に保険業界に問題が多く指摘され、保険管理体制の見直しを迫られたことが発端とされています。

20世紀中盤には、保険管理からリスクマネジメントに移行され、リスクに対するマネジメントの包括的な考え方が整備されました。

近年日本においても、企業活動の国際化や市場環境の変化などにより、リスクマネジメント体制の構築が求められる状況となっています。

「リスクマネジメント」における「リスク」とは?

「リスク」の意味は「危険度」

「リスク」の意味を確認しておきましょう。「リスク」は「危険度」「予測どおりにいかない可能性」と訳されることが多いのですが、「リスクマネジメント」における「リスク」は「組織に影響を与える不確実性」と一般的に考えられています。

また、「リスク」を「危機」の意味と同じとすることがありますが、「危機」とは「悪い結果が予測される危険な状況」のことをいいます。「リスク」は「危機」が起きる前の状態のことをいうため、両者の意味は異なります。

リスクの種類

それではそもそもその「リスク」にはどのようなものがあるのかということですが、リスクは大きく2つに分類されます。損失のみを受けて利益は得られないマイナス要因のみのリスクと、損失を受けることもあれば、利益を得ることもある、マイナスとプラス両要因となるリスクです。

リスクの種類① マイナスのみのリスク

マイナスのみのリスクとは、火災や自然災害のような偶発的事故や人為的ミスを起因とするリスクで、具体的には財産や利益そして損害賠償のリスクなどがあります。

リスクの種類① マイナスとプラスのリスク

マイナスとプラスのリスクとは、政治情勢や経済情勢の変動による経営環境の変化に伴うリスクのことです。

「リスクマネジメント」と「危機管理」の違いとは?

「リスクマネジメント」は「危機管理」であると語られることがあります。しかし「危機管理」は英語で「Crisis Management(クライシスマネジメント)」と書き、両者の概念は異なります。

「クライシスマネジメント」と「リスクマネジメント」の違い

「クライシスマネジメント」の定義は、「危機(クライシス)」が発生したあとの対処のことをいいます。それに対し「リスクマネジメント」は「危機が発生する前にそのリスクの管理を行うこと」をいいます。

そのため、「クライシスマネジメント」と「リスクマネジメント」の定義は異なるのですが、「クライシスマネジメント」と同じ意味である日本語の「危機管理」という時は、意味合いが異なって用いられているようです。

クライシスマネジメントとリスクマネジメントの総称が危機管理

日本語で「危機管理」という時は、「クライシスマネジメント」と「リスクマネジメント」の2つのプロセスをあわせた管理の概念として一般的に使われます。

つまり、危機が発生する前のリスクマネジメントと、危機が発生したあとのクライシスマネジメントの両者をあわせて「危機管理」であるとして、一般的に認識されています。

「リスクマネジメント手法」とは?

リスクマネジメント手法におけるプロセス

近年、リスクマネジメントプロセスの整備が進み、手法が明示されるとともに、企業の業種や特性により、さまざまに異なるリスクの要因に特化して高いレベルのマネジメントを行う企業が増えています。リスクマネジメントのプロセスは一般的に次の通りです。

  1. 把握する ⇒ 情報を集めリスクを発見する
  2. 分析する ⇒リスクのレベルを分析する
  3. 評価する ⇒リスク対応の優先度を決定する
  4. 対処する ⇒対策を立案する
  5. 実行する ⇒対策を実行する
  6. 再評価する

「リスクアセスメント」は「リスクマネジメント」の一部

上述したリスクマネジメントプロセスのうち、リスクを特定、分析、評価する1.~3.までのプロセスのことを「リスクアセスメント」といいます。「アセスメント」とは事前に予測することや評価することという意味です。

リスクマネジメントの事例

2005年に施行された個人情報保護法にのっとり、情報セキュリティーの構築や社員研修の徹底が企業で行われています。これは法令遵守とともに、損害賠償リスクへのリスクマネジメントの事例です。

そして、火災や地震などに伴う財産の損壊に対して事前に損害保険をかけることは財産リスクのリスクマネジメントです。

看護・介護におけるリスクマネジメントは、そのリスクが生命や健康にかかわるものであるため、とりわけ重要なものとなっています。具体的には、医療過誤や事故防止、院内感染の防止のための対応などがあります。

「リスクマネジメント」に関連した資格とは?

「リスクマネージャー」という資格がある

リスクマネジメントを専門とする「リスクマネージャー」という資格があります。リスクマネージャーは欧米ではその地位が確立された専門職ですが、日本においては公的な資格の発行はされていません。

日本ではいくつかの民間団体がリスクマネージャーの民間資格を認定しています。その他、リスク診断士や、業界に特化した「介護老人保健施設リスクマネジャー」など、さまざまな民間資格があります。

まとめ

リスクマネジメントとは、「想定されるリスクを事前に管理し、リスクの発生による損失を回避し、不利益を最小限におさえる」経営管理手法のことです。

リスクを事前に管理するためには、まずリスクを発見し、認識することから始まります。リスクマネジメントのプロセスは、個人が仕事を行う上でも、大切な行動指標であるともいえるでしょう。

ぜひ、日々の仕事にリスクマネジメントの視点を取り入れてみてください。