「吝嗇」の意味と語源とは?読み方や使い方の例文・類語や対義語も

「吝嗇」という言葉を知っていますか?読み方はもちろん、意味や言葉の使い方についてもよくわらないという人もいると思います。「吝嗇」は「吝嗇家」という表現で使われることが多いですが、どういった人を指すのでしょうか?ここでは「吝嗇」の意味や語源の他、類語と対義語、また英語表現などについてご紹介します。

「吝嗇」の意味とは?

「吝嗇」の意味①度を越して金品を惜しむこと

「吝嗇」の意味は、“度を越して金銭やモノを惜しむこと”です。また、そういう性格や人のことを意味します。つまり、むやみに金品に執着し、必要以上に金遣いを渋ること、また、金銭やモノに対してしみったれていることを指す言葉です。

例文
結婚してから、妻が吝嗇な性格になってしまった。

「吝嗇」の意味②気持ちが卑しく心が狭いこと

「吝嗇」には金銭やモノに対してケチであること、またそのような人を表す言葉ですが、転じて“心が狭く気持ちや考えが卑しい、またはそういう人”という意味でも使われます。

もっとも、必要以上に金品を惜しみ物事をケチるというのは、「心が狭く思考がさもしい」からだとも言えるでしょう。

例文
吝嗇な人なのか、いつも考えが下劣で乏しい。

「吝嗇」には粗末で価値がないという意味も

「吝嗇」には”粗末で価値がない”という意味もあります。たとえば、景品や参加賞などが粗末である、もらっても価値や意味がないという時などに使われます。つまり「吝嗇な粗品」とは、取るに足らないケチな粗品という意味です。

例文
期待してたのに、想像以上に吝嗇な景品だった。

「吝嗇」の読み方と語源とは?

「吝嗇」の読み方は”りんしょく”

「吝嗇」の読み方は“りんしょく”です。しかし、小説やシナリオなどの文学的な題材においては、「けち」を”吝嗇”の文字に当てて読むことがあります。もともと「吝嗇」の意味が”ケチ”であるため、当て字として使われているケースです。

その他、「けち」を婉曲的に示す”しみったれ”という読み方を当てる場合もあります。このように、「吝嗇」はそれぞれの文学が持つ作風や特徴に合わせて、当て字の読み方も変わってきます。

「吝嗇」の語源はケチを意味する二つの漢字

「吝嗇」の語源は、”吝”と”嗇”という言葉がそれぞれに持つ意味にあります。「吝嗇」の「吝」は”ケチ”、「嗇」は”モノを惜しむこと”を表しています。そして、この二つの言葉を重ねることで、意味を更に強調しています。

「吝嗇」は単にモノを惜しむのではなく、”むやみに、度を越えて金品を惜しむ”という意味を持つのがポイントです。

「吝嗇家」の意味とは?

「吝嗇家」の意味は”ケチな性格・ケチな人”

「吝嗇家(りんしょくか)」とは、簡単に言うと”ケチな性格・ケチな人”のことを意味します。金銭やモノに必要以上に執着し、何でもケチるような人のことを「吝嗇家」と呼びます。

つまり、「吝嗇家」は度が過ぎるほど金銭にこだわったり、むやみに物惜しみをする人を指します。

「吝嗇家」と「倹約家・節約家」の違い

「吝嗇家」と似たような表現に「倹約家・節約家」があります。しかし、それぞれ異なる意味があるため、使い方には注意する必要があります。

まず「吝嗇家」は”金品をむやみに惜しみ、心が狭く気持ちが卑しい人”という意味があり、度が過ぎるほど金銭やモノに執着する様子を表します。つまり、相手を貶すようなネガティブな意味合いで使われます。

一方「倹約家」や「節約家」は”賢く無駄を省いて、無理なく費用を切り詰める”といったようなニュアンスがあります。こちらは肯定的な意味があり、場合によっては相手を称賛する意図で使われることもあります。

「吝嗇家」は相手を貶す意図がありますが、逆に「倹約家」や「節約家」は良い意味があります。後者は相手を褒める意図があることを理解しておきましょう。

「吝嗇家」と「倹約家・節約家」を使った比較例文

「吝嗇家」と「倹約家・節約家」を使った比較例文をご紹介しましょう。

  • 部長は経費をケチり過ぎである。まさに吝嗇家と言えよう。(貶す意味)
  • 電気を小まめに消し、水の流しっぱなしはしない。さすが倹約家だね。(良い意味)
  • 節約家で知られる彼は、外食は月に一度だけと決めている。(褒めている)

「吝嗇」の類語と例文とは?

「吝嗇」の類語は”守銭奴・握り屋・一文惜しみ”

「吝嗇」の類語は“守銭奴(しゅせんど)・握り屋(にぎりや)・一文惜しみ(いちもんおしみ)”などがあります。

「守銭奴」は”貯金が生きがいで、むやみにお金に執着をしている人”を意味します。読んで字のごとく「銭を守る奴=一銭たりとも使わない人」を表し、「お金にケチな人」を指す言葉となります。

また「握り屋」は”お金を貯めるばかりで使わない人”、「一文惜しみ」は”ほんのわずかなお金を使うのも惜しむケチな人”となります。

どの類語も良い意味で使われることはほとんどありません。むしろ悪口の類として用いられるため、使う相手や状況には気を付けましょう。

「吝嗇」の類語を使った比較例文

「吝嗇」の類語を使った比較例文をご紹介しましょう。

  • 社長は金にシビアで吝嗇である。
  • 社長は金にシビアで守銭奴である。
  • 社長は金にシビアで握り屋である。
  • 社長は金にシビアで一文惜しみである。

「吝嗇」の対義語と例文とは?

「吝嗇」の対義語は”浪費”

「吝嗇」の対義語は”浪費(ろうひ)”です。つまり「吝嗇家」と「浪費家」はお互いに対になる言葉となります。

「浪費」は”お金をやたらに使うこと・無駄に費やすこと”を意味し、金銭のみならず、時間や資源、また精力や電力などのパワーを無駄に使うことを表す言葉です。

その他、浪費に近い言葉に「濫費(らんぴ)」がありますが、こちらは、何も考えず激しく費やすことを意味します。そのため、浪費よりもさらに度を増したニュアンスがあります。

対義語の例文
  • 今月は電気を浪費し過ぎた。
  • 経費での濫費が目立つ。

「吝嗇」その他の対義的な表現”太っ腹・気前が良い”

「吝嗇」と反対のニュアンスを持つ表現に”太っ腹”や”気前が良い”があります。

「太っ腹」とは心の器が広く度量の大きなこと、また人の言動や考えなどを広く受け入れる心を意味します。物事に動ぜず、大胆であることから、金銭を出し惜しみしない人を表す時にも使われます。

また「気前が良い」は、金品を出し惜しみをしないこと、またケチケチしない人のことを指します。金銭や物事に対して渋ることがなく、あと腐れのない様子を表す時に使われます。

対義語の例文
  • 太っ腹な上司は部下のミスを笑って許した。
  • 今日は彼女の誕生日だから、気前よくお金を使った。

「吝嗇」の英語表現とは?

「吝嗇」は英語で”miser”や”stingy”

「吝嗇」は英語で“miser(マイザー)”“singy(スティンジ)”を使います。「miser」はお金を使いたがらず守銭奴なさま、つまり「けちん坊」を意味します。

また、「stingy」は口語でよく使われるフレーズです。「miser」と同じような意味がありますが、多くは相手をからかったり、貶すニュアンスで使われます。

「吝嗇」を使った英語例文

「吝嗇」の英語表現を使った例文をご紹介しましょう。

  • 私の母は昔から吝嗇であり、これからも変わらないだろう。
    My mother has been always miser, still is and will never change.
  • ほんとに吝嗇な人ね。プレゼントに試供品を使うなんて。
    You are such stingy. How petty are you using a freebie for a birthday present? 

まとめ

「吝嗇」の正しい読み方は”りんしょく”で、「むやみに金品を惜しむこと・心や考えが狭く気持ちが卑しいこと・物などが粗末で価値がないこと」、またそのような性格や人を意味します。

また「吝嗇家」と似た表現に「倹約家・節約家」がありますが、使い方を誤ると相手に不快な感情を与えてしまいます。「吝嗇」にはネガティブで相手を貶すニュアンスがある表現です。意味を正しく理解して、適切な使い方をマスターしましょう。