「不幸中の幸い」は、場面を問わずよく使用されることわざです。よく使われるからこそ、意味を把握しておかないと会話がスムーズに進まない可能性があります。また、注意して使うべき場面もあります。例文や類語・対義語とあわせて確認しましょう。類語の四字熟語もご紹介します。
ことわざ「不幸中の幸い」の意味と語源とは?
意味は「不幸の最中にわずかに救いがあること」
「不幸中の幸い」とは、“不幸なできごとの最中に、わずかに救いがあること”です。起きたできごとは不幸なものだったが、最悪の事態は避けられたり、なにか慰めになることがあったことを意味します。
「不幸中の幸い」の語源は不明
「不幸中の幸い」の語源や由来は、残念ながら分かっていません。中国語の四字熟語や慣用句が語源だと感じる人もいるかもしれませんが、そういった記録は見つかっていないようです。
「不幸中の幸い」の使い方と例文とは?
「不幸中の幸いにも」で最悪の事態は避けられたことを表現する
「不幸中の幸いにも~」という形で、最悪の事態は避けられたことを表現できます。他にも「予想より被害が少なかった」場合にも使用可能です。
- 不幸中の幸いにも、校舎に燃え移るまえに消火できた。
- 大きな事故だったが、不幸中の幸いにも死者はいなかった。
- 台風で果樹園が荒れてしまったが、不幸中の幸いにもりんごは無事だった。
「不幸中の幸い」は慰める言葉にも使われる
「不幸中の幸い」は、不幸なことが起きた人を慰めたり、自分を納得させたりする際にも使われます。「災難だったが、まだ救いがあるからよかった」と励ます意味合いを持ちます。
- 普通の風邪だったのは不幸中の幸いだったな。新型コロナだったら入院することになったかもしれないぞ。
- 放火のせいで自宅が全焼してしまった。とても悲しいが、家族全員が無事だったのが不幸中の幸いだ。
- 大雨でビジネススーツが濡れてしまったが、明日は休日なのが不幸中の幸いだ。
「不幸中の幸い」を使う場合は相手の考え方に配慮する
「不幸中の幸い」を他人に使う場合、相手の考え方や価値観に配慮するとよいでしょう。他の人から見ると「不幸中の幸い」でよかったと思うことでも、本人にとっては最悪の事態に陥っていた、という可能性があります。
例えば、財布を盗まれた友人に「カードが無事で不幸中の幸いだったね」と声をかけたところ「あの財布は父の形見だったんだ」と言われることがあり得ます。
「不幸中の幸い」の類語(類義語)と言い換えとは?
「不幸中の幸い」の類語は”怪我の功名”
「不幸中の幸い」の類語は”怪我の功名(けがのこうみょう)”です。意味は「失敗だと思ったことや何となくしたことが、よい結果につながったこと」です。
「不幸中の幸い」と同じくマイナスな出来事が起きた際に使用しますが、言い換えには向いていません。わずかな救いや最悪の事態が避けられた程度で使う「不幸中の幸い」と違い、「怪我の功名」はよい結果や幸運を得た時に使用します。
- スマホが故障してしまった。自宅の側にショップがあるので、代替機をすぐに借りられるのが不幸中の幸いだ。
- スマホが故障してしまったが、代替機が最新機種だった。無料でじっくり試用できたと考えれば怪我の功名だ。
四字熟語の類語は「九死一生」
四字熟語の類語は「九死一生」です。「危険な状態から、かろうじて助かること」を意味します。「九死に一生を得る」という形で使われることもあります。命にかかわる事態に限れば、「不幸中の幸い」の言い換えに使える四字熟語です。
恐ろしい事故だったが、不幸中の幸いにも生還できた。
→恐ろしい事故だったが、九死一生で生還できた。
言い換えに使える表現は「せめてもの救い」
ことわざ・慣用句ではありませんが、「不幸中の幸い」の言い換えに向いている表現は「せめてもの救い」です。「せめてもの」は”十分ではないが、これでよしとするべき”という意味です。
放火のせいで自宅が全焼してしまった。とても悲しいが、家族全員が無事だったのが不幸中の幸いだ。
→放火のせいで自宅が全焼してしまった。とても悲しいが、家族全員が無事だったのがせめてもの救いだ。
「不幸中の幸い」の対義語とは?
「不幸中の幸い」の対義語は”泣きっ面に蜂”
「不幸中の幸い」の対義語になることわざは”泣きっ面に蜂”です。意味は「不幸なできごとが重なること」です。不幸の中でわずかでも救いがあった「不幸中の幸い」に対し、「泣きっ面に蜂」は不幸が重なる状況を表現します。
「不幸中の幸い」の対義語を使った例文
「不幸中の幸い」の対義語を使った例文をご紹介しましょう。
- 怪我の療養中に風邪をひいてしまい、泣きっ面に蜂だった。
- 友人とケンカした帰りに、スマホを落としてしまった。泣きっ面に蜂とはこのことだ。
まとめ
「不幸中の幸い」とは不”幸の最中にわずかに救いがあること”を意味することわざです。言い換える場合は「せめてもの救い」が使いやすいでしょう。
慰めや励ましに使えることわざですが、相手の考え方・価値観によっては失礼だと思われる可能性があります。使用するかどうかは、慎重に判断するとよいでしょう。