「閾値」の意味とは?「閾値が高い・低い」やビジネスの使い方も

「閾値」は学術用語として使われるほかに、ビジネスや日常会話でも使われることがあります。「閾値が低い」「閾値が高い」などという表現を聞いたことがあるけれど、意味がよくわからないという人も多いかもしれません。

この記事では、「閾値」の意味や使い方を例文を交えて解説します。英語表現も紹介しています。

「閾値」の意味とは?

「閾値」の意味は”ある反応を起こさせる刺激の最小値”

「閾値」の意味は、“ある反応を起こさせる刺激の最小値”です。たとえば「集団免疫の閾値は50%」という場合は、「集団免疫に必要な免疫保持者の最小割合値は50%」という意味となります。

「閾」とは、”刺激が生体に反応を引き起こすか起こさないかの限界”のことで、生物学・生理学・心理学、物理学・工学等で使われる用語です。「閾」に「値」がつく「閾値」は、反応が起こる際の数値的な境目や境界となる値を示す表現です。その値を超えると、特定の反応が生ずるなどの変化が現れます。

ビジネスや日常生活では「境目となる値」という意味

生物学や物理学で使われる「閾値」の意味とは別に、ビジネスや日常生活などの場でも「閾値」の表現が使われることがあります。一般的な表現としての「閾値」は、”境目となる値”という意味で使われます。

たとえば、ビジネスの成否を分ける境界線の値という意味で、「閾値を超えたら成功だ」といった使い方です。

「閾」には”くぎる”いう意味がある

学術用語としての「閾」の意味のほかに、「閾」には”くぎる”という意味があります。古い時代には、門の下に敷いて家の内と外の堺とする横木のことを「閾」と呼んでいました。当用漢字から外れたこともあり、次第に一般的な語ではなくなったようです。

「閾値」の読み方は”いきち・しきいち”

「閾値」の読み方は“いきち・しきいち”です。使われる分野によって読み方が異なります。生物学や心理学の分野では「いきち」と読み、物理学や工学の分野では「しきいち」と読むのが一般的です。

また、「いきち」と読む場合は漢字で”閾値”と表記し、「しきいち」と読む場合は”しきい値”と書くことが多いといえます。

「閾値」の使い方と例文とは?

日常シーンでは「限界値」という意味で使われる

「閾値」は日常的な会話でも使われることがあります。日常的な会話においては、”限界値”という意味で使われることが多いようです。たとえば「我慢の閾値を超えた」というときは”我慢の限界値を超えた”という意味を表します。「ストレスの閾値を超えて暴飲暴食に走ってしまった」などと使います。

「閾値が低い・高い」で限界値がどの程度なのかを表現する

前に述べた「我慢の限界値」という意味で「閾値」を使うとき、「閾値が低い・閾値が高い」という表現を使うことがあります。

たとえばストレスに対する耐性が弱かったり、感情のコントロールが上手くできない人などを「閾値が低い」と表現することがあります。その逆に、ストレスに対する耐性が強い人を「閾値が高い」と言ったりします。

ビジネスシーンにおける「閾値」の使い方と例文とは?

「境目となる値」として使われることがある

「閾値」は生物学や物理学で使われる場合には”ある反応を起こさせる刺激の最小値”という意味ですが、先にも説明したように、ビジネスシーンにおいては「境目となる値」という意味で使われることがあります。

たとえば、「予約件数が閾値を超えたため、受付を中止する」というように、許容可能な境目となる値という意味で使われます。

あるいはユーザーから「想像を超えた反応があった」場合などに、「閾値を超えた反応があった」と表現することがあり、この場合は想定していた予測の範囲(境目)を超えたという意味で使われます。

マーケティング用語「価格閾値」

マーケティング用語に「価格閾値(かかくいきち)」があります。価格閾値とは、製品やサービスの価格によって消費者が感じる満足と不満足の堺値です。あるいは損失と利得の堺値を表す場合もあります。

たとえば、価格がある値(閾値)を超えると消費者の満足度が下がり、ある値(閾値)から下がると消費者の満足度が上がるなど、消費者の反応が変わる境目の値として設定されます。

IT用語では「条件分岐の境目となる値」の意味で使われる

IT用語として使われる「閾値」は、”条件分岐の境目となる値”という意味で、プログラムの動作を決定する数値を指します。

「閾値」の英語表現とは?

「閾値」は英語で”threshold”

物理学や工学分野などにおける専門用語としての「閾値」は英語で“threshold”と表現します。「限界・境目の値」の意味としてビジネスや日常で使う「閾値」も同じく”threshold”と表現します。特に「境界、境目」を意味する英語の表現には”boundary”もあります。

「The reaction occurred above a threshold temperature.」は”反応はある閾値温度を超えると起こった”という意味です。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の流行にあたり、「集団免疫閾値」が話題となっています。「集団免疫」とは、人口の一定数以上が免疫を持つことで感染流行を防ぐことができるとする考え方のことで、「集団免疫閾値」とはその集団免疫を獲得できる値のことを指します。

「集団免疫閾値」は集団免疫率(%)で示され、基本再生産数(一人の感染者から生じる二次感染者数)から算出されます。新型コロナウイルスについてはわならないことが多いため、決定的な数値はまだ示されていません。

このような例もある「閾値」は、科学的な計算方法で計算される学術用語としての使用のほかにも、日常の場では気持ちや気分の「限界値」の意味で使われたり、ビジネスの場では戦略の成否を決定する堺目の数値の意味で使われたりしています。